ラトル指揮ベルリン・フィル(PANDORA'S BOX:CD-R)1987/9/14LIVE
ラトル若干32歳、衝撃の演奏として当時話題になったもの。のちのち長くマーラーに取り組み、またベルリン・フィルと組むそもそものきっかけとなった。全般率直で速く、後年とはかなり印象を異にする。さっさと進みしかしテンション高く若気の至りを時々迸らせながらドライヴしてゆく。解釈のミニマムな部分には後年に引き継がれるものももちろんあるし、アダージオの純粋に音を磨き過度に思い入れを込めないあたりは同じなのだが、テンポが格段に速いのはやはり大きな違いとして認識される。また、解釈の個性という面ではそれほど魅力的ではない。
一楽章冒頭からもう、若いというか、統率力に疑問を感じさせるバラケっぷりが聞かれ、アルマの主題は音色を付けることなくあっさりやりすごし、ひいてはパート、セクション間に微妙なテンポ差が出るという危ない場面も見られ、ベルリン・フィルの合奏力や鋼の音を生かしきれていないようにも感じられるが、音楽的には妙に引き締まっており、若手の客演ライヴとしては充分許容範囲と言えるだろう。直球系指揮者の暴走みたいなところもある。鞭の音が面白い。提示部反復あり。二楽章アダージオは前記のとおり。この楽章はほんと後年と全然テンポが違う。スケルツォは烈しさが感じられるものの割合普通。
四楽章はとにかく荒々しく突き進むがちゃがちゃした音楽で、これはもうシェルヒェンだ、と思えば楽しめる。もっとも解釈的な面白さは少ないので三度聴くもんじゃない。ゴングなど金属打楽器を強調して響かせているのが特徴的だが、緩徐部での余りにリアルでやかましい響きはファンタジーを阻害しマーラーの本質を殺している。もっとも、シェルヒェンと思って聴けばそれも許せるだろう。とにかくオケが崩壊しようが構うもんかの態度は若い者の特権だ。これが衝撃的デビューとされたのはちょっと意外というか、そこまで凄い演奏とも思えないが(ブラヴォも出ません)、ベルリン・フィルの特に弦楽器をここまで必死にさせることができた(つまり即興的にアッチェルしたり気まぐれな部分で必死についてこさせた)のは並ならぬ統率力の証拠と好意的にとらえることもできるだろう。まあ、カラヤン後のベルリン・フィルでは滅多に聴けなかった必死な演奏である。もうアンサンブルとかザッツの乱れとか音色とかいうレベルじゃないので、神経質なかたには絶対お勧めできない。2005年のウィーン・フィルとの合同ライヴに比べ、コンマスソロがかなりまともなのは評価できる。標準レベルに美しい音色だ。奏者の問題ではあるが。
悲劇的ばかり、しかもラトルばかり聴いてきたが、やはりこの曲は並ではなく、結局何度もどんな演奏でも聴けてしまう、じつに練り上げられた名曲なのである。この一大叙事詩のあとに7番という全く異なる散文詩を書いたというのは信じられない転換といってよく、マーラーという才能がいかに短期間でめまぐるしくさまざまな力を発揮して去っていったのかがわかる。最近時間の関係上マーラーは聞いていなかったが、久しぶりに聞くとやっぱり、凄いもんだ。
ラトル若干32歳、衝撃の演奏として当時話題になったもの。のちのち長くマーラーに取り組み、またベルリン・フィルと組むそもそものきっかけとなった。全般率直で速く、後年とはかなり印象を異にする。さっさと進みしかしテンション高く若気の至りを時々迸らせながらドライヴしてゆく。解釈のミニマムな部分には後年に引き継がれるものももちろんあるし、アダージオの純粋に音を磨き過度に思い入れを込めないあたりは同じなのだが、テンポが格段に速いのはやはり大きな違いとして認識される。また、解釈の個性という面ではそれほど魅力的ではない。
一楽章冒頭からもう、若いというか、統率力に疑問を感じさせるバラケっぷりが聞かれ、アルマの主題は音色を付けることなくあっさりやりすごし、ひいてはパート、セクション間に微妙なテンポ差が出るという危ない場面も見られ、ベルリン・フィルの合奏力や鋼の音を生かしきれていないようにも感じられるが、音楽的には妙に引き締まっており、若手の客演ライヴとしては充分許容範囲と言えるだろう。直球系指揮者の暴走みたいなところもある。鞭の音が面白い。提示部反復あり。二楽章アダージオは前記のとおり。この楽章はほんと後年と全然テンポが違う。スケルツォは烈しさが感じられるものの割合普通。
四楽章はとにかく荒々しく突き進むがちゃがちゃした音楽で、これはもうシェルヒェンだ、と思えば楽しめる。もっとも解釈的な面白さは少ないので三度聴くもんじゃない。ゴングなど金属打楽器を強調して響かせているのが特徴的だが、緩徐部での余りにリアルでやかましい響きはファンタジーを阻害しマーラーの本質を殺している。もっとも、シェルヒェンと思って聴けばそれも許せるだろう。とにかくオケが崩壊しようが構うもんかの態度は若い者の特権だ。これが衝撃的デビューとされたのはちょっと意外というか、そこまで凄い演奏とも思えないが(ブラヴォも出ません)、ベルリン・フィルの特に弦楽器をここまで必死にさせることができた(つまり即興的にアッチェルしたり気まぐれな部分で必死についてこさせた)のは並ならぬ統率力の証拠と好意的にとらえることもできるだろう。まあ、カラヤン後のベルリン・フィルでは滅多に聴けなかった必死な演奏である。もうアンサンブルとかザッツの乱れとか音色とかいうレベルじゃないので、神経質なかたには絶対お勧めできない。2005年のウィーン・フィルとの合同ライヴに比べ、コンマスソロがかなりまともなのは評価できる。標準レベルに美しい音色だ。奏者の問題ではあるが。
悲劇的ばかり、しかもラトルばかり聴いてきたが、やはりこの曲は並ではなく、結局何度もどんな演奏でも聴けてしまう、じつに練り上げられた名曲なのである。この一大叙事詩のあとに7番という全く異なる散文詩を書いたというのは信じられない転換といってよく、マーラーという才能がいかに短期間でめまぐるしくさまざまな力を発揮して去っていったのかがわかる。最近時間の関係上マーラーは聞いていなかったが、久しぶりに聞くとやっぱり、凄いもんだ。