大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・123『アキバ上空青龍戦・1』

2022-02-06 14:06:27 | ライトノベルセレクト

やく物語・123

『アキバ上空青龍戦・1』 

 

 

 ヒダヒダのあるオムレツみたいな胴体の両側に13対のヒレがあって、それをウネウネそよがせて推進力にしているアノマロカリス。

 そこだけ見ていると、大人数で漕いでいるボートみたいでのんびりして、尻尾は海老に似ていて美味しそうだったりする。

 わたしは、エビ天とかエビフライの尻尾はガリガリ噛んで『エビセンみたい(^▽^)』と喜んでる子なので、どうってことないんだけど、頭が気持ち悪い。

 突き出た目玉は真っ黒で海老と同じで可愛かったりするんだけど、突き出た触覚みたいな腕みたいなのがカマキリの鎌みたいで、その鎌をシャキシャキ動かして得物を獲る姿は、ほとんど悪魔。

 ソヨソヨ~

 大きさの割には鯉のぼりが風にそよぐような音をさせて頭上を通過する。

「あ、あれも目玉?」

 アキバ子が呆然とする。

「あれは、あいつの口よ……」

 御息所は、ぬいぐるみのアノマロカリスで慣れてるんだけど、アキバ子は不思議みたい。

 アノマロカリスの口はまん丸で、一見目玉のよう。

 近づいてみると、瞳の瞳孔のとこが口で、カメラのシャッターみたく大きくなったり萎んだり。

 こいつがクワーって開いたのが見えたら、もう食べられる寸前!

「ね、だから、口が……開いて、こっち来るー!」

 ヤバイ!

 そう思ったら、わたしを載せたハートがクルンと翻って身を躱す。

「これ、慣れるとスケボーみたいね!」

 ちょっとだけ嬉しい。スケボーなんて乗ったことないけどね。

 ソヨソヨ~

 クルン

 ソヨソヨ~

 クルン

 なんだか楽しくなってきたかも。

「楽しんでいてはダメです。あいつは青龍の幼体なんですから、放っておくと変態して龍になります!」

「そうだね、ごめんごめん(^_^;)」

 わたしは、おもむろにコルトガバメントを取り出して、アノマロカリスに狙いをつける。

 ドギューン ドギューン ドギューン

 立て続けに三発撃ったけど、ヒラリと身を躱されてしまう。

「む、むつかしいわね……」

 ドギューン ドギューン ドギューン

 さらに三発撃ったけど当らない。

「茨木童子は一発で仕留められたのに!」

 ちょっと焦ってきた。

「あ、あいつのお腹が!」

 ウニュン ウニュン

 御息所が指差したお腹がアコーディオンの蛇腹みたいにうねり出した。

 あそこは、ポケットになっていて、うちの縫いぐるみだと妹ニクのフィギュアが入っているところだ。

 しかし、こいつの本性は青龍、そんな可愛げなものが入っているはずはない。

 シュボ シュボ シュボボボ

「あ、鬼だ!」

 お腹のヒダヒダからは、小さな鬼がいっぱい出てきた。

「ちょっとヤバイですねぇ……」

 アキバ子が身を縮める。

「あんなもの!」

 わたしは、ハートの上にスックと立って、両手でコルトガバメントを構えて、波動砲を撃つ時の古代進のように鬼たちが占める空間の真ん中を狙った。

「エネルーギー充填120パーセント、対ショック対閃光防御!」

 アキバ子が調子を合わせてくれる。

「コルトガバメント発射!」

「テーー!」

 ズゴーーーン!

