大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・122『裏アキバからアキバの空へ』

2022-02-01 14:04:08 | ライトノベルセレクト

やく物語・122

『裏アキバからアキバの空へ』 

 

 

 しゅんかん夢をみた。

 

 ピンポン玉くらいのハートが何千個も集まって、その上に乗ったわたしは、ホワホワとアキバの上空に浮かんでいく。

 眼下にアキバの街が広がっている。

 最初は、日曜日とあって、アキバの街は人で埋め尽くされて、アニソンやらお店のテーマ音楽、メイドさんたちがお客さんを呼び込む声とかが潮騒のように聞こえる。

「あれえ、やっぱり普通にアキバだよ」

 ポケットから頭を出した御息所が「ちがう」と言う。

「どうちがうの?」

「ようく見てみ」

 言われて目を凝らすと、いわゆるアキバエリアの外周は古代ローマのような石壁に囲まれ、武装したメイドさんたちが手に手に武器を持って石壁の上の配置についていて、東西南北にはティアラを煌めかせたメイド将軍の姿も伺える。

 視線をアキバの街に戻すと、もう日曜のアキバの賑わいは掻き消えてしまって、所どころに予備軍的に控えているメイド部隊が見える。部隊は、兵士の他に白魔導士やら錬金術師の部隊も見えて、なんだか、ゲームの序盤のムービーみたい。

「すごい夢ね」

「いいえ、夢ではありません」

 胸元から声がしたかと思うと、マフラーをかき分けるようにしてアキバ子が現れた。

「あ、そこは特等席、わたしでも遠慮してるのだぞ」

 御息所が苦情を言う。

「慣れないもので、より確実なところから出させてもらいました(^_^;)」

「で、無遠慮なアキバ子が、なんの用だ!?」

「ここからが、御息所さんの出番なんです!」

「「ここから?」」

 御息所と声が揃ってしまう。

「はい、御息所さんは深く夢の中に潜り込む術に長けておられます。自分の夢にも人の夢にも」

「それって、わたしの古傷をえぐってない?」

「その眼で下界のアキバをよく見てください。わたしたちには見えない、アキバに隠れた業魔の姿が見えてくるはずです」

「そうなの?」

「はい、やくもさま」

「しかし、漫然と見るには、広すぎるわよ、アキバは」

「はい、そこで役に立つのは、やはり御息所さんの学識なのです」

「そ、そりゃ、東宮妃にまでなったわたしだから……でも、そんなの千年も昔の話で……」

「御息所さん、ここは神田の東にあたります」

「そうね、それが?」

「最初に退治された業魔は神田の南南東、神田川の主でした。南南東は巳の方角」

「あ、それで蛇の姿!?」

「はい、やくもさま」

「では、東だから……寅……虎?」

「いいえ、アキバは南北の広がりもありますから、丑、虎、卯をも包み込んで超えるものです」

「あ、青龍か!?」

「え、セイリュウ?」

「四神よ。東西南北の四方の守り神。北の玄武、南の朱雀、西の白虎……東の青龍……青龍か!」

「青龍、ブルードラゴン!?」

「青龍相手に戦う力は無いわよ」

「いいえ、まだ将門さんの体から出たばかりの業魔。最終形態の龍にはなっていないと思います。龍を意識していては見落としてしまいます」

 そうか、業魔の正体を見破るのに御息所の力が発揮されるんだ!

「青龍……青龍……」

 その時、ちょっと風が吹いて、わたしたちが乗ったハートが南に向いて、間近に東京湾が広がって見えた。

「そうだ、そうよ、江戸前の海の青龍、青龍蝦……シャコ!」

 

 ズワン

 

 アキバの空に鈍い音が響いたかと思うと、巨大なシャコが現れた。

「「「うわあ……」」」

 ちょっとアノマロカリスに似ていると思った。

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子

 

 

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明神男坂のぼりたい・59〔ラブホ初体験!〕

2022-02-01 06:47:32 | 小説6

59〔ラブホ初体験!〕 

        

 


 連休を持て余していた中尾美枝から電話。

『ねえ、ラブホの探検に行こうよ!』

 なんでも、ゆかりとの約束が流れてヒマなので、うちにお鉢が回ってきたらしい。

 正直びっくり……なんだけど。

 二つのミエで「NO」を言い損ねた。

 ベランダから見える青空のようにアッケラカンとした『美枝』の言い回しと、部屋のどこかで聞いている居候への『見栄』で。

『遠足じゃ外回りしか分からなかったじゃん。やっぱ、こういうのは中身だしね。ググったら、いろいろアミューズメントパークかみたいなのがあって、面白そうでさ。本来の目的以外でも女子会で利用するのもあるんだって。ね、どうよ?』

