高嶺格が日本のパフォーマーとタイの子供たちのコラボによって作り上げた壮大なパフォーマンス・ショー。アイホールの巨大な(小劇場としては、だが)舞台空間をさまざまなものに見立ててそこで、わけがわからないお遊びを繰り広げていく。シーンごとにはなんの連続性もない。しかし、その全体が、何か、とてつもないものに見えてくるのがいい。その胡散臭さも魅力だ。わけのわからなさ、混沌、真摯さ。それらが渾然一体となって . . . 本文を読む
園子温の新作。今度は全く救いのない嫌な話。もともと人間の暗部を残酷描写とあきれるような手法で抉りだしてきたけれど、今回は今までの比ではない。最初から最後まで2時間半の地獄巡りである。生半可な気分で見たなら、気分が悪くなり途中で退席せねばならなくなるだろう。
全くどこにも救いがない。『紀子の食卓』と『愛のむきだし』の2本でまず一つ目のピークを迎えた彼が今回挑戦するのは、完膚無きまでに家族という . . . 本文を読む
「B級社会風刺漫画」「デキソコナイの芝居」という岩崎さんの言葉は自虐的な言い方ではなく、本音であろう。まさにその通りの芝居になっていた。正直言って唖然とする内容だ。これを岩崎さんが作ったなんて、信じられない。後半になると話がさらにエスカレートして、悪ふざけすれすれの描写が続く。
だが、これはこれで必要なんだ、と思う。今だからこそ、たとえ下品だと言われようとも、こういう芝居を誰かが作らなくては . . . 本文を読む
こんなにも短いスパンでの再演である。そこで大きな冒険をするなんてことは到底不可能だ。だからといって前回の舞台をそのままここに持ってくるのもつまらない。ということで、見せ方のスタイルを変えることで、同じ作品がまるで違ったものとなる瞬間を提示することとなった。この企画自体のお約束は、ちゃんと守りながらも新しいビュイーン瓶を作る。
見せ方のスタイルをほんのちょっと変えただけで、このお話の方向性すら . . . 本文を読む
中村賢司さんがかつて書いた二編の中編作品を「怪談」という括りのもと再上演した。この2編は敢えて怪談と呼ぶ程のものではない。日常と背中合わせになったほんのちょっとした狂気の一瞬が描かれる。だが、これをわざわざ「怪談」と呼ぶことで、見えてくるものもある。この日常のなんでもない風景の中に潜む魔について、耳を澄ませたくなる。中村さんは怪談というファクターを通して、この日常のなんでもない風景を微妙に歪ませ . . . 本文を読む
前作『桐島、部活やめるってよ』では短編連作というスタイルの中で、高校生たちの揺れる想いがとても丁寧に切り取られていたが、今回はとてもオーソドックスな長編小説として、チアリーディングを始めた男の子たちの群像劇を見せてくれる。これが思いの外おもしろくって、ラストなんか泣かされてしまってたいへんだった。(いつものように電車の中で読んでいるからさすがに周囲の目が気になる)
スポーツものの王道を行くス . . . 本文を読む
こんなにも静かな突劇金魚の芝居は初めてだ。『シマウマの毛』も少しこんな感じだったような気もするが、でも、ここまでではない。それと、今回初めて、外の世界の話だったのにも驚く。サリngはいつも閉ざされた内の世界で話を展開してきた。そんなひきこもり気味の芝居ばかりだったのに、今回は家の中から外の世界に出る。
とはいえ、もともと彼らには家はない。これは河原で生活する人々のお話だ。主人公の少女は満足に . . . 本文を読む
こういう弱い人たちの話を今は読みたくない。心が弱っている時は、やたら元気な小説がいい。だから、今は朝井リョウの『チア男子!!』を読んでいる。なんだか読んでると、シアワセになれるからだ。
でも、今はこの『白いしるし』の話だ。32歳の女性が主人公。失恋を繰り返しながらもう恋はいいよ、と思っている。バイトをしながら、絵を描いている。画家として生活できるだけの収入はないが、それなりには頑張っている。 . . . 本文を読む
とてもおもしろい発想だが、あまりに作りが緩すぎてこういうのがありなら、なんでもありだろ、と思ってしまう。芝居って自由なものだけど、その自由さは作り手の強い意志によって統御された作品世界を核に据えることで感じられるものであって、それもなく、ただなんでもあり、では作品としての体を為さない。
松永さんの実験的な芝居作りはその危ういライン上にある。役者の素人臭さが、作品の力となり得たならいいのだが、 . . . 本文を読む
また2部作。でも、『SP』とは違い今回はちゃんと独立した作品になっている。2時間10分。ノンストップで、アクションのつるべ打ち。3部構成。GANTZに3回呼ばれる。どんどんエスカレートする。ヒーロー物の定番をちゃんと踏襲しながら、今までになかった新機軸が、あっと驚く発想のもと展開していく。しかも、謎が謎を呼ぶ意味深なラストもちゃんと用意して4月のパート2に期待させる。二宮和也と松山ケンイチの関係 . . . 本文を読む
まさかのファンタジーである。終盤では定番の『銀河鉄道の夜』までもが引用される。これが深津篤史の新作なのか、と驚かされる。とてもじゃないがありえない構造である。しかし、ただなんとなく見ている分にはとてもこれがファンタジーだなんて見えないことも事実だ。ストーリーの結構もわかりにくいし、まるで、この作品世界が観客である僕の心に入り込まない。作品からどんどん取り残されていくような気分がして焦った。
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3話からなる連作。手紙のやりとりからなるミステリ。湊かなえの小説としてはこれまでで一番よくできている。ただ、『告白』の時もそうだったが、最初はいいけど最後までその勢いが持続しないのが彼女の問題点だろう。今回は各エピソードがほとんど独立しているからトータルな評価は意味がないのかもしれないが、3話目の弱さは如何ともし難い。
話自体もよくできているし、必ずしも単純ではないし。2話まではこの手の作品 . . . 本文を読む
ニュートラルの新作『屋上サーファー』はいつもの大沢さんらしい2人芝居で、安心して見ていられる。この感じが大好きだ。ここは都会のかたすみの、誰も知らない秘密の場所だ。主人公の女性は、そこから見える風景を大事にしている。そんな何でもないことに、なぜかドキドキさせられる。
仕事の合間、休憩時間に病院の屋上にやってくる看護婦(看護師ではなく、看護婦と言っていた気がするが)。彼女は一人になるため、ここ . . . 本文を読む
暇つぶしに東野圭吾を読んだ。今すぐ読まなければならない本が手許になかったからだ。電車の往復だけが僕の読書時間なのだが、何もないまま電車に乗るわけには行かない。そこで、彼である。次から次へと新刊が出るから、読んでも読んでも追いつかない。だからいつでもまだ読んだことのない彼の本はある。しかも、読んでいる分には、退屈しない。だから、こういう時には無作為に彼の本を選んでしまう。ついつい安全圏で勝負してし . . . 本文を読む
イ・ハン監督の『永遠の片想い』は忘れられない作品だ。あの1本のなんでもない青春映画は僕にとっては今でも大切な作品として胸に深く残る。とてもきれいな映画だった。風景も、主人公たちの心も。あれはただの絵空事のような恋愛映画でしかないのかもしれない。だがあの切ない気持ちには嘘はない。続いて公開された『青春漫画』も綺麗事でしかないかもしれない。だが、あれでいいと思った。
これで3本目である。また、同 . . . 本文を読む