朝陽のあるうちに外へ出た。
ゆうべの雨の名残か、湿り気のある雑木林に陽が
射し込んでちょうどよい温みだ。
陽がなければ、森のなかは朝晩、肌寒いから。
歩きつかれて、庭先にトドが一匹寝ていますなあ。
オ トド メクダサルナ、ミョウシンドノ…と言ってみる。
今日は朝から忙しかったが、来客にいいものをいただいた。
掘り立ての大根と里芋、そして曲がり葱。
大根を作りたいというばかりで、いまだに畑の用意もできない
うさこには畑の見学を勧められる。
見て倣え、そうすりゃわかるべ、と言われた。
さといもを洗って、ふと思った。
「今生(こんじょう)のいまが倖(しあわ)せ
衣被(きぬかつぎ)」 鈴木真砂女
これは波乱万丈の日々の生き抜いてきた真砂女さんの
晩年の作、ほんとうの気持ちがこんなにぴたっと表れて、
いい句というのはたくさんあるにしても、折に触れて思い出す。
その句を何度か口にのせ、芋を洗いつつ、う~っと唸り、
「大根の 泥みずながし すきとおる」
と駄作をひねりだす。
今生の~と言い切るにはまだちょっと修行が足りないので
大根と里芋の黄金コンビを晩飯の膳にのせ、よく思案して
みようと思うのである。
食えばわかる、の理屈である(わからんだろ?)