湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

※旧ブログの一部コラム・記事、全画像は移植していません。こちらのコンテンツとして残します。

オネゲル:交響曲第2番

2019年03月07日 | フランス
ミュンシュ指揮スイス・ロマンド管弦楽団(SLS)1964/11/4ジュネーヴlive

何とまたミュンシュの2番。録音はまあまあで情報量がある(この曲は編成が小さいのでそこそこでいいのだけど)。闘争から勝利というベートーヴェン的展開をみせる典型的な「魅せる」オネゲルであり、しかし占領下パリにて作曲という状況説明のようなわかりやすさでは(書法的には凝っている)異色の交響曲とも言える。ミュンシュの2番だと60年代半ば近くなのでテンポが延び落ち着いたリズム取りだが、技術的にどうなんだろうと思うような感情的な音も出すオネゲル故国のオケは、三楽章のやらしいポリリズムをびしっと最後まで揃えやり抜き、ミュンシュのものとしてもかなり良い出来となっている。激して前のめりのテンポになりつつ(ミュンシュの気合いが変なところで入る)、ひたすら弦楽アンサンブルを聞かせようという感じで、転調してからも音量とテンポを一定に維持し決して見えを切るようなやり方をしない。トランペットは完全に援用にすぎない。この曲におけるミュンシュの晩年様式だからということもあろう。色彩味はほどほどだがボストンほど機械的ではなく、フランスオケの明るさを兼ね備え、一方音に重みがある(アンセルメも国民楽派などではそういう音を出させた)、ちょっと違った味わいがあり、おそらく特別な場において緊張感を維持できたから、盛大な聴衆反応を得られたのだろう。
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アイアランド:チェロ・ソナタ(チェロと弦楽合奏のための編曲)

2019年03月07日 | イギリス
ウォルフィッシュ(Vc)カーティス指揮スワン管弦楽団(NAXOS)CD

二楽章に甘やかなディーリアスふうのメロディが流れるが、全体としてチェロのための曲らしく渋く薄暗い雰囲気が蔓延する。とくに焦燥感溢れる3楽章は硬質な作品を書いていたころの作風だが、アイアランドの個性の一つである呪術的なフレーズは1楽章にあらわれるにとどまり、むしろ同時代者によくあった時代の景色をうつしたような、ある意味個性の薄い音楽になっている。昇りつめて明るい響きを獲得したとしても、旋律性には逃げず奇妙な揺らぎで個性を発揮し、奇妙なくるくる回る装飾音の連環により終わる。演奏はアイアランドの平易な曲とは違った腕の見せ所を、といったところで、バックの弦楽合奏は上手い。いまどきの弦楽合奏の精度だ。ソリストは高音で少し不安定になるところもあるがおおむね曲の邪魔はしない・・・そう、なぜこの曲を弦楽だけで編曲しようと思ったのだろう。均質の音でそろえてしまったため、とくに1楽章は全体の響きの中にソロが埋没し、変な印象派めいた曲になってしまっているというか、何の楽器のためのソナタなのかわからなくなる。終楽章終盤でも弦楽合奏が高音域で重音を伸ばしている下で、ソリストが旋律をかなで続けるが、そう意識して聴かないと、ロマン性の薄い旋律自体を見失う。この編曲はじつにわからない。
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アイアランド:おだまき

2019年03月06日 | イギリス
レネハン(P)(naxos)CD

1949年と戦後作品だが大変美しい上に、昔の魔術的な作風を彷彿とさせる妖しい動きやディーリアスの三つの前奏曲、ドビュッシー、サティといった大昔のフランスに流れた夢のような作品を彷彿とさせる、また淡い世界より生命力あふれる眩さを放ったり、アイアランドの典型的なロマン作品のていをとりながら、比較的複雑な小品となっている。レネハンは急くようなテンポをとり残響もさほど残さないけれどこのアルバム最後のトラックでは即物的なふうはおさまり、タッチはニュアンスに欠け強めだが、この曲そのものの魅力だけを伝え充分に魅力的である。
 
