監督は本作が長編監督デビューとなるイ・ソルヒ。主人公の女性が抱える現実を落ち着いた文体で淡々と見せる。そこには過剰な思い入れはない。説明も一切ないまま話は進む。彼女は訪問看護をしている。目の見えない老人とその妻で認知症の老婆の世話をする。彼らには息子がいるけど、老夫婦の面倒をみることはできない。彼女はたったひとりでビニールハウスに住んでいる。貧困な暮らしに甘んじるのは貧しいからだけではないみたいだ . . . 本文を読む
最近近大によく芝居を見に行っている。ちょうどこのウイングカップ開催中に4本見た。ここで学生劇団(授業の発表会も含む)の公演を見るためだ。最初は知り合い(ウイングカップの審査を一緒にしている土橋さんや笠井さん)が指導している公演を見るために行ったんだけど、なかなか興味深い芝居が続くからついつい暇にあかせて他にも何本か見てしまった。若い演劇人が自分たちの力を試す。ウイングカップの劇団よりさらに若い人た . . . 本文を読む
後半の4話を一気見した。核弾頭搭載の有無(話のフックにしてるけど)を曖昧にして、話を展開することには引っかかるが、そこは目をつぶって見ることにした。日米の対応を軸にする政治的側面を描いた部分も甘い。さらにはクライマックスの東京湾内での対戦をマスコミや一般人の対応がちゃんとは描かれてないのも気になる。だけど、3、4話の弛緩した展開から吹っ切れて、後半はなかなか見せてくれる。
日本政府と . . . 本文を読む
ピエール瀧がスクリーンに戻ってきた。しかも久々の主演映画となる。監督は小林且弥。彼のデビュー作だ。あの傑作映画『凶悪』で出会ったふたりがコンビを組んで放つこの映画はピエール瀧でなくてはならない映画を目指したはずだ。だけど残念ながら、そうはならなかった。小林監督は敢えて抑揚のない抑えたタッチで2時間を綴る。だがそれはあまりに単調すぎて眠くなって困った。真面目で一生懸命作った映画だとは思う。だけど、ま . . . 本文を読む
これはホラーだ。読みながら震えた。泣きそうになった。いつか見たことを鮮明に思い出す。母の介護をしていた日々だ。ほんの数年前のことである。
今更後悔しても始まらないけど、もっといろんなことをしてあげたかったなんて、思えるのはあの先にあったはずの更なる試練を知らなかったからかもしれない。きれいごとじゃやっていけないことはわかっていたし、毎日が大変だった。気がつくと知らぬ間に心を病んで . . . 本文を読む
若松プロダクションの黎明期を描いた『止められるか、俺たちを』の続編である。今回は映画作りの話ではなく、映画館を作る話。スケールは小さくなる。しかもこの映画の監督である井上淳一の自伝。名古屋のシネマスコーレが舞台となる。若松孝二は前作に引き続き井浦新が演じる。こんな地味でマニアックな題材で映画を作るなんて大胆。若松は名古屋に自分の映画館を作ることにした。自前の映画館を持つという画期的な映画監督となる . . . 本文を読む
リンちゃんたちが大好きな「おしりたんてい」を初めて見た。今回の劇場版長編第2作は71分。(冒頭に付いているおまけ短編10分含む)この上映時間は小さな子どもたちの限度枠だろう。お子様に優しい。しかも大人が見ても楽しめる映画になっている。10年前に離別した相棒から連絡が入る。おしりたんていは、彼女から頼まれてある美術館の警護に当たるのだが。お話は単純で分かりやすい。だけど、しっかり謎解きや、意外な展開 . . . 本文を読む
ぼく(海)は高校1年生だった。継母とふたり暮らし。そんな彼らの話から始まる。まず海の話、次は継母の美佐子。次に海が好きになるクラスメイトの忍。親友になる璃子。家を出ていった父の緑亮と続く。最後は再び海に戻ってくる6話からなるBL小説だ。幾分甘い作りでYA小説として分類されるような作品。だから読みやすい。窪美澄らしくはない。
海は昔から女の子に憧れていた。というか、心は女の子だった . . . 本文を読む
昨年公開された映画の続編がAmazonプライムビデオから配信されている。一刻も早く見たかったのだが、なかなか時間が作れなくて今日に到った。というか、なんか見るのが怖かった。あの映画はこの配信ドラマの予告編に過ぎなかったのか? そんなことでいいのかと憤慨しながらも、一縷の期待も抱き、まず4本を見た。全8話からなる作品である。残念だった。1、2話で映画のおさらいをして、3話から未体験ゾーンに突入した。 . . . 本文を読む
前作は通常版での上映で見たが、あまり面白くはなかった。話があまりに単調すぎて眠くて仕方がなかった。「これは大画面でこそ見るべき映画だ!」といろんな人が散々宣伝しているから今回はIMAXで見ることにした。ラージフォーマットで見る映画だという散々な宣伝の真偽を確かめるために500円を加算した。確かに迫力がある。圧倒的な没入感だ。やはりこれは大スクリーンで見るべき映画だった。それは確かに認めるけど、やは . . . 本文を読む
高校の演劇部がお話の舞台となる。部員外のクラスメイトにオリジナル台本を委託して高校生活最後の公演に挑む。だけどこれはクラブ活動を描く小説ではない。あくまでも演劇は背景でしかない。
自らの性に対して懐疑的なトランスジェンダーの物語だ。『人魚姫』を題材にした芝居を文化祭で上演する。彼は人魚姫を演じる。そして、人魚姫は王子ではなく、姫に恋する。
彼は子どもの頃から自分 . . . 本文を読む
久しぶりに太陽族の芝居を見る。僕はオレンジ演劇祭で『工場物語』を見てから30年以上ずっとほぼ見ていたけど、何故か、最近はあまり見ていない。有名になってみんなに認知されて、わざわざ僕が見るまでもなく人気のある劇団からは離れていくという傾向はあるけど、それとは少し違う。そんなこんなで、久しぶりに見る岩崎さんの新作はこんな芝居は滅多にないだろう、というような特異な立ち位置を示す作品だった。なんと作品世界 . . . 本文を読む
後半を読みながら、これが苦手だったのか、って改めて思った。あまりにドラマチックすぎて、嘘くさい3流メロドラマでしかない。さすがにこれだけの大作をそれだけで終わらせるはずはないだろうと思って、最後まで読むことにしたが、実は本格的なお話に突入した第2章を読み終えたところで一度匙を投げた。
『君の名は』(新海誠ではなく、昔のすれ違いメロドラマの方)じゃないんだから、こういう昭和はやめて . . . 本文を読む
まずこのタイトルに惹かれて読むことにしたのだが、当たりだった。このエッセイ集、とても楽しい。そして感動的だ。エムコはまるでまる子としんちゃんが結婚して生まれた女の子のようだ。
冒頭の(ご大層にも「はじめに」とある)『学生結婚と子育て』爆笑。こんな先生がいたら凄いし、こんな授業って素晴らしい。ツッコミどころは満載だが、ほんとならカンドーもののエピソードだ。(あとがきを読むと実話だっ . . . 本文を読む
これはもう2021年の映画だったのか、とラストクレジットの最後の表記を見て改めて思った。時間が経つのは早い。ということで、ようやくもう3年も前の映画が配信スタートした。三池崇史の映画だから見ることにした。もちろんこれはたぶんつまらない映画であることは見る前からわかっている。それでも彼が渾身の力を降り注ぐ児童映画を見ないわけにはいかない。(だいたいタイミングさえ合えば劇場で見たはず)
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