これまで読んだ2冊(『山の上のランチタイム』『山のふもとのブレイクタイム』)と同じで、この人の文章はわかりにくい。こんな話なのになんだか読みにくいのだ。きっと文章を書くのが下手なんだろう。読んでいてイライラする。もっとシンプルにお話が流れてくれたっていいはず。なのに、まどろっこしい。それはストーリー展開のさせかたなのだが、同時にこの物語の主人公たちの心の問題でもある。作者と主人公たちはとてもよく似 . . . 本文を読む
この長いタイトルの映画はシャンタル・アケルマン の75年作品。今から45年以上前の映画だ。だけど色褪せることなく、それどころかそのへんで公開されている今の映画以上に新鮮で刺激的な作品だった。しかもなんと3時間22分の大作である。こんなにも何もない映画なのに、これだけの長尺で、登場人物は、ほぼ主人公のジャンヌ・ディエルマン(デルフィーヌ・セイリグ)のみ。そんな映画ありですか。
彼女の3日間が描かれ . . . 本文を読む
なんとまぁ、そっけないタイトル。でも、この味気ないタイトルがこの映画にはふさわしい。感動の実話の映画化、ではなく、こんなことがあった、という記録に徹するような勢い。宣伝では「世界が震撼した[衝撃の実話]、世紀の国家スキャンダル〈ドレフュス事件〉映画化」なんて感じで煽られているけど、そういう映画じゃない。だけれどもドキュメンタリータッチというわけでもない。劇映画としてしっかり作られてある。
これは . . . 本文を読む
このタイトルは明らかに川本さんの『いまも、君を想う』を連想させる。川本さんこの映画好きかな? きっと面はゆいけど、嫌いじゃないはず。昔の自分を想起したりして。きっとまた奥さんのことを思い出すことだろう。幾分甘い映画だけど、悪くない。
妻を失った老人がバスを乗り継いでイギリスの北端から南端までを旅をする話。90歳の老人には身寄りがない。最愛の妻を亡くし、50年以上、ずっとふたりで暮らした家を離れて . . . 本文を読む
阪本順治監督最新作。伊藤健太郎主演。この組み合わせに期待は高まる。前作も期待した。あれは豊川悦治主演のプライベート映画だった。作品自体は(僕は)納得がいかない出来だと思ったが、妥協を許さない阪本監督の姿勢は好きだ。自分がやりたいことをやりきる。商業主義の映画ではないけど、自己満足のアート映画でもない。だいたいあんな企画を通してしまい実現させるなんて、他の誰にできるか。彼だからこそ可能だったのではな . . . 本文を読む
チラシのイメージではもっとエロチックな芝居を想像させるのだが、まさかのドタバタで笑わせてもらった。とても楽しい。「女の情念が見え隠れするサスペンス人間芝居」とも書かれてあったのでシリアスでスリリング、ドロドロした濃厚なドラマだと思うではないか。でも、この秘かな裏切りがなんだか心地よく、舞台裏の人情劇を堪能させてもらえた。
6人の女たちが繰り広げる楽屋での騒動。やってこないこのキャバレー出身の人気 . . . 本文を読む
辻村深月のお仕事小説の映画化。アニメ業界を舞台にして、土曜5時台、アニメとしてのゴールデンタイムで放送されるライバル同士のTV局の視聴率合戦が描かれる。ワンクール12話(昔は13話だったのではないか?)同じ放送開始日から終了日までの12週間、視聴率とネットでの評判が競われる。業界最高の対決に、世間の注目が集まる。新人監督のデビュー作とアニメ界の王子の期待の新作の一騎打ち。毎回の視聴率に一喜一憂する . . . 本文を読む
2年10か月ぶりの「劇団きづがわ」公演だ。ようやくきづがわの芝居を見ることができる、ということがこんなにもうれしい。コロナ禍を経て、満を持しての公演である。高齢者の多いベテラン劇団はいずこもこの期間、公演を控えてきたが、もう3年である。再開を待ち望んだし、うずうずしているのではないか。
大人数による大作ではない。コロナ禍を考慮したとても慎重な公演ではないか、と思ったが必ずしもそういうわけではない . . . 本文を読む
なんと初演から30年近くの歳月が経つらしい(と、ここは他人事のように書く)。94年「当時の主宰である大竹野正典(1960ー2009)によって発表されました」とチラシにはある。そうなのか、そんなにもあれから歳月は過ぎていったのか、と改めて感慨に耽る。もちろん、初演を見ているし、すべての大竹野作品を見ているのだから、それくらい覚えておけよ、と言われそうだ。でも、僕はもうすぐにいろんなことを忘れてしまう . . . 本文を読む
まさかの映画だった。期待することもなく、たまたま時間の都合で見れそうだったから見たのだが、ほんの少しの期待を遥かに凌ぐ作品だった。見てよかったし、うれしい。『トップガン マーヴェリック』を見た興奮冷めやらず、の状態で引き続き見たのだが、あの大傑作に勝るとも劣らぬ作品だ。この2本への評価には個人的な感慨もある。どちらも僕と同世代のお話(佐藤浩市は準主役だけど)だ。60歳を迎える彼らが、今、自分の仕事 . . . 本文を読む
まさかこの映画で泣くとは、思いもしなかった。懐かしいからではない。だいたい36年前の第1作『トップガン』にはまるで思い入れはない。当時大ヒットした映画で、僕も見たことは見たけど、それほどたいした映画ではない。トニー・スコット監督らしい派手で華やか、でもあまり中身のない娯楽大作映画だった。
あの映画でトム・クルーズは大ブレイクして、その後は誰もが知るところだろう。ハリウッドのトップスターになって現 . . . 本文を読む
正直言うとまるで期待しないで読み始めた作品だ。父親の経営していた町の小さな電気店を再開したいと願う女の子、萌絵。父親は事故に遭い店を閉めざる得なくなった。高校を出た彼女はまず家電量販店に就職し、電気店の再開を目指す。そんな彼女を主人公にした物語。
だから元気な女の子が主人公の「軽いお仕事小説(ミステリ仕立て、と帯にはある)」とたかをくくっていたのだが、まさかの思いもしない展開で、驚きを禁じ得ない . . . 本文を読む