バッハのゴールドベルグ変奏曲
もちろんグレン・グールドの演奏で。
朝は1955年録音盤、疲れたのにまだ寝つけない夜中には’81年盤を。
部屋じゅうに静かに流れるのを、聴くともなしに聴いている。
耳になじみ、ゆっくりと自分をとりもどしていく。
ざわざわと興奮したり苛ついたりはしゃいだりした外界から
内側へ引き戻してくれる。
ブルースやロックだけでは、わたくし身がもたないんである。
バッハは無伴奏チェロ組曲が最初の出会い。
もちろんカザルスの演奏、ラジカセから流れるその調べに衝撃が走り、
慌てて録音ボタンを押した二十歳の頃。
知人から借りたレコードを全曲テープに録音し、長い間重宝した。
(今もそのテープあります、ところどころ音飛び、大事をとって今はテープは
かけずにCDで聴く。CDがあればテープはいらんでしょ、とはならないのだ)
カザルスといえば鳥の歌だが、まちがっても朝から聴いてはいけない。
グレン・グールドで調子を揚げたのに、ソファに沈みこんでしまい
そうになるから。運転中もだめだなあ、ブレーキ踏みがちになるから。
珍しいことを書いたわけは、夜中にテレビをつけたらクラシック演奏会で
ブランデンブルグ協奏曲が流れていたから。
テレビは読書の敵、思考の邪魔と昼間話していたのに、
テレビをつけたらバッハ? それならよし、という話なわけである。
バッハ効果、なぜかはしらねど、とても役立っています。