 すごい閃光が解き放たれて、鬼たちが広がろうとしていた空間を白いスパークで満たした。

 わずかに残った鬼たちが拡散して、多方面から攻撃を仕掛けてくる。

 ドギューン ドギューン ドギューン ドギューン ドギューン ドギューン

 動きが速いにも関わらず、わたしは二秒で六匹の鬼を打ち倒す。

「すごい、魔法少女みたいです!」

 シャラーン……☆

 可愛いエフェクトがしたかと思うと、わたしは魔法少女になっている。

「すごい、ほんとうに魔法少女になりましたよ!」

 わたしも、その気になってきた。

「月に代わって押し入れよ!」

「ちょっと違うような(^_^;)」

 ドギューン ドギューン ドギューン ドギューン ドギューン ドギューン

 残った鬼たちも大半やっつけて、それでも残った鬼は、恐れをなして逃げて行った。

「本体は残ってる……」

 御息所が指差した空には、一回り大きくなったアノマロカリスが悠然と飛んでいる。

「わたしは思います」

「なにを?」

「アノマロカリスと思って対応していては、やっつけられないのではないでしょうか」

「そうか、やつの本性である青龍として攻撃しないと……ってことね?」

 御息所の目が座ってきた。

「やつの夢の中に潜り込もう……」

 御息所が印を結ぶと、急速にあたりが暗くなってきた……。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

明神男坂のぼりたい・64〔今日はうちで、お勉強会〕

2022-02-06 09:04:14 | 小説6

64〔今日はうちで、お勉強会〕 

       

 


 テストも、あと二日。

 で、今日は、うちの家でお勉強会することになった。

 

 美枝と別れて家に帰った昨日のこと。

 

 お風呂入って三階の自分の部屋に戻ったら、さつきが人形焼き食べている。

 ちなみに、だんご屋に届けてある住所は御旅所の所番地なので、さつきは、相変わらずあたしの部屋に住んでいる。

「あ、なんで人形焼き?」

「勉強だよ、東京名物って言や、人形焼きと東京ばな奈。だんご屋としては勉強しとかないとな……そうだ、明日香も勉強会やれ!」

「え?」

「賑やかなのはいいことだ、今日は、美枝とだけだっただろ。ゆかりも混ぜてやれよ」

 なんか、こじつけの三段論法なんだけど、ゆかりを交えて集まるというのは必要なのかもしれない。

 美枝とはホッコリできたけど、ゆかりと美枝は微妙になりかけてるしね。

「そうそう、東京名物と言えば、人形焼きと東京ばな奈と明神だんごだからな。おまえらも三人でワンセットだ」

 ちょっと強引だけど、言ってることは正しい。

 

「バカな明日香のために、頼むよ!」

 電話したら、二人とも、あっさりOK。

 安心して、さつきの人形焼きに手を伸ばした。

「あれ?」

 まるで手応えが無くって、空気を掴んでしまった。

「神さまの食べ物だぞ。人間が掴めるわけがないだろ」

「エアー人形焼き?」

「怒るな、空気を掴むというのは大事なことだという教えでもある」

「真顔で人をおちょくるなあヽ(`Д´)ノ!」

 

「うわー、いい部屋じゃんか!?」

 ゆかりが声をあげた。

「こんなオモチャ箱みたいな部屋好き!」

 美枝も賛同。

 今日は一階のお父さんの部屋を借りた。

 三階の部屋は両親の寝室と襖一枚で隣り合わせ。当然襖締めなくちゃならないんだけど、この季節、三階は冷房が必要。それに、なにより部屋の片づけもしなくちゃならない。で、お父さんに頼んだら二つ返事でOK。お父さんは久々に渋谷まで出て映画でも観るらしい。

 とりあえず、二人が持ってきたお土産の今川焼きを食べた。

「ここ、お父さんの部屋?」
「うん。それぞれの部屋で住み分けてんの」
「ふうん……まあ、勉強には適してるね。窓ないし、玄関ホール挟んでるから外の音も聞こえてこないし」
「ここは、元ガレージ。あたしが赤ちゃんのころにジジババ引き取ること考えて二世帯住宅にしたんだ。お父さんは、ずっと二階のリビングで仕事してたけど、ジジババ亡くなってからは、お父さんの仕事場」

 今日は、真ん中の座卓の上のもの、みんな部屋の隅に片してくれてる。

「わあ、いいもの置いたあるじゃんか!」

 ゆかりが置き床に置いてある『こち亀』の亀有公園前派出所のプラモに気がついた。

「これ、お父さんが作ったの?」
「あ、あたし、子どもの頃『こち亀』好きだったから、だけど、中学いくころには興味なくなったから、未完成のままになってんの」
「うわ、入り口動く。パトチャリまで置いてある。きれいに色塗ってるねえ……」
「あ、これヘンロンのラジコン戦車! お兄ちゃんも一個もってる」

 あたしは、当たり前すぎて気がつかなかった。おとうさんのガラクタ収集癖は昔から、隣の部屋はお父さんの物置。その部屋を通らないと二階へは上がれないから、二人は、まだ見ていない。それを言うと美枝が目を輝かせて「見せて!」と言う。

