○マリス・ヤンソンス指揮RCO(RCO)2005/8/22・9/7,8・CD
まー実演でこんなに隅々まで聞こえるわけはないのだが、ぼーっと聞いているとさらっとするする聞けるのに、譜面を意識して聞くとかなりアクの強さも感じさせる演奏だ。比較的ニュートラルで弦楽器は非力といってもいいこのオケで、充実した聴感を与えるには異常なほどのテンポのメリハリや細かいフレージングへの配慮にオーケストラ総体として広く響かせる解釈の絶妙と統率力の強さがあり、またとくに静かなパセージの恍惚的なテンポの丁寧な表現には、音の透明感と崩壊しかねないほどの感情の起伏の絶妙な(計算された)バランスが聴かれ秀逸だ。あくまで現代の覚めた演奏でいながら、かなりの深い呼吸ぶりが必ずどこかの声部に感じられる。両端楽章の聞き易さと面白み、ライヴ感には当代随一のものがある。一楽章提示部の繰り返しには少し辟易するが、鋭い切っ先のリズム刻みがグダグダになることから救っている。アンダンテはロマンチシズム溢れるものだが、マリスのマーラーは基本的に明るいので(スケルツォからフィナーレの中では角笛交響曲の牧歌を思わせるほどに安らかな緩徐部も聴かれる)さほど引っ掛かりはない。優しい。実演はここまで綺麗に聞こえるものではなくかなり操作されているが、何か一枚だけ、新しい録音で、と聞かれたときに差し出すには適した好演。○。
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