○エリヤスベルグ指揮レニングラード・フィル(LANNE:CD-R)1960/5/9live
一見まるでムラヴィンスキーしかいなかったかのような「レニングラード」オケだが、そのじつ数々の知られざるロシアの名匠、もしくは後年西側に出てきて初めて知れ渡ったような大物が振ってきたオケであり、旧くはニキシュの時代より西欧から招聘された名指揮者が振ってきた歴史ある、比較的西欧色の強いオケである。中欧オケ同様歌劇場との結び付きが強く、もちろん別組織ではあるのだがメンバー的に重複したり、時代によっては歌劇場陣は事実上二軍オケというのも多聞に漏れない。ただ細かいことについては私もあんまり覚えてないのでマニアに聞いてください。そういう経緯で時期により指揮者により音が違うことも多く、レニングラード・フィルと称して録音していながらもムラヴィンスキーが”本国で”振っていた「一軍」とは違う、バラケ味のある(コンドラシンが振った時を除く)モスクワのオケのような音をさせることもままあった。ガウクが日本でムラヴィンスキーのかわりに指揮した悲愴などは寧ろ指揮者の個性に起因する「グダグダ」と「強引さ」があったとも言えるので(寧ろソヴィエト国立を思わせる音になっていた)オケだけの理由で音が変わるわけでは無論ない。
ムラヴィンスキーが個々の奏者の派手な技巧に強烈な力感を放散するような音楽ではなく、ひたすら内圧を高める全ての凝縮された音楽を指向したのはいうまでも無いが、レニングラード・フィルの歴史に残る”脇役”エリヤスベルクの解釈ぶりもけして拡散的になるものではない。ザンデルリンクの数少ない録音は既にやや横長の作りが出ていたが、比べてニュートラルで速いテンポに強い求心力と割とわかりやすい。とにかく実演で酷使された指揮者特有のストレートで強靭なスタイル、デトロイトのドラティのスタイルをちょっと思い浮かべたのだが、割と音の切れが悪く歌謡的な繋ぎ方をするところがあり雑味を呼び込む、そういう少々のアバウトさもある。3楽章などは曲のせいもあるが・・・しかしこの3楽章はこういった気を煽るも響きの重い舞曲であるべきなのかもしれない。クライバーより正統なのかも。ブラームスの楽曲自体がどうやっても堅固であるので、寧ろその雑味が重厚でメカニカルな書法に血の通った筋肉を加え俊敏さと感情豊かさの両方を倍加させることに成功している。ムラヴィンスキーの禁欲性もいいが、こういった程よく感情的な演奏もいいだろう。
ただ録音は最悪。特に1楽章は左に音が偏り、後半はノイズがひどい。放送か板起こしか、後者であることは間違いないようにも。○。
一見まるでムラヴィンスキーしかいなかったかのような「レニングラード」オケだが、そのじつ数々の知られざるロシアの名匠、もしくは後年西側に出てきて初めて知れ渡ったような大物が振ってきたオケであり、旧くはニキシュの時代より西欧から招聘された名指揮者が振ってきた歴史ある、比較的西欧色の強いオケである。中欧オケ同様歌劇場との結び付きが強く、もちろん別組織ではあるのだがメンバー的に重複したり、時代によっては歌劇場陣は事実上二軍オケというのも多聞に漏れない。ただ細かいことについては私もあんまり覚えてないのでマニアに聞いてください。そういう経緯で時期により指揮者により音が違うことも多く、レニングラード・フィルと称して録音していながらもムラヴィンスキーが”本国で”振っていた「一軍」とは違う、バラケ味のある(コンドラシンが振った時を除く)モスクワのオケのような音をさせることもままあった。ガウクが日本でムラヴィンスキーのかわりに指揮した悲愴などは寧ろ指揮者の個性に起因する「グダグダ」と「強引さ」があったとも言えるので(寧ろソヴィエト国立を思わせる音になっていた)オケだけの理由で音が変わるわけでは無論ない。
ムラヴィンスキーが個々の奏者の派手な技巧に強烈な力感を放散するような音楽ではなく、ひたすら内圧を高める全ての凝縮された音楽を指向したのはいうまでも無いが、レニングラード・フィルの歴史に残る”脇役”エリヤスベルクの解釈ぶりもけして拡散的になるものではない。ザンデルリンクの数少ない録音は既にやや横長の作りが出ていたが、比べてニュートラルで速いテンポに強い求心力と割とわかりやすい。とにかく実演で酷使された指揮者特有のストレートで強靭なスタイル、デトロイトのドラティのスタイルをちょっと思い浮かべたのだが、割と音の切れが悪く歌謡的な繋ぎ方をするところがあり雑味を呼び込む、そういう少々のアバウトさもある。3楽章などは曲のせいもあるが・・・しかしこの3楽章はこういった気を煽るも響きの重い舞曲であるべきなのかもしれない。クライバーより正統なのかも。ブラームスの楽曲自体がどうやっても堅固であるので、寧ろその雑味が重厚でメカニカルな書法に血の通った筋肉を加え俊敏さと感情豊かさの両方を倍加させることに成功している。ムラヴィンスキーの禁欲性もいいが、こういった程よく感情的な演奏もいいだろう。
ただ録音は最悪。特に1楽章は左に音が偏り、後半はノイズがひどい。放送か板起こしか、後者であることは間違いないようにも。○。