「うわー、まるでハウルの部屋みたい!」
「ハウル?」
「ジブリの『ハウルの動く城』じゃんか。あのハウルの部屋みたい」

 あたしもお母さんも、いつも、この部屋はスルーしてるから、改めて見るとゴミの中にもいろいろあるのが分かる。

 百ほどあるプラモの中には、実物大の標本の人間の首。それもスケルトン。これが何でか南北戦争の南軍の帽子被ってる。
 美枝が発見した棚の上には、1/16の戦車がずらり、あと航空母艦やら戦艦大和やらニッサンの自動車、飛行機、その他エトセトラ。で、周りの本箱には1000冊ほどの本がズラリ。あたしが小学校のとき借りて読んでた『ブラックジャック』と『サザエさん』は全巻並んでる。

「すごい、これ、リアル鉄砲!?」
「うん、本物らしいよ。無可動実銃いうらしいんだけど、キショクワルイから、隅のほうに置いてあるの……それは宮本武蔵の刀のレプリカ……その黒い箱はヨロイが入ってる。あ、足許気ぃつけてね。工具とかホッタラカシだから怪我するよ」

「「スゴイスゴイ!」」

 二人で、同じ言葉を連発する。

「まあ、ちょっとは勉強しよっか(^_^;)」

 きりがないんで、切り上げを宣告。元の部屋に戻ると、また発見された。

「いやあ、なに、このリアルに可愛らしいのは?」

 それは仏壇の横で小さく体育座りしていて気がつかなかった。

「あたし、知ってる。1/6のコレクタードール。これ、ボディがシームレスで、33カ所も関節あって人間みたいにポーズとれるんだよ」

 物知りのゆかりが、目を輝かせる。

 その子は制服らしき物を着て、知的で、心なし寂しげだけど。見ようによっては和ませてくれる……だけど、あたしは恥ずかしかった。仮にも妻子持ちのいい年したオッサンがこんなもんを!?

「アハハ、ガールズ&パンツアーだ!」

 美枝が玄関ホールで声をあげた。

「この段ボール、1/6の戦車模型のキットだよ。お父さん、これに、その子乗せるつもりなんじゃない?」

 ああ、もう顔から火が出そう……。

「いや、うちのお父さんは本書きで、その……ラノベとか書いてるから、その資料いうか、雰囲気作りに……」

「明日香……お父さんの作品て読んだことあるの?」

「え?」


 美枝の指摘は、スナイパーの狙撃にあった間抜けな女性情報諜報員のようだった。

 あたしは、生まれてこの方、お父さんの本を読んだことがない。極たまに、作品を書くために、あたしら世代の生活のことなんか聞いてくる。分かってる範囲で答えるけど、たいがい「分からないよ」「そんなの人によってちがう」とか顔も見ずに邪魔くさそうに返事するだけ。

「ここは、ほんとにハウルの部屋だよ……」
「隣の部屋は、もっと……」

 もう、たいがい死んでるのに、まだ撃ってこられるのはまいった。

「よかったら、これ読んでやってくれる。お父さんの本」

 あたしは、クローゼットから、お父さんの本を取り出した。

「うわー、こんなにあるん!」
「あ、印税代わりに出版社から送ってきた本。お父さん印税とれるほど売れてないし。まあオッサンの生き甲斐。あんたたちみたいな現役の高校生に読んでもらったら、お父さんも喜ぶ」

「ありがとう」と、ゆかり。

「だけど、まずは娘のあんたが読んだげなくっちゃ……」美枝が止めを刺す。

 で、午前中は、お父さんの本の読書会になった。

「お父さんて、三つ下の妹さんがいたんだね……」

 短編集を読んでいたゆかりが顔を上げる。

「この子三カ月で堕ろされたんだ……」

 美枝がシンミリする。

 初耳だった……いや、言ってたのかもしれないけど、あたしはいいかげんに聞いてただけかもしれない。

 痛かったけど、別方向に有意義な勉強会だった……。

 

※ 主な登場人物

 鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
 東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
 香里奈          部活の仲間
 お父さん
 お母さん         今日子
 関根先輩         中学の先輩
 美保先輩         田辺美保
 馬場先輩         イケメンの美術部
 佐渡くん         不登校ぎみの同級生
 巫女さん
 だんご屋のおばちゃん
 さつき          将門の娘 滝夜叉姫
 明菜           中学時代の友だち 千代田高校
 美枝           二年生からのクラスメート
 ゆかり          二年生からのクラスメート

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする