チャルメラのひびきは秋の夜長に聞くといい。
細く伸びた路地の奥までチャルメラのおじさんはやってくる。
屋台をひいて、哀愁の音色を響かせて、空腹をなぐさめにやってくる。
秋は腹も減るのである。
ここには細い路地はない。かわりに細い山道があって、おじさんは
軽トラででもやってくればいいのに。
チャルメラの音を脳内再生して、わたしはガスの火をつける。
小鍋をかけ、湯を沸かす。
明星チャルメラを袋を取り出して、塩にするかしょうゆにするか、吟味する。
とはいうものの脳内再生中のおじさんの屋台にはしょうゆしかないのである。
塩はとっくに食べてしまって売り切れである。
ぷおぷおぷお~ぷお~とやや高めのキーで自分で言ってみる。
チャルメラが聴こえたつもりで、湯の中に乾麺を入れ、しばし待つ。
おっと、しめじも少し入れるね。
茹でたキャベツと小松菜は別の器によそおって、胡麻をかけ白出汁を少量かけておく。
鍋のなかは盛り上がっている。
火を止め、粉末スープを入れてかきまぜると、おお、チャルメラおじさんのラーメンだ。
すばやくどんぶりに移して、木の実スパイスを真ん中あたりにふりかける。
窓からもみじを眺め、小腹がすいた~、「おじさん、しょうゆ一丁ね」と言ってから
十分足らずである。まだ昼前だが‥‥
チャルメラは秋に似合う。
頭、小休止。