rock_et_nothing

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ロシアのリアリズム、切り取られた一瞬。クラムスコイ「忘れえぬ人」

2013-04-10 15:51:11 | アート

クラムスコイ 忘れえぬ人



クラムスコイの「忘れえぬ人」を初めて知ったのは、いつの頃だったか・・・
記憶が曖昧で、その前後は定かでなくなってしまったのだが、大好きだった百科事典の美術の本、あるいはなにかの展覧会で、それとも朝日新聞の日曜版の美術特集で見たのだろうか。
しかし、一番印象に残っているのは、母がこの絵を好きだといっていたことだ。
淡く柔らかい光が満ちた世界に、黒の衣装を身にまとい、ふとした視線を投げかけるはっきりとした濃い顔立ちの女性がピラミッド型に堂々と描かれている。
手には、防寒具の一種のマフをつけて、ここが寒い地方だということを示すけれど、女性の顔からは寒さなど微塵も感じさせなく、彼女が堂々と自信に満ち溢れて生きていることが伺える。
自分の美しさを自覚して、賞賛の視線を受けるのを当然としているとも思える。
確かに美しく隙のない技術で描いた作品ではあるけれど、何を思ってその絵を好きだと母がいったのか、少し気になったのを覚えている。

ロシアには、一瞬を劇的に切り取ったリアリズム絵画がある。
スラブ的独特な感覚なのだろうか、アール・ヌーヴォーの花形アルフォンス・ミュシャの描くスラブ叙事詩を観たとき、一般的なミュシャのイメージを覆す民族主義的なリアリズムに驚いたことがある。
広大な大地に根付いた、土着性の高い呪術的エネルギー。
湧き出る圧倒的エネルギーに、気圧されてしまいそうだ。
クラムスコイも、その力を持っている。
これは、ヨーロッパとはまったく異なる性質なのだ。

「黒い瞳」という音楽があるが、ロシアのロマ民謡からきているという。
哀愁漂うメロディーは、スラブ的な情熱も持ち合わせ、これと合わせて絵を観るのもいいだろう。
ユーラシア大陸の中ほどの息遣いが、感じられると思うから。


ミュシャ 農奴の解放


クラムスコイ 曠野のイエス・キリスト

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黒い瞳  ポール・モーリア Les yeux noirs Очи чёрные Dark eyes Paul Mauriat