
20世紀初頭、ウィーンで活動した画家。
当時盛んであったウィーン分離派の巨匠グスタフ・クリムトに師事していたこともある。
エロティックな作品を多く描いた両者だが、その質は対極的だ。
クリムトは、豊饒で蠱惑的なエロティシズムだが、シーレは、未熟さを残した痛々しく刹那的なエロティシズムなのだ。
おそらくは、第一次世界大戦前夜の不穏な時代が空気となって、シーレの絵にささくれ立った死の影を落としたのかもしれない。
まさに彼の絵には、有刺鉄線が絡みついているのである。
少女も青年も、己が性の衝動に苛立ち、一瞬の生にしか実感を見出し得なく、ほの暗い冷たい死に怯え諦めているようだ。
だから、彼の絵をずっと観ていると、その絵に絡まっている有刺鉄線によって心が傷つき痛みを覚える。
そして、なお皮肉なことに、最晩年の絵には、生きる喜びに輝く絵が生み出されているのだ。
生の終わりの、束の間のきらめきにも似た絵だ。
彼自身の、家族によってもたらされた恩寵。
しかし、残酷にも、その当時世界的に猛威を振るったスペイン風邪の死の大鎌に、矢継ぎ早に断ち切られることで終わりを迎えた。
でも、彼は、彼の物語を最後まで貫徹できたのだと思う。
彼の前にも後にも、彼はただゆいいつの画家たりえているのだから。
