湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

ドビュッシー:弦楽四重奏曲

2006年02月25日 | ドビュッシー
ボリショイ劇場弦楽四重奏団(melodiya)LP

モノラル。私の盤は盤面が荒れすぎて正直ひどい。でも、演奏も変。これで19世紀的な生ぬるい音色ならロマン派解釈のドビュッシーとして特筆できようが、音色は硬質で冷たいというか、ボロディンQに似た感じで、50年代までのロシア録音にしてはいささか感傷が足りず、でも非常に伸び縮みする独特のテンポ設定、特に3楽章のゆったりとした中で異常に引き伸ばされた起伏が、「透明感があるのにただ伸び縮みしている」、変なかんじだ。1楽章からもう異様な解釈が目立ち、やけにゆっくりだらけた(ように聞こえる)テンポから始まったと思ったらスピッカートを多用して奇妙にブツ切れの動きをしてみたり、酷く人工的なのだ。音色に魅力がないのが痛い。初期ドビュッシーにはロマン性は欠かせないから、ロマン性を音色のバリエーションで補ってほしかった。テンポとデュナーミクだけでは語れない。無印。奇演好きなら。最後の異常なアッチェルでそのまんま駆け上り焦燥感のまま終わるとこなんてのも、なかなか独特。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第6番

2006年02月20日 | マーラー
○カラヤン指揮ベルリン・フィル(KARNA:CD-R)1977/6/17パリLIVE

なかなか聞ける。とにかく異常に気合が入りまくったオケの力量の高さには瞠目だ。カラヤンでも記録としては最初にあたるものだと思うが、解釈に奇をてらったところはなく、だからこそ味わえるオーソドックスな味、それが極上のオケによって歯ごたえのある料理に仕上がっている。他の盤と比べてもこのテンションは尋常じゃないが、やはり1楽章が素晴らしく、冒頭のガシガシ斬り込むようなバス音域の弦楽器からしてわくわくさせるものがある。アルマの主題では壮大にリタルダンドし、しかしフォルムは決して崩さない。速めのテンポで颯爽と進むので、提示部を繰り返していても違和感はない。むしろ何度でも聞きたい提示部だ。2楽章スケルツォの完璧なアンサンブルといい、3楽章の期待される通りの叙情といい、4楽章の期待される通りのドラマといい、終演後の異常なブラヴォといい、最初の記録なのに、これが一番成功しているかのように思える。エアチェック録音のため雑音等気になるゆえ○にとどめておくが、最初に聞く6番としても、これは適切なのではないか。これを起点にいろいろと聞くと楽しめるだろう。聞きやすいから、初心者向き。・・・反面すれっからしからすると後半飽きてくるが。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

皮肉っぽく嵐のように豪快なロシアの名匠たち

2006年02月14日 | Weblog
今日はスヴェトラーノフ最晩年のマーラー9番スウェーデンライヴ(意外と軽くて速いのだ)を書こうと思ったのだが、「ソヴィエト・エコーズ」の余りの衝撃にとりあえずソレだけ書いておこう。1,2巻しか買ってないのだが(3巻はピアノ編なので静観・・・ソフロニツキーの映像は興味あるけど、ギンズブルグとかロシアンピアニズム好きには信じられないアルヒーフの蔵出しですな)、1巻はロストロポーヴィチ、2巻はショスタコーヴィチが主題になっていて、そこを彩る「実在がとうてい信じられないような伝説的映像の数々」・・・

(ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番終楽章「自作自演」・・・指が10本以上あるマンガにカリカチュアライズされたのも頷けるすさまじい速さだ・・・、ベートーヴェン四重奏団のショスタコ2,15番(シリンスキー!)、座るなり謝肉祭をバリバリ弾きだす壮年期のリヒテル、オイストラフとコーガンという信じられない両親子によるヴィヴァルディの4重協奏曲、プロコが窓辺のピアノに座って弾く自作自演(戦争と平和のワルツだと思うが本編では6番シンフォニーの抜粋のような字幕になってる、字幕にやや難があるので英語聞いたほうがいい)、ストラヴィンスキー凱旋帰国公演の抜粋(これは音はさんざん復刻されているし、映像的に面白い動きもないいつものストラヴィンスキーだけど、やっぱヴォルガの舟歌は感慨深い)、ロストロ先生最盛期映像の物凄い記録・・・特にショスタコ2番をスヴェトラーノフとやった初演映像はまるで自作自演のような殆どロックのノリのすさまじさ、ロジェスト先生とやったドヴォコン最後も圧巻、でもなぜ当人のインタビューが無いのか?)

・・・が売りではあるけれど、やはりソヴィエト時代のロシア音楽の状況を、傍証的インタビューを交えて英国という芸術に中立な国にて描き出した番組なだけに、ドキュメンタリーとしても見ごたえがある。民衆に芸術を、という国家理念自体には一種感動する部分もある(1巻冒頭労働者の間で歌う信じられない歌手群の姿・・・アメリカの黒人問題やロシアのユダヤ人差別という横絡みも確認できる)。結局権力者(特にあのオバサン)たちが理念を捻じ曲げてしまったのだ、ということが頭でなくカラダでわかる。ロシア好きは必見でしょうね。ロシア往年の楽団の素晴らしさにも驚嘆するところがあります。ソリストの個性は言うに及ばず、弦のボリューム感、特にチェロの表現力とノリには驚嘆しました。それにしても西側で過剰に演出されて伝えられる感のある「ソヴィエト圧政下の芸術家の悲劇」、当の本人たちはほんとにギリギリの現実感の中で生活していたからそんなに感傷的な雰囲気も無く、寧ろ皮肉とともに豪快に笑い飛ばすみたいなところもあったみたいですな。繊細な人として扱われることの多いショスタコの機関銃のようなしゃべくりとかヘビースモーカーぶりとか、こう描かれると確かにそういう強烈な人だったんだろう、という感じもしますし、フレンニコフさん(健在だったのか)も苦労してたんだな、シェバーリンはあれだけ民族的な楽曲を作りながら芸術活動より追放されたのか(婦人健在でインタビュー)、とか、あの国家的雰囲気の中で際立ってやはりロストロ先生というのは強靭で男気あふれる人だったんだなー、と思いました。民衆に芸術を、という意味では一番体言できる人なんだから(首都高が渋滞してたらチェロ降ろして弾きだしたとかいうエピソードとか、ベルリンの壁が壊されているニュース映像の中で紛れも無く先生が壁の前でチェロを弾きまくっていて「嬉しくて楽器を弾いている人もいますね」とかなんとかアナウンサーにコメントされてたこととか、小澤氏と田舎の学校を回って演奏会をやっていたり、ショスタコーヴィチ・フェスティバルを「彼との約束だ」と殆ど自費開催的に東京でやってのけたり、もうスケールが大きいとかそういう問題じゃなく民衆のための芸術というものを率先して実践しているのだ)、この人を国外に追いやったのは失敗だったし、でも必然だったんだろう。第一回チャイコフスキーコンクールのアシュケナージ・オグドン対決の背景(もちろん映像付)も出てきます。ストラヴィンスキーが終演後語った「このホールで6歳のときチャイコの悲愴自作自演を見て感動し、楽屋に連れて行かれたらやさしく頭を撫でられた」という話を、その場で聞いた人の生々しいインタビューで見れたのも嬉しかったなあ。

あの膨大なアルヒーフは、折角死ぬ思いで残してきたものなのだから、なんとか日の目を見させるべきだ。コンドラシンやムラビンスキーといった有名な人こそ出てこないけど、この映像はまずその入り口として十分に機能して次への扉をひらくものとなってほしい。文句なしにおすすめです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

伊福部昭氏死去

2006年02月09日 | Weblog
驚きました。1年くらい前までお元気のような話を聞いていた気がするのですが。現住所は近所なもので・・・何とも・・・

伊福部昭氏 91歳 ゴジラの音楽、文化功労者
 ゴジラ・シリーズをはじめ二百曲以上の映画音楽で知られる文化功労者の東京音楽大学元学長、伊福部昭(いふくべ・あきら)氏が八日夜、死去した。九十一歳。北海道出身。自宅は東京都世田谷区尾山台二ノ七ノ七。葬儀・告別式などは未定。(産経)
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

マーラー:交響曲第6番

2006年02月07日 | マーラー
ホーレンシュタイン指揮ボーンマス交響楽団(KARNA:CD-R)1969/4/16LIVE

精彩に欠ける演奏。録音は茫洋とし薄いノイズが支配している。演奏自体確かにホーレンシュタインらしいものなのだが、オケのせいか個性がなく、いたずらにフォルムを大事にしているわりにはがっしりした構築性が感じられずいささか心もとない。ゆるいテンポで終始余り揺れずに流れるだけで、パンチがなくマーラーを聴いている醍醐味がない。3楽章から4楽章はまだ楽曲自体の魅力で聴けるものがあるが、なんとなく腑に落ちないまま終わってしまった。もっと重いオケなら個性が際立ったろう。無印。直後に聞いたコンドラシンの正面切った魅力との落差が・・・
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ラヴェル:弦楽四重奏曲

2006年02月03日 | ラヴェル
○パスカル弦楽四重奏団(concert hall)LP

1楽章は凡庸。しかしこれは明らかにラヴェルである。ラヴェルではない勘違い(決してネガティブな意味ではないよ)の多い時代なだけに安心して聞ける面もあるが、つまんない、という印象のほうが強い。カペーのスタイルを彷彿とする。2楽章はかなりやばい。ピチカートがずれてる・・・これが何と終始ぎくしゃくしたテンポ感の中でえんえん続くのだ。再現部まで。これは・・・である。しかし、その次の緩徐楽章、ここで初めてこのフランス派の先達の威力が発揮される。このラヴェル旋律の持てる感傷性を引き出せるだけ引き出した、余韻のある非常に心根深い演奏ぶりで、音楽の美しさと、ほのかな哀しさに涙する。これができたから半世紀以上あとの現在も名前が残り続けているのか。。即物的印象の大きい演奏録音もある団体だが、この歌い上げ方・・・けして「情に溺れて」はいない・・・はほんと、白眉だ。そして4楽章は見事に盛り上がる。ブダペストあたりの現代的で厳しい演奏とは違うけれども、古いロシアンスタイルのようなデロデロぶりとも全く違う、フランス派のカッコイイ盛り上がり方をすべらかに堪能できる。総じて○。前半楽章で投げ出さないこと、逃げ出さないこと、それが大事。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする