りきる徒然草。

のんびり。ゆっくり。
「なるようになるさ」で生きてる男の徒然日記。

キッチン。

2011-12-14 | Weblog
妻が風邪をひいた。

昨夜、仕事から帰宅すると、大きなマスクをして、キッチンで夕食の準備をしていた。
顔も、心なしか少し紅潮していた。
「大丈夫か?」と声をかけたら、「大丈夫」と、かすれた声で返事をした。

でも、そこまでだった。

夕食を作り、僕や子どもたちに食べさせた段階で彼女の限界が来たようで、その後、
リビングに横になってしまった。
妻がここまでにあからさまに調子が悪くなるのは珍しい。
いつもなら、ちょっとやそっとの風邪でも、食後に子どもの相手をしたり、食後の
散らかった食器を洗いはじめたものだった。

熱を計った。37.9°

その数字を見た僕は、気がつくと、キッチンのシンクに立っていた。
テーブルに散らかった茶碗や皿やコップをまとめ、流しに移し、スポンジを手に取って、
蛇口を押した。

久しぶりだ。

昔は、よく妻の代わりに洗い物をした。
娘が生まれた頃だ。
娘は夜泣きがひどかった。
夜中まで寝ないことが当たり前のような赤ん坊だった。
初めての育児でクタクタに疲れ、育児ノイローゼ寸前になっていた妻は、よく夕食の
後片付けができないまま、そのまま娘と寝てしまうことが多かった。
そんな時は、さすがに気が引けて、僕が洗いものをすることがよくあった。

いつからだろう?そんな風に妻の代わりキッチンに立たなくなったのは。

6年前に今の家に移ってからというもの、僕はまったくキッチンに立たなくなった。
今では、どこに調味料やスプーンがあるのかさえよく知らない。

黙々と皿やコップを洗っていたら、キッチンとリビングの間の扉が音もなく開いた。
横目で見ると、わずかに開いた扉から、まるで珍しい生き物でも見るような感じで、
娘が僕を見ていた。

「何だ?」

と僕が尋ねると、「お父さんも洗いものできるんだ?」と面白いものでも見つけた
ような口調でそう言った。

「できるよ~」

・・・と答えようとしたら、娘の背後から声が聞こえた。

「そうだよ、昔は代わりにしてくれてたんだよ、あなたが全然寝てくれないから」

声の主は、妻だった。

今朝、僕より先に起きていた妻は、相変わらず声はかすれてはいるが、昨夜よりも
調子が良さそうだった。
「まぁ、家事がひと段落ついたら、ゆっくり休みんさい」と仕事に行く間際、僕は
妻にそう言った。
もっとも、貧乏性で動いていないと気が済まない人だから、僕の言うことを素直に
聞くとは思えなかったが。

どうやら、今夜は、キッチンのシンクに立たなくてもよさそうだ。
でも、たまには・・・。
たまには、昔のように、妻の代わりに洗いものをするのも悪くないかもしれない。
コメント (2)
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