りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

逆立ち。

2011-04-29 | Weblog
5月の中旬に、小学校の運動会がある。

今月の中旬あたりから、僕が帰宅する頃、小6の娘が
リビングの壁に向かって、ほぼ毎日逆立ちの練習をしていた。
話を訊くと、運動会で組み体操をするそうで、その練習なのだという。
そして、クラスの中で逆立ちが出来ないのは、娘ともう1人の女の子
だけなのだそうだ。
そう言って僕に答えると、娘は黙々と逆立ちの練習を再開した。

しかし、中々上手くできない。

足が上がらない。
誰かに手伝ってもらって逆立ちできても、両手で体重を支えられず
すぐに倒れてしまう。
何度もやっても、その繰り返し。

気がつくと、娘は涙目になっていた。

こぼれ落ちそうな涙を、何度も両手で擦りながら逆立ちの練習を続ける。
僕は、娘に尋ねた。

「何で、泣く?」
「・・・。」
娘は逆立ちの練習をやめて俯いたまま答えなかった。
僕はもう一度尋ねた。
「何で、泣く?」
「・・・・・出来ないから。逆立ちが出来ないから」
娘は絞り出すような声で、そう答えた。
「そうか・・・だったら、出来るよ。」
僕は娘の頭を撫でて、そう答えた。

「何で出来ないのに、出来るって言ったの?」

クローゼットの前で仕事着から部屋着に着替えていた時、僕と娘の会話を
傍で聴いていた息子が僕も元にやって来て、不思議そうに尋ねた。

「お姉ちゃん、泣いてただろ?」
「うん」
「あれは、しんどいからとか、辛いからじゃないからなんだよ」
「どういうこと?」
「お姉ちゃんは悔しいから泣いてたんだよ。逆立ちが出来ないことが
悔しくて悔しくて泣いてたんだよ。」
「うん・・・」
「そういう人は、がんばって練習すれば必ず出来るようになるんだよ」
「・・・ふ~~ん・・・」
7歳の息子は、僕の説明にあきらかに理解できていない様子だった。

それから1週間。
今日、仕事から帰宅したら、玄関に娘が飛び出してきて、僕に向かって
こう言った。

「出来た逆立ち、出来た

そのまま僕は娘にリビングに引っぱって行かれて、娘の成果を見せられた。

床にしゃがんだ娘は、一度深呼吸すると、勢いよく足を蹴り上げた。
その直後、足がスッと伸び、天を越えて、そのまま静かに壁にくっ付いた。
両手は肩とほぼ同じ広さに開かれていて、しっかりと自身の体重を支えている。

キレイな、本当にキレイな逆立ちだった。

思わず、僕は拍手した。
キッチン目を向けると、妻が薄笑いを浮かべながら、夕食を準備をしていた。
きっと、僕が帰る前までの間、何度も何度も出来るようになった逆立ちを
見せられていたのだろう。

「な、だから言ったろう?出来るって」

僕は、娘と息子にそう言った。
逆立ちを終えた娘は、血が逆流してまっ赤になった顔を、少し自慢げで
嬉しそうに僕に向けた。
息子を見ると、相変わらずいまひとつ合点がいかない表情だった(笑)。

諦めない。
いつか必ずできる。

安易で、手垢のついた教訓だが、もしかしたら、社会的にも個人的にも、
今、最も大事な教訓かもしれない。
コメント
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