大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 59『謀るつもりが謀られて』

2022-02-16 15:31:40 | ノベル2

ら 信長転生記

59『謀るつもりが謀られて』信長  

 

 

 関門が窺える街角まで出ると、坊主たちが足止めされているのが目に入った。

 よく見ると、番小屋の奥に陳麗が座らされて、坊主たちの人相改めをさせられている。

 

「やはりバレているな」

「大丈夫じゃなかったの? 軍の恥だから追手とかは来ないって!」

「兵隊たちの死体が見つかったんだろ、陳麗は俺たちに届け物をした後に掴まったんだ。でも、明け方までは口を割っていない。道館が焼かれたのは明け方だからな」

「焼け跡を探って死体が無いから、急きょ非常線を張ったというところ?」

「そんなところだ」

「どうする?」

「陳麗は女ものの衣装を持って行ったことは喋っていない」

「そうなの?」

「ああ、足止めされているのは坊主ばかりだ。よし、手ごろな隊商を探すぞ」

「隊商?」

「付いてこい」

 出征を前にして人の出入りは繁くなってきている。ちょっと大人数の隊商に紛れ込む。

 豊盃あたりの裕福そうだが、どこか緩んだ隊商なので、あっさりと列に入ることができた。

 

「お前たち、手ぬるいぞ、きちんと検めろ」

 ちょうど交代の役人たちがやってきて、前任をなじるので、ギクッとした。

「ヤバくない?」

「まあ、見てろ。角を曲がった向こうまで溜まり始めてる。そんなにキチンとは検められないぞ」

「そうなの?」

 視界の端に捉えていると、関門の兵たちは、積み荷を改め、男たちは全員笠まで取らせて人相検めをし始めたが、角の向こうから『早くしてくれ!』『いつまでやってるんだ!』と声が上がり始め、五分もすると、人相書きを見ながら、ザっと見るだけになった。むろん、女を検めるようなことはしない。

「よし、通れ」

 さらに五分後、あっさりと関門を出ると、三丁ばかり行った鎮守の森めいたところで列から離れる。

「どうしたの、あんたたち?」

 荷車を引いていた女が声を掛けてきた。

「え?」

「あ、ちょっと妹がもよおしてきて」

「ああ、お花摘み……」

「アハハハ(^_^;)」

 笑ってごまかそうとすると、女が、なにやら目配せ。

 プオ~ プオ~

 列の前後から聞き覚えのある喇叭が鳴り響いた!

 ザザザザザザザ

 荷運びの者たちが、荷の中に潜ませていた武器を手に手に、俺たちを取り巻いた。

 パッカポッコ パッカポッコ……

 列の中ほどに居た人足頭が悠然と馬を進めてきて、人足たちは荷車や馬車を移動させて、俺たちの周囲を取り巻き始めた。

「フフフ、ひっかかったな」

 笑いながら外套をとると、その下は、これも見覚えのある甲冑を着こんでいる。

「おまえは!?」

「知っているところを見ると、酉盃に入ってきた時、どこかで見ていたな?」

 そいつは、きのう大仰な隊列を組んで入城してきた、輜重部隊司令の曹素だ。

「そう、『輜重輸卒が兵隊ならば、チョウチョ・トンボも鳥のうち』と常々こき下ろされている輜重部隊司令の曹素様だ。夕べは、よくも俺さまの兵たちを痛めつけてくれたな」

「あれは、貴様の兵だったのか?」

 ちょっと意外だ。野卑な奴らだったが、一応は武術の心得がある奴ばかりだった。

「そうさ、輸送部隊の中から引き抜いた、ちょいマシな兵たちだ。じっくり育て上げ、ゆくゆくは戦闘部隊になった時には俺さまの近衛になるはずだった奴らだ」

「フン、ずいぶん下劣な近衛もあったものね」

「下劣を侮るな。下劣は力だ。むろん、今すぐに一騎当千の力を振るえるような奴らじゃないがな、こうやって、隊商に化けさせても見破られることが無い。だから、お前らは、まんまと引っかかったんだ。あの女……なんと言ったかな?」

「陳麗です」

「ああ、その陳麗はバカだから、お前たちを坊主だと思い込んでいたがな、明花と静花の二人は、お前たちを女だと見抜いていたぞ。さすがは、指南街一の学者の娘だ。お前たちを総大将曹茶姫直属の娘子憲兵と見抜いておったぞ」

「きさま、あの二人を!?」

「安心しろ、あいつらも、腕一本折られるところまでは口を割らなかったからな。落ちぶれ学者の娘としては、よく義理を通したぞ」

 バカで残忍なやつだが、こいつ、根本的なところで勘違いしているぞ。

「グヌヌヌ……」

 いかん、市のやつが切れ掛けだ……

 

