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「貴様、火京物太夫(ひきょうものだゆう)だな」
「お師匠様の仇を取るぞ」
「ちょこざいな、シェフめ」
「名を名をなのれ!」
「スタちゃんこと、クアトロ・シェフだ」
火京物太夫とは、正確には“鏡鯛”である。
確かに、卑怯者のように海底深くに生息し、中々姿を見せない魚である。
クアトロに入荷したような鮮度の良いものは、カルパッチョでも美味である。
アクアパッツァではさらに美味な魚である。
鏡鯛は鬼面党ならぬ、馬面をした的鯛の仲間であり、銀的とも呼ばれる。
よく見ると、腹の中央に丸い的が見えるのである。
「えーい、稲妻切りだ」
「おまけに真空切りだ」
クアトロで成敗される鏡鯛である。
尚、クアトロ・シェフに師匠の仇はいない。