想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

あんこ玉と万葉集

2008-10-15 10:04:44 | 
     葉がすっかり落ち、紅い実が目立つようになったヤマボウシ
     つい摘みとって食べたくなるのです(食べても大丈夫です)。
    
     今日の主役は、紅い実ではなく黒い実、いや黒いあんこ玉。



     ご存知、京都の和菓子屋さん「仙太郎」の老玉(うばたま)です。

     「黒くて丸い形が、あやめ科の檜扇という植物の実に似ているので、
      名付けられた。古くは夜、月、夢といった言葉の枕詞に、
      ぬばたまの‥と用いられた。烏の濡羽にも似た漆黒の色なので
      〈烏羽玉〉とも書き、ぬばたま、うばたま、と訓む。」
     小さな折箱に掛けられた包装紙を裏返すと、裏に上の一文があります。

     その次に和歌が一首。
     その歌に、しばし釘付けになったのです。

     老玉は仙太郎の数あるお菓子の中でも特に好物で、それだけを買うと
     いうことはあまりないけれど、お使い物などで買物をしたときついでに
     自宅用に買うのが常で、でも包装紙はすぐに捨ててしまうので裏に歌が
     書かれてあることを今まで気づきませんでした。



     万葉集巻二の八十九
     相聞歌です。

     「居明(いあか)して 君をばまたむ 
         ぬばたまの 我が黒髪に 霜は降るとも」

     或る本の歌に曰く、と詞書があり、或る本とは万葉集編纂の底本(資料)となった
     飛鳥、藤原朝頃の古い歌集のようです。
     飛鳥時代とは今からさかのぼること千五百余年、そのいにしえの頃、
     あなたのことを、ずっとずっと思い続けて待ち続けています、私の髪が
     白いものに被われるくらい長い歳月がたとうとも、ここでまっています。
     と歌った、その人がやんごとなき人かどうかなどというのはどうでもよく
     その心が沁みてきます。

     老玉を黒文字に刺し、じっとみつめて、ぬばたまの~と思うと
     パクリと食べる気がいたしません、困りました。
     おいしいのに、大好きなあんこ玉なのに、なんか胸キュンになっちまって。

     PS:東京では伊勢丹新宿店地下一階に仙太郎はあります、他に銀座三越などにも
      あるかと思います(最近の銀座はよう知りませんが)。
      老玉は確かひと折で六百円くらいだと思います。

    
コメント (2)
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