短編『おいしい家族』を長編にした同名作品で本格デビューし、さらにはあの『君が世界のはじまり』を撮ったふくだももこ監督の最新作だ。彼女が自分と同世代の女性たちを主人公して今を生きる女性たちの姿を描く作品である。これを見逃すわけにはいかない。すでに目にした批評では、なんだか評判がよくないみたいで、それってどういうことかと気になっていた。だからさっさと自分の目で確かめたい。
30代後半にさしかかった3人の女性と20代後半にさしかかったひとりの女性、計4名のお話である。こういうお話は小説でなら短編連作のスタイルで語られるのだろうが、映画はオムニバススタイルではなく、同時進行で4人の話が描かれる。別々の話でもあり、お互いが微妙にクロスもする。
田中みな実演じるフリーライターは、36歳。20代の女性の生き方を描いたエッセイ集で10年前にベストセラーを出したことがあるが、それからは一作も著書はない。でも、それなりに知名度もあり、仕事にも不自由していない。恋人もいる。イケメンの5つ年下の商社マンだ。彼から結婚しようとも言われている。いろんな意味で充分満たされているはずの女性だ。だけど、なんか満たされない。彼に対していろんな意味でなんか違うな、と思う。いや、この結婚相手の男はただのバカだ。このバカさ加減があまりの紋切り型でつまらない。こんな男と付き合う女というだけで、この主人公に共感できない。
あとの二人は、市川実和子演じる恋人に去られたシングル女性と、徳永えり演じる生まれたばかりの子供を抱える主婦。この2人も、現状に不満を抱えている。3人に共通するのはパートナーのダメさ。この映画に登場する男たちのくだらなさは、あまりに表面的で見ていて不快である。その一点だけでも、この映画が男性から不評なわけはわかる。さらには映画があまりに紋切り型の切り口。コメディタッチに仕上げようとしたのかもしれないけど、もう少し丁寧に登場人物を描いてもよかったのではないか。男だけではなく、女性もパターンにはめ込まれていて、なんだか悪意すら感じる。
どうしてふくだ監督はこういう映画を作ったんだろうか? 『君が世界のはじまり』のようなタッチで作ってくれたなら絶対に傑作になったはずなのに、どちらかというと『おいしい家族』のラインで作られている。そのへんの微妙な匙加減が作品には反映される。わざと雑なタッチにしたのは、重い話にして欲しくないというプロデュサー側からの要請だったのか? ありきたりなパターンを設定して、そこでありきたりな結論を提示するのでは、意味がない。
なんだかおさまりの悪い映画になってしまい残念だ。ひとりだけ20代の女の子を絡ませたのは、10年前の彼女たちとの対比だったのか? それにしてはあの女の子は、あまりにバカすぎて対比にもならないけど。パパ活して、楽して暮らしている女の子って、何なのか。しかも、痛い目に遭うにしてもあんなくらいでいいのか? 現実はもっと悲惨ではないのか。
見ているぶんには、それなりに見れないことはないけど、このレベルの映画をわざわざ作っても仕方がない。しかも、ふくだももこにそれをさせるって、何なのだろうか? もっと自由に彼女の映画を作らせて欲しい。今、日本映画界で女性監督が続々と誕生している中で、さすが女性監督だ、と言われるような作品も欲しい。もちろん、男であろうと女であろうとそんなことはどうでもよくて、ただいい映画が見たいだけなのだけど。