rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

人の内側の聖と俗、ジョルジュ・ラ・トゥール

2013-04-14 16:59:06 | アート

悔い改めるマグダラのマリア


いかさま師

フランスの17世紀前半の画家ジョルジュ・ラ・トゥール。
ロレーヌ地方で活躍したためか、100年以上も忘れ去られていた。
しかし、20世紀になって再び見出され、評価が高まったという幸運な画家でもある。

暗闇に一筋の蝋燭が浮かび上がらせる祈りの世界と、平明な光の下に暴かれる人の俗な部分の、2つの世界を描き続けた。
暗黒の世にあっても、蝋燭の明かりに象徴される神もしくは人の良心は、導き手でもあり希望でもある。
光に向いて心から祈り、神の慈悲に報いるために行いをすれば、救いが差し伸べられるという比喩であろうか。
かたや、欲望のままに愚かな行為をし、人を欺こうとしても、神を欺くことはできない。
光は全てを暴き出し、神は何でもお見通しだといっているようだ。
どちらにしても、かなり宗教色が濃い作品なのではないか。

彼の作品が、しばし人の関心を引かなくなったのは、時代の流れに逆行した濃い宗教性にあるのではないかと考える。
彼の作品は、バロックのダイナミズムも新古典主義のロマンチシズムもなく、来るべきロココの優美さも持ち合わせてはいない。
画面に満ちる静謐な深い宗教性を敬遠する時代が、到来したのだ。
誰しも自分の中にある暗くよどんだ負の部分を見たいとは思わない。
それを容赦なくさらしてしまう神聖なものから遠ざかり、悔悛の念を呼び覚ますものから逃げようとする。
一見明るいはずの時代の暗闇に、ラ・トゥールの絵は沈んでいったのだ。

今、ラ・トゥールの絵を見るには、どこか良心が痛むような時代であるかもしれない。




白い砂浜ターコイズブルーの海、メキシコのカンクン

2013-04-14 12:16:59 | 街たち
「にじいろジーン 地球まるごと見聞録」メキシコ、ユカタン半島のカリブ海に面した突端に位置する、マリンリゾートの街カンクン。
白い砂浜は延々と20キロメートルも続き、ターコイズブルーのうっとりとするような海の色が、観光客をひきつける。
近くには、マヤ文明のチチェン・イッツァ遺跡などもあり、海と歴史の両方を満喫できるだろう。

では、グルメ。
”アチェラ”は、我々にはハラミの名称で通っている牛の横隔膜のこと。
このアチェラを、さっと焼いて食べる。
もともとは、干し肉にする部位だったが、近年ではステーキにして食べるようになったという。
”ソバ・デ・リマ”は、鳥のささみとたっぷりの野菜で作り、ワインの酸味が効いてさっぱりとしたコンソメ仕立てのスープ。
”パボ・エン・レジェロ・ネグロ”は、七面鳥を焼いた唐辛子の黒いペーストを使って煮込んだ、その名の通りの黒い煮込み料理。
味は、スパイシーなイカ墨カレーとか!?
なお、焼いた唐辛子で作る黒いペーストは、マヤの保存食として今に伝わるもの。

レジャーもさまざま。
アドベンチャーパーク「エクスプロール」では、ジップラインという空中散歩を楽しめる。
45メートルの高さに張られた全長2キロメートルのロープを、時速20キロメートルで滑りぬく。
途中7つの中継ポイントがあり、係員の補助のもと、安全かつ爽快に空中散歩ができるらしい。
あとは、メキシコ特有の地質を利用した、鍾乳洞を廻る洞窟ラフティングがある。
神秘的なライトアップされた鍾乳石を眺めながら、地中湖を舟でまわるのだ。
地底湖マニアには、興味津々のアトラクション。
「アクアワールド」は、シュノーケリングポイントにある水中美術館を楽しむ。
2009年にできた水中美術館には、水深3~8メートルに、環境に配慮されたコンクリートで作られた数百点の作品が展示されている。
既にサンゴや海草などが作品を覆い始めていて、将来的には作品は見えなくなるという。
環境保全の一環で、味気ない基底物を置く代わりに、観光もかねてのアート作品にし、一石二鳥を狙ったということだ。

ビーチリゾートのカンクンに相応しい色鮮やかな水着を揃えたブランドの「シンガラ」は、セクシーさを強調したデザインを展開している。
「ククルカン・プラザ」にある「シバル」も、ビーチファッション専門店。
最近の一押しは、フィット感抜群のソックスサンダル。
もちろん定番の編み上げサンダルも取り揃えている。
「セジラム」は、ホセ・ミジャーレスが指だけで直接描く絵皿の店。
細かい部分もしっかりと描き上げ、その技術は卓越している。
「アーカカオ」は、チョコレート専門店。
カカオオイルを使った石鹸やシャンプーなど、食べるだけでは留まらないカカオ製品も扱う。
マヤ文明では、チョコレートは王族だけに許された飲み物だった。
「ジーエム・スパ」は、樹液配合のコーパルクリームで行う全身マッサージができる。
顔には、アメジストで作ったマスクを被せ、水晶が持つといわれる老廃物の排出を促す施術を行う。
また、レボソという伝統の布を使ったマッサージもある。
マヤでは王に触ることは許されなかったので、布を巻きつけてマッサージやトレッチをさせるのだ。

カンクンとは、「蛇の巣」を意味する。
その名の通りに蛇が多い土地だったのか分からないが、蛇が苦手な自分にはやぶさかでない名だ。
あの美しい砂浜と海へ惹きつけられる気持ちに水をさす。
1970年代からメキシコ政府の肝いりで始まったリゾート開発により、忘れ去られていた土地が蘇ったというのも引っかかる。
ラスベガスの同族のようなかんじだ。
せっかくの素晴しい自然が、目に見えない人の欲望で汚染されたような、そんな残念感が付きまとうのだ。
土地の名というものは、侮れない何かをあらわしていると思うから。