 

☆ 主な登場人物

  •  織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生
  •  熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  •  織田 市        信長の妹
  •  平手 美姫       信長のクラス担任
  •  武田 信玄       同級生
  •  上杉 謙信       同級生
  •  古田 織部       茶華道部の眼鏡っこ
  •  宮本 武蔵       孤高の剣聖
  •  二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  •  今川 義元       学院生徒会長 
  •  坂本 乙女       学園生徒会長 
  •    曹  茶姫       曹軍女将軍
  •  曹  素        曹茶姫の兄

 

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明神男坂のぼりたい・74〔三者懇談〕

2022-02-16 06:18:47 | 小説6

74〔三者懇談〕 

       


「思慮深そうですが、ちょっとオッチョコチョイですなあ」

 ガンダムの第一声がこれだった。

 お母さんはニコニコ聞いてる。

 で、その横で、お父さんが友好的なポーカーフェイス。

 あたしは、ただただ恥ずかしくてドキドキ。

 三者懇談に両親が揃ってくるとこなんてありえない。これが恥ずかしい理由。

 ガンダムは元生指部長だった。他の先生よりも生徒を見る目が確かで厳しい。これがドキドキの理由。

 うちの親は二人とも元教師だから、懇談の手のうちをよく知ってる。

 お父さんは、いま学園ものを書いてるんで、その勉強のためと言って付いてきた。ようは暇なだけなんだけど、娘のあたしは迷惑なだけ。あたしの前が安室君(学級委員長)、後が秀才の新島君。当たり前だけど付いてきてるのはお母さん。控えめだけど、両親が揃って来てるのに興味津々いう顔をしていた。


「どんなところで、そうお感じになるんですか?」


 優しく、でも鋭く切り込んでくる。普通の親だったら、黙ってニコニコ聞き流すとこだよ。こういう抽象的な評価に、どれだけ具体的な裏付けを持ってるかで、教師の力が分かるらしい。

「卒業式の時、式場に入りたがらん教師が何人か居たんですが、そういう教師に世間話を装っていじめとったようです」

 アハハハハ  ギロ

 お父さんが、大きな声で笑うし、お母さんは睨んでくるし(;'∀')。

「それから、一年の三学期にクラスの子が交通事故で亡くなったんですが、ご家庭の事情で家族葬にされました。それを明日香は調べ上げて、火葬場の前でずっと待っていて、寒さのためにひっくりかえって、火葬場の事務所でお世話になりました」
「な、なんで、先生、知ってんの!?」
「オレも、火葬場まで行ってたんだ。敷地の反対側だったんで明日香の事は気が付かなかったんだけどな。それに、明日香には言わないほうがいいと思って、今まで知らんふりしてた」
「さすが先生ですね。あのことは、この子の頼みで内緒にしてたんですけど」
「明日香の優れたところです。多少無茶なとこがありますが、大事にしてやりたいと思っています。そういうところを見込んで転校生の世話なんか頼んだんですが、転校生の子もしっかりしていて、まあ、結果的には、いい当て馬になったと思ってます」

 あたしのオッチョコチョイは他にもあるけど、先生は黙ってくれていた。観察力の鋭さと、その鋭さに、ちょっと温もりを感じた。

「しかし、成績は別もんですなあ……国・数・英が、かなり低いです。この期末と二学期にがんばらないと、三年で特別推薦で進学しようと思ったら厳しいですね」
「明日香、がんばらなきゃあ」
「分かってるって(*≧0≦*)」
「ただ、国語の答案なんか見てますと、なんちゅうか、分かってるくせに、わざと違う答え書いて成績落としているようなところがあります」
「それについては心配していません。明日香は、自分の感性で喋ったり、文章書いたりする子です。要は自己主張する場所を間違うてるだけですので、今度の期末は失敗しないと、親バカですが思っています」
「そうですなあ。おたまじゃくしは、いつかカエルになるもんですからね」

 え、あたしは成ってもカエルかよ?

「あとは、本人の進路希望ですなあ。明日香、おまえぐらいだぞ、進学希望に漠然と文系進学としか書いてないのは。なんか具体的に行きたい学部とかないのか?」
「どうなの、明日香?」

 大人三人の視線がいっぺんに集まった。もうあたしも二年、オチャラケた執行猶予言うわけにはいかない……。

「演劇科のある大学にいきたいです!」

「「「え?」」」

 大人三人がびっくりした。

 そりゃそうだろ……。

 口走った本人が、一番びっくりしてんだから(^_^;)。

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