コラッシ(msp)キャプドヴィエル指揮パリ室内楽協会管弦楽団他(forgottenrecord)1953/6/10放送用録音(初録音)
オラトリオとはいうが独唱部が多く管弦楽、とくに弦楽合奏だけで音楽を進める場面も多い(演奏はとても達者である)。少しノイジーだが聴きにくくはなく情報量もある。序盤こそドビュッシー最盛期の再生産というような作風で、コープランドのバレエ音楽のような単調な響きに、やはりこうなるのかとおもったところが「赤死病の仮面」を思わせる奇怪な刻みから怪奇趣味全開の前衛的な世界に転換し、その中にもどこか典雅で品の良さが感じられる。長々とヴァイオリンのソリで力強くも暗いフレーズが奏でられたり、もはやドビュッシーではない。新ウィーン楽派やバルトークすら思わせる響きであっても、ロマン派や民族主義のような開放的なところはなく全て節度と密度を持っている。簡潔さは一つのこの人の特徴であり、煩雑にならないところは作品の内容的なもの含めオネゲルを想起する。歌唱の明らかさは、ペレアスを思わせる朗唱的な部分もあるが、とてもわかりやすい。コラッシの技術にもまして曲の優れたところだろう。末尾近く突如弦楽合奏が始まるが、ここはどう聴いても新古典主義のそれだ。しかし音楽は神秘に還りゆく。しずかで不可思議な明るい世界のなかで、歌唱自体はあまり調子を変えない。マーラーをすら思わせる重厚な音楽の盛り上がりの中にモダンな響きも入り、宗教性と世俗性が拮抗するが、きちんとまとまっているのもキャプレの腕か。強い旋律、ホルストのような卑近なアピール力の強いオーケストラ(微細な響きがほんとうに素晴らしい)、こういうところもドビュッシーとは違う。だから起伏の大きいポー劇もものにすることができたのだろう。。ドビュッシーにあった方法だけでは難しい。