rock_et_nothing

アートやねこ、本に映画に星と花たち、気の赴くままに日々書き連ねていきます。

時には密な空間を楽しみたい

2015-03-17 23:07:23 | 旅先から
先日、古い友人たちに会うために東京へ行った。
滅多に行かないものだから、はじめ予定になかった絵の展覧会を付け足して、やっぱりちょっと忙しくなる。

渋谷の松濤美術館にて「ロベール・クートラス展」を見るために、京王井の頭線「神泉」から徒歩で向かうあいだ、田舎ではありえない狭い路地を抜け広い通りに出ると、洒落た建物の一階はさまざまな店が入っていて歩くだけでもわくわくする。
松濤美術館にしても25年ぶりくらいで行ったものだから、建物の外観と内部もどこか懐かしさを感じた。
肝心のロベール・クートラスは、とても個人的な宝箱の中を見たような、ひそかな発見と秘密を盗み見た後ろめたさを感じずにはいられない。
念入りに作り込まれたカードの一枚一枚が、悲喜こもごも情念の塊を薄く丁寧に伸ばし形成したようだ。
だから、展覧会を見た後は、とろんとした黒っぽい塊と胸のうちに抱えたようになり、友人とその話題に触れることはなかった。

美術館を出た後、また京王井の頭線に乗って吉祥寺へ向かう。
4年位前に行った吉祥寺とはだいぶ様変わりし、つまり今再開発ブームによって増殖している駅の風景といったものになっていた。
駅を出て井の頭公園に行く道は、そう変わっていなかったけれど、以前のちょっと野暮ったいごちゃごちゃ込み入った雰囲気がけっこう面白くて好きだったから、自分の中での吉祥寺の存在感がやや薄くなる残念なことに。
それでも、駅近辺を歩いていると、まだまだ雑多な雰囲気は残っていて、年に一週間ほど暮らして、昼間は散歩、夜はふらふらと明かりを求めて渡り歩きたい。

こうも疎な空間に暮らしていると、その反動でやたらと密な空間に飛び込みたくなるものだ。
歩いて気の向くまま足の向くままふらりふらり、こってり派手で濃い物に触れたい。
ぼーっと、流れゆく密なものを眺めていたい。
そうやって、自分の心に対流を起こし感性を刺激したくなる。
ただし、ガラパゴス在住者には劇薬過ぎるので、摂取はほどほどにということだ。

今の気分は、大好きなボナールの展覧会がオルセー美術館で開かれている、それに弾丸ツアーよろしく観に行きたい。
とりあえずは、ネットでシンプルツアーを検索し、脳内トリップしてみよう。
結局欲張りだから、5泊3日じゃ収まりきらないだろうけれども。