スヴェトラーノフ指揮NHK交響楽団(king)2000/9/28live・CD
演者を確認せず聴き始めて「遅いなー」「ドイツっぽい音だなー」「マゼールか?」と思ったらスヴェトラの来日公演だった。スヴェトラーノフのマーラー、とくに晩年だけあってとにかく遅い。情緒纏綿というわけではないのだ、かつての近視眼的な伸縮は伸びる方向にのみ働くようになり、そのうえで響きの精度を求めている。よくブラスがついていくなあと感心する。この頃もN響はドイツオケのような音がしていたのか(これはスヴェトラーノフにはまったくプラス方向に働いている)。相性が良かったのだなと思う。音の末尾を開放する、ぶっ放すのはスヴェトラーノフらしいが、マーラーでは賛否あったこの人もこの時期には円熟していたのだ、とマゼールと間違えた私はおもった(直後にマゼールNYP聴いたらずっと地味だったが)。かつてのスヴェトラーノフからすると抑制がきいている。2,3楽章は間延びとは言わないがこの曲に親しんでいる人は戸惑うかもしれない。そのためアダージェットはことさらに取り出されて演奏される楽章ではなく、スケールの大きな3楽章のあとにハマって聴こえる。デロデロ節ではない、時間をとって静かに描いていく。このあとの5楽章の弦の激しいアンサンブルが曲の聞き物なのだが、残念なことに乱れる。これは一箇所だけではなく、この曲の引き締めどころで弦楽合奏がこれだと、それまでの楽章を耐え抜いた意味がなくなる。まあ、ライヴなので仕方ない。とんでもない怒号のようなブラヴォに郷愁を感じる。