コンスタンスに作品作りを続ける入江悠監督の最新作だ。『シュシュの娘』は未見だが、その前の大作『AI崩壊』にはガッカリした。だけど今回は、前川知大(「劇団イキウメ」)による同名舞台の映画化である。しかもわざわざ韓国を舞台にして、繰り広げられる。この不思議な出来事をどういうふうに見せてくれるのか。ただのホラーにはならないはずと期待した。
最初は、それなりにワクワクさせられた。何が起きるのか、つかみどころのない展開だ。だけど、徐々になんなんだ、これは、と呆れさせられる。本当なら夫の分身が出てきたところから、面白くなるはずなのに、怖くないし、さらにタイトルの聖地Xに導かれ、そこで何が起きるかというところからどんどんつまらなくなるのはなんなんだろうか。舞台の映画化だし、室内のシーンが多いこの作品のロケ地にわざわざ慶州を選んだのはなぜだろうか。(実は舞台はキョンジュではなく、カンファドだった。おかしいと思った。後日気づいた。だから、ここから以降の部分は間違いです。直さないけど。)
慶州は大好きで何度か行った。ソウルやプサンとは違う魅力のある町だ。昔の韓国映画『神様、こんにちは』を見た時からずっと心惹かれていた。80年代、まだ日本では遠い国だった韓国で一世を風靡したベ・チャンホ監督作品だ。30年以上前のことだ。あの映画の主人公(アン・ソンギ)は修学旅行で慶州に行くはずだったが、病気のため行けなかった。だから彼にとっては今でもあそこは幻の町だ。そんな慶州を舞台にしたのだけど。
お話があまりにバカすぎる。しかもここに描かれる不思議な空間にはまるで説得力がない。いくらなんでもこんなつまらない思い付きだけで映画を作って欲しくはない。お話の核心部分がまるで説得力もないし、驚きも恐怖もないから、最後の分裂したふたりをひとりの体に戻すというシーンはクラマックスにはならないし、ただのおふざけでしかない。
いくらなんでもこんな映画を見せられるとは思いもしなかったので、別の意味で衝撃的だった。台本も演出も最悪だ。悪夢としかいいようのない映画だった。見たことを忘れよう。岡田将生は『さんかく窓の外側は夜』に続いて主役としてはへんな映画ばかり(脇役でなら今年一番の傑作の1本『ドライブマイカー』があるが)で作品に恵まれない。