監督のフランク・A・カペロはキアヌ・リーブス主演『コンスタンティン』の脚本家らしい。この映画が監督デビュー作。さもありなん、という映画だ。クリスチャン・スレーターがハゲで、チビで、ちょいデブのすぐ赤ら顔になりそうな男を演じる。わざとなのだが、とてもリアルだ。かなり役作りのため、頑張った。目立たないし、まるで風采の上がらない男で、会社では年下からもバカにされている。家に帰っても金魚くらいしか家族も . . . 本文を読む
『空気人形』と関連して今日は、現実のすぐ真横にあり、気付くと、異界に滑り落ちていく人たちを扱った映画特集。この手の映画は上手い発想さえあれば、簡単に成立しそうに見えるが、匙加減がとても難しい。まずは失敗例から。(というか今日の2本は失敗ばかり)きっと、わざと緩い作り方をしているのだろうが、これではただの幼稚な映画にしか見えない。
主人公(長瀬智也)はある日いきなり失業し、頭痛がするから、病院 . . . 本文を読む
是枝裕和監督はこういうファンタジーっぽいものはあまり得意ではない。なのに、時々チャレンジする。『ワンダフルライフ』の時も、悪い映画ではないけど、あまりすっきりしなかった。残念ながら今回も、成功とは言い難い。
できるだけリアルの地平から、ドラマを展開させていこうとしているようだが、ほんの少しアニメーション処理をしてみたり、なんとなくソフトな仕上がりを目指した部分もあり、一貫性に欠ける。岩松了の . . . 本文を読む
シドニ・ルメット84歳の新作である。『12人の怒れる男たち』でデビューし、社会派映画で鳴らした巨匠は老いてなお盛んだ。今でもまだ若々しい映画を作る。実験精神も旺盛で、今回のスタイルにもうならされる。フラッシュバックで、時間は前後していき、その度、彼らの関係性が明確になり、さらにはそこから事件の顛末も見えてくる。繰り返しが効果的で、同じ描写がよりスリリングになる。そして、そこからこの小さな宝石強盗 . . . 本文を読む
前作を見た時も思ったのだが、こういうフイルムノワールって、よく出来ているものは雰囲気もあって見た時はいい気分にさせられるのだが、あとには何も残らない。『あるいは裏切りという名の犬』を見た時、このブログに書くのを忘れてしまったほどだ。映画としては今回の作品よりもずっと出来がいい。なのに、しばらくしたらどんな映画だったかも忘れたので書く気にならなかったのだ。
今回も見てからもう1週間がたつ。その . . . 本文を読む
とうとう完結編である。でも最初からわかっていた。この小説は『シックスティーン』だけで終わっている。この作品を含むその後の2作品は読者の要望に答えただけのものだ。
だが、香織と早苗の物語が続くのなら、絶対に見ていたい。だって、この子たちの青春はきらきらしていて、眩しいからだ。そんな高校時代を出来ることなら送りたかった。もちろん誰もが彼女たちのようにきらきらした季節を過ごしているだろう。輝いてい . . . 本文を読む
まさかこんなふうな展開になるだなんて思いもしなかった。book1を読み終えた時には、この先も同じペースで話が進み、もっと緩やかな展開をするのではないか、と予想したのだが、いやぁ、これには参った。しかも、そのくせラストはあんな中途半端なままで終わるだなんて。
このbook2は思いがけない急展開を見せる。だが、それが途中で減速し、気がつけばいろんな問題を置き去りにしたままで、唐突に終わる。青豆は . . . 本文を読む
待ちに待った映画だ。公開がなかなか決まらず、いったいどれだけ待たされるのか、気が気ではなかった。いくらなんでも公開されないだなんてことはあるまいとは思いつつも、ようやく公開が決まり、凄い量の試写会が今行われているようだ。松竹が自信を持って送る最新作である。できることならスマッシュ・ヒットを遂げてもらいたい。これは、それだけの力のある作品だから。
シナリオライターの大森寿美男の監督デビュー作で . . . 本文を読む
女はどうしてこんなダメ男のことを好きになるのだろうか。死をちらつかせる破滅型作家の人生の伴侶となってしまった女は、それでも彼から離れられない。愛してるから、とか、言わない。ただ、彼に寄り添う。
太宰治の同名短編の映画化なのだが、文豪太宰とかは関係なく、純粋にこの映画が見せる風景に心魅かれる。見事な美術(種田陽平)で再現されたいくつもの風景がすばらしい。2人が暮らす家。東京の繁華街、裏町、横町 . . . 本文を読む
昨年上演された岩崎正裕+アイホール共同制作『どくりつこどもの国』の再演である。平成21年度公共ホール演劇ネットワーク事業として、伊丹を皮切りにして4都市でこれから巡業公演がなされる。こどものための小劇場演劇作品というコンセプトって、今までありそうでなかったことだろう。子どものための演劇というのならば、いくらでもある。だが、敢えて小劇場演劇のスタンスと姿勢を前面に押し出した芝居と考えるから、これは . . . 本文を読む
ジャン・ベッケルの新作にして最高傑作。このそっけないタイトルそのままの内容の映画。画家と庭師が田舎で再会し(2人は小学校時代の同級生)、友情を深めていく姿が描かれる。田舎の風景が美しいのは『クリクリのいた夏』同様だが、今回はここまでシンプルに作れないのではないか、と思うくらい単純な構成の中、初老の2人の男たちの人生の機微を見事に描いたところにポイントがある。映画は主人公の2人が、ただなんでもない . . . 本文を読む
30代の女性の自立を描いた映画が連続して日本映画の枠の中で製作され公開されるなんて、凄いことだ。『ノン子36歳』に続いて今度は子持ちの女が主人公。31歳という設定である。
小巻(小西真奈美)は、作家を目指すが何もしないまま生きるグータラ亭主に見切りをつけて、娘ののんちゃんを連れて実家に帰ってくる。そこで、彼女は独立して生きていこうとする。始まりは威勢がいいのだが、現実はなかなかうまくいかない . . . 本文を読む
ハリウッドがあの『ドラゴンボール』を実写で映画化する、と聞いたとき、誰もがもみんな狂喜乱舞したことだろう。しかも亀仙人をチョウ・ユン・ファが演じるのである。一体どんなことが起きるのか想像を絶した。3月の公開が待ち遠しかったはずだ。一刻も早く見たいと思った。ハリウッドの超大作としてよみがえる『ドラゴンボール』である。鳥山明によるコメントがなんとなく気にはなったが、誰もがそれも宣伝の一種だと気にしな . . . 本文を読む
熊切和嘉監督が昨年撮った映画である。坂井真紀を主演に迎え30代後半の女の憂鬱を描いた。こういう題材が映画になるだなんて、凄いことだ。企画が通ること自体が奇跡としか言いようがない。退屈でなんのドラマもない日常のスケッチである。誰もが見たくもないような話を延々と綴っていく映画に出資し、商業映画として劇場公開するメリットは何もない。現に東京でもお客は入らなかったし、大阪ではナナゲイで2週間くらい不定期 . . . 本文を読む
思い切った芝居を作るなぁ、と思った。これは棚瀬さんが南船北馬として2年振りに取り組んだ新作である。先月劇団コーロに演出として参加し、そこからたった1カ月のインターバルでの公演となる。ここまで間が詰まった連続公演というスケジュールは正直大変だったはずだ。諸事情ゆえとは云え、思い切ったことをしたな、と感心する。だが、やれるときにはやらなければ、機会は来ない。これは彼女にとって素晴らしい挑戦だったはず . . . 本文を読む