春 (ルーブル蔵)
「美の巨匠たち」奇想の芸術、アルチンボルド編。
16世紀に活躍したマニエリスムの系譜、イタリア人画家で、ウィーン:パプスブルク家の皇帝に仕えた。
様々なものを組み合わせて描いた肖像画風の絵で、象徴と寓意を盛り込んだ、当時としては奇想天外な絵を次々に世に送り出した。
3代の皇帝に仕えた中でも、マクシミリアン2世の治世に描いた4枚連作の”四季”は、いたく皇帝に気に入られ、ヨーロッパ各国に複製画を寄贈。
そのうちの一連作が、フランスのルーブル美術館に所蔵されている。
番組では、アルチンボルトの時代、錬金術が流行っていて、その思想がこうした奇想の絵を生み出すきっかけの一つになったのではといっていた。
それは、普通のものを完全なものへと変化・精錬させるという考え方だ。
ならば、アルチンボルドの絵は、なかなかうまくそれを成し果せたのかもしれない。
”春”は、春に咲く花々を使い、人生の春を象徴する少女の肖像画を描き、”秋”ならば、円熟した壮年の男性像に仕立てるというように。
また、当時のヨーロッパにおいて広大な領地を治めた神聖ローマ帝国に産する様々なものを使うことでも、国家の威信と宣伝を兼ねた。
あとは、”四台元素”の4連作とも対を成す構成になっている。
”春”は”大気”、”秋”は””大地”の組み合わせだ。
このような意味づけも、見た目の奇抜さで、子供遊びの落書きの延長上としか見られないかもしれない。
いや、それこそが、錬金術という、いかがわしくも科学に目覚めた時代精神ではないか。
その精神を持って、アルチンボルドは、真面目に遊んで描いた画家なのだと思う。
ただの真面目は、行き詰まり、柔軟な思考を阻むだろう。
一見、無謀でくだらないという思いつきが、次なる局面を展開してくれることは、意外とあるのだ。
あるものを見立て、違うものを引き出し置き換える、このような遊び感覚は、文化の爛熟期に出現する。
以前書いたが、歌川国芳の”寄せ絵”も、アルチンボルドに通じる。
そうだ、”見立て”は、文人の言葉遊びとして、日本に根付いている。
落語では、扇子や手ぬぐいが、いろいろな小道具として見立てられ使われているではないか。
アルチンボルドは、まだ見立て方に硬さがあるかもしれないが、当時のヨーロッパではかなり異端だったのではないだろうか。
遊ぶ、真面目に楽しく遊ぶ、柔軟な思考を持つことは、大切だと思った。
特に、いらないもの代表格の芸術にとっては、それが生命力なのだから。
秋 (ルーブル蔵)
「美の巨匠たち」奇想の芸術、アルチンボルド編。
16世紀に活躍したマニエリスムの系譜、イタリア人画家で、ウィーン:パプスブルク家の皇帝に仕えた。
様々なものを組み合わせて描いた肖像画風の絵で、象徴と寓意を盛り込んだ、当時としては奇想天外な絵を次々に世に送り出した。
3代の皇帝に仕えた中でも、マクシミリアン2世の治世に描いた4枚連作の”四季”は、いたく皇帝に気に入られ、ヨーロッパ各国に複製画を寄贈。
そのうちの一連作が、フランスのルーブル美術館に所蔵されている。
番組では、アルチンボルトの時代、錬金術が流行っていて、その思想がこうした奇想の絵を生み出すきっかけの一つになったのではといっていた。
それは、普通のものを完全なものへと変化・精錬させるという考え方だ。
ならば、アルチンボルドの絵は、なかなかうまくそれを成し果せたのかもしれない。
”春”は、春に咲く花々を使い、人生の春を象徴する少女の肖像画を描き、”秋”ならば、円熟した壮年の男性像に仕立てるというように。
また、当時のヨーロッパにおいて広大な領地を治めた神聖ローマ帝国に産する様々なものを使うことでも、国家の威信と宣伝を兼ねた。
あとは、”四台元素”の4連作とも対を成す構成になっている。
”春”は”大気”、”秋”は””大地”の組み合わせだ。
このような意味づけも、見た目の奇抜さで、子供遊びの落書きの延長上としか見られないかもしれない。
いや、それこそが、錬金術という、いかがわしくも科学に目覚めた時代精神ではないか。
その精神を持って、アルチンボルドは、真面目に遊んで描いた画家なのだと思う。
ただの真面目は、行き詰まり、柔軟な思考を阻むだろう。
一見、無謀でくだらないという思いつきが、次なる局面を展開してくれることは、意外とあるのだ。
あるものを見立て、違うものを引き出し置き換える、このような遊び感覚は、文化の爛熟期に出現する。
以前書いたが、歌川国芳の”寄せ絵”も、アルチンボルドに通じる。
そうだ、”見立て”は、文人の言葉遊びとして、日本に根付いている。
落語では、扇子や手ぬぐいが、いろいろな小道具として見立てられ使われているではないか。
アルチンボルドは、まだ見立て方に硬さがあるかもしれないが、当時のヨーロッパではかなり異端だったのではないだろうか。
遊ぶ、真面目に楽しく遊ぶ、柔軟な思考を持つことは、大切だと思った。
特に、いらないもの代表格の芸術にとっては、それが生命力なのだから。
秋 (ルーブル蔵)