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ドビュッシー:バレエ音楽「遊戯」

2019年03月06日 | ドビュッシー
ブーレーズ指揮クリーヴランド管弦楽団(DG)CD

ブーレーズもよくわからない芸風で、部分的にはみずみずしく繊細な音ではあるが、底深いロマンティックな、言い換えれば分厚く重くスクリアビンのような音楽になっている。遊戯は前衛的とも言われた音楽だが、これだと「海」よりもわかりやすすぎて前期作品のようだ。言い換えればスコアを整理するとここまで単純なスペクタクルになりうる音楽だ、ということかもしれない。ブーレーズのものとしてドイツのオケより私は好き。かなり迫力ある庭球絵巻(?)になっているので、スケール感を求める人には向く。
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ラヴェル:バレエ音楽「マ・メール・ロワ」

2019年03月06日 | ラヴェル
ブーレーズ指揮BPO(DG)CD

8曲からなるバレエ編集版。聴き慣れない曲が混ざるが出だしは組曲よりこのほうがしずかでいい。あとはメリハリなく冗長だが。オケがベルリンフィルなので、この曲の誇る明るい色彩感や透明感はフランスオケなどと比べいかんともしがたいところがある。ねっとり重い。仄かな感傷や幻想味はスコアからの即物的なもの以上のものは感じない。ぜんぜんオリエンタルな雰囲気も漂わない。ただブーレーズもかなりこなれておりリズム感や音響バランスはこのオケ相手でも美しく感じるところがある。妖精の園はブーレーズがやってもやっぱりロマンティックになっている。
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ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲

2019年03月06日 | ラヴェル
ベロフ(P)アバド指揮LSO(decca)CD

ピアノの低音に重みがないとこの曲は迫力がなくなる。オケも重量感ある響きが聴こえるので録音が良いのかもしれないが、雑味的にはけして最良の録音状態とも言えず、そういうドイツ的とでもいうような音を要求している部分もあるということか。解釈的にはストレートでぱっとしないといえばぱっとしないが必要な物は揃っており精度も高く、フランス的なものを殊更に求めなければこれで満足できると思う。
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アイアランド:夏の夜(パーレット弦楽合奏編曲)

2019年03月04日 | イギリス
カーティス指揮スワン管弦楽団(naxos)CD

サルニア二楽章同様の弦楽合奏編曲だが、原曲の旋律性が強く、響きはドビュッシー風という程度で印象にうすいため、ただ編成を拡大されるとロマン性が強すぎて味わいがなくなる。演奏はノンヴィヴも駆使してわりと達者だが、夏の夜(夕べ)という雰囲気からは離れた具象的なかんじの、歌謡的な管弦楽小品といった印象におさまった。
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ストラヴィンスキー:兵士の物語組曲(ヴァイオリンとクラリネット、ピアノのための)

2019年03月03日 | ストラヴィンスキー
ロスバウト指揮バーデンバーデン南西ドイツ放送交響楽団のメンバー(Artis他)1952/5/5・CD

ロスバウトは現代ものに限らず夥しく広範な録音を残しているが、ほとんどモノラルのためペイが見込めず復刻がされない、されても一回限りバラバラのレーベルからという状態が続いていた。それがDGのボックス以来の大箱となってArtisから廉価登場した。CDであればstradivariusからicaまでという古今カバーの仕方が凄まじい。廉価盤なりの質だが元の録音が良くないので大して違いはないと考えていい。この録音は手兵バーデンバーデンとのものなのでwergoかどこかのメジャーレーベルだと思うが(整ったセッションゆえ放送録音でもないだろう)、盤として記憶にないのでレーベルはATとしておく。ストラヴィンスキーがトリオ編成で書いた編曲でスコアを持っているが非常に巧緻で、原曲にひけをとらない聞き心地だ。ただこれはロスバウトが複雑な現代曲をやるときによくあったのだが、ものすごいローカロリーだ。意識して気を抜いてスコアを正しく発音していくような調子である。ただ曲想的に、また時代的に奏者に気が入ってくる場面もあり、「三つのダンス」あたりはロスバウトらしい不思議な愉悦感がかんじられる…正確さを極めたうえで音を適切に打ち付ける。それもまたカロリーを失うのは早い。だからといって現代的な精緻さの獲得まではいかず、正直半端な聞き心地のまま終わった。
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アイアランド:四つの前奏曲〜Ⅲ.聖なる少年(弦楽四重奏編曲)

2019年03月03日 | イギリス
マッジーニ四重奏団(naxos)CD

アイアランドで最も有名な作品(原曲ピアノ曲)とされているが極めて短い旋律音楽であり、印象派後の響きを用いているが寧ろ同時代のイギリス民族主義の民謡編曲のような風あいの曲である。アイアランドのピアノ曲を俯瞰すると時期により変化がある。比較的複雑でしばしば呪術的と言われる神秘主義の曲こそ昔はよく取りざたされ(音が多い曲を書いたからスクリアビンと比較された)、その対極にある後期のロマンティックな、特にサルニアのような曲は個人的に愛好される傾向にあった。この曲はその中では後者に位置づけられる。突出したものとは思えず自国でメロディが愛好され、さまざまに編曲された結果代表作のように扱われたにすぎないように思われる。古典的で形式的とも感じ取れる部分も目立ち、取り出してこのような編曲で中継ぎに演奏されるのはありかもしれないが、アイアランドを味わうには音が少なすぎる。カルテットは美しい編成だが、アイアランドにしてはあまり頭に残らない。自作自演が2つも残る「April」もこちら側だが、歌謡的な旋律にくわえサルニアに近い透明なロマンスが編み上げられており、私はHoly Boyより薦めたい。演奏は精度の担保された良い物。
 
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アイアランド:サルニア〜Ⅱ.五月の朝(パーレット弦楽合奏編曲)

2019年03月03日 | イギリス
○カーティス指揮スワン管弦楽団(naxos)CD

これは見事な編曲。アイアランド後期の憧れに満ちた作品〜その島の思い出はナチ侵攻によりひときわ悲しさを増す〜を均質な弦楽合奏で紡ぎ直すというのは、この曲のひときわロマンティックであるところと、緩徐楽章ということもあり要求される繊細な情感を変質させず広がりをもたせるのにうってつけだ。透明に安らかに、密やかに、原曲にも増して本質を掴んだような曲になっており、まるでフェンビーの描きなおしたディーリアスのように水彩画風の淡い色彩感が出ている。編曲者が変な作家性を持ち込まず真摯にやったものを、現代の弦楽合奏の精度で(音の多いピアノ曲は和音を終始綺麗に響かせていないと本質が損なわれてしまう)ノンヴィヴに近い音を交えながら雑味のない音を揺らがせ、それはこのような曲にはとても重要なことなのだ、と思わせる。今の精度からすれば最高級の腕ということもないのだろうが、この編曲を十二分に活かした名演だと思う。雑味のないアイアランドは瞑想的で何度でも聴ける。
 
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ガーシュイン:へ調のピアノ協奏曲

2019年03月02日 | アメリカ
○プレヴィン(P)コステラネッツ指揮彼のオーケストラ(sony/CBS他)1960/3/25・CD

なぜかモノラル配信音源があったので追悼に聴いてみる。録音か復刻か、ノイジーで雑で聴きにくい音だ。音色も聴き取れない。演奏は荒削りとか言い様はあるだろうが、この曲は荒削りであることが正しい。ほとんどいじらないクラシカルなスタイルなのだが、一楽章、三楽章の猛烈さはレヴァントのようなスポーティなものとは違う。すこし硬質の音で音を踊らせて、コステラネッツは千両役者のように付けていく。ホワイトマンのシンフォニックジャズはこういう演奏を目したんだろうなあ。三楽章は他を寄せ付けない圧倒的なフィナーレ。過ぎ去りしプレヴィンは若さを取り戻し、かの世でまたピアノを弾いているだろうか。
 
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ラヴェル:左手のためのピアノ協奏曲

2019年03月01日 | ラヴェル
ツィメルマン(P)ブーレーズ指揮LSO(DG)CD

録音は必ずしもよくないが演奏はきわめて高精度で、セッション録音だから当然だがミスがなくて安心して聴ける人はいるだろう。整えたような感じというわけでもなく、後半ドライヴ感をかんじるところもある。ただ全般に音が中途半端で、ソリストは表情をつけてニュアンスを具体的に表現するも録音にとらえきれずタッチの違いくらいしか伝わってこないようだ。オケはアメリカオケのようなオシゴト感のある背筋縦っぱなしのそつのなさで音色も明るいだけで雑味がないとも言えないから半端だ。しかし、左手をテクニカルな面から聞きたい人は選ぶだろうし、ラヴェル感はさほどないが、ブーレーズのイメージとしてある冷たく機械的なものを求めてもここにはないが、ちょっと特異な演奏を求める人にも案外向くと思う。
 
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プレヴィン死去

2019年03月01日 | Weblog
悲しいことだが確実に我々のいた時代は過ぎ去った。ご冥福をお祈りします。

プレヴィン死去

ロンドン交響楽団
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