今日の日中は、穏やかで初夏の陽気だった。
夕方近く、灰色の雲が、空を蔽い始めた。
明日は、花冷え、10度以上も気温が下がり、冷たい雨と風が吹くそうだ。
桜も、もう見納めか。
はらはら花びらが、舞いだした。
今年の桜は、見事の一言に尽きる。
寒さで開花が遅れ、ソメイヨシノ、枝垂桜、山桜が、ほぼ時を同じくして咲いたばかりではない。
花の付きもよかったのだ。
今の時期、車を走らせていると、山桜の多さに驚く。
まだ、木々の緑がない枯れ山に、白や薄桜色の山桜が、あちこちに咲いている。
しかも、うまい具合に散らばって、片寄りなく。
自然のバランス。
来年も、今年のように見事に咲いておくれと桜に言っても、それは人の勝手な望み。
生きるとは、瞬間を重ねていくだけ、先の保証はない。
桜にしても、病気になったり、虫が付いたり、風で折れたり倒れたり、はたまた人によってあっけなく切り倒されたり、来年花を咲かせるのも容易ではないのだ。
でも、その存在は、様々なものに影響を及ぼしている、かけがえのないもの。
人も桜も、互いの存在を思いやって、永い時を刻んでいけたなら、とても素晴しいことだろう。
明日には散る桜。
雨と風で散った花びらが地面を被い、薄紅色の川となっても、最後まで美しさを失わない。
ならば、その一生懸命な姿を愛でようか。
桜の命を思いやって。