「オンナ同士でも、変なことしない?」

 そう確認すると「ガハハ」と愉快そうで健康的な笑い声が返ってきた。

『アハハ、ないない。せっかくの連休だし、ちょっと変わったこともしてみたいってノリ。じゃ、一時間後御茶ノ水駅集合ね!』

 プツン

 電話が切れると、油絵の明日香と目が合ってしまう。

 一瞬さつきかと思ったけど、あいつの気配ではない。連休だから、さつきも出かけたかな?

 

 で、一時間ニ十分後、山手線某駅で降りて、東京でも指折りのラブホ街に二人でおもむいた。

 

「なんかネオン点いてないと、普通のビジネスホテルみたいだね」
「こんな時間やだから、入れるんだね。昼過ぎたら、もう空室ないだろねえ」
「あ、フロントがある……」
「あれは、法律対策上。部屋はこっち」

 やっぱ、美枝の方が詳しい。あたしは、こんなとこ来るのん初めてだし。

 パネルにある部屋は、看板通り均一料金だった。で、半分以上が使用中なのには驚いた。

「ウワー、ショッキングピンク!」

 部屋に入るなり、部屋のコンセプトがピンクなのにタマゲタ。

「やっぱり、趣味のいい部屋は使用中やだね。ま、基本的なシステムはいっしょだろから」

 ウォーターサーバーもピンク色だったから、ピーチのジュースでも出てくるのかと思ったら、当たり前の水だった。

「明日香、なにショボイ水飲んでんの。こっち、飲み物は一杯あるよ」

 コーヒー・お茶・紅茶・生姜湯・ココア・コンソメスープetc……。

「へえ、生姜湯だ……」

 石神井のお祖母ちゃんを思い出す。

「なにしみじみしてんのよ。ご休憩だから、時間との勝負だよ。ホレ!」

 美枝は、そう言うとクローゼットの上からお風呂のセットをとりだして、放ってよこした。

「せっかくだから、いっしょに入ろ」

 美枝のノリで、そのままバスに。

「うわあ、同じだ」

「え、なにと?」

 壁の色なんかは違うんだけど、お風呂自体は、去年お祖母ちゃんのお通夜で入った葬儀会館といっしょなので驚いた。

「ふうん、葬儀会館もラブホもアミューズメントパークのノリなんだねえ……」

 二人で、ゆったり入れて、お風呂の中に段差がある。ガラス張りかと思ってたら、拍子抜けするほど普通のお風呂。

「これは、フロントといっしょで、警察うるさいし、女の子には、この方が喜ばれる」
「ふーん……キャ!」

 油断してると、いきなり水鉄砲。

「アハハ、びっくりしただろ。こういう遊び心が嬉しいところさ」
「もう、とりあえずシャワーして、お風呂入ろ」

 美枝のノリで、シャワーして、バスに浸かる。やっぱり女の子同士でも、変な感じ。ちょっとドキドキ。

「じゃあ、洗いっこしょうか」

 前も隠さずに美枝が上がる。ボディーシャンプーやらリンスやら、わりといいのが二種類ずつ置いてあった。二人で違うのを使って感触を確かめる。違いはよく分からないけど、うちで使うてるのよりはヨサゲだった。

「ねえ、体の比べあいっこしよ」
「比べあい?」
「修学旅行とかでも、お互いの体しみじみ観ることってないじゃん。めったにないことだし、やってみよ!」

「え、ああ……え、鏡!?」

 美枝が壁のボタンを押すと、それまで壁一面のガラスだったのが鏡になった!

 なるほど、同じ歳の同じくらいの体格でも、裸になると微妙に違う。肩から胸にかけてのラインは負けてる。

「せやけど、乳は明日香の方がかわいいなあ。あんまり大きくないけど、カタチがいい。ほら片手で程よく収まる」

 そっと、美枝の手で両方の胸を覆われた。鏡に映すと、丸出しよりも色っぽいし、自分が可愛く見える。

 それからは……中略……自分でも見たことのないホクロを見られてしまったりとか、後で考えると恥ずかしいんだけど、平気でやれたのは、美枝のキャラだと思う。

「明日香、ベッドにおいでよ」

 髪の毛乾かし終わると、美枝がベッドに誘う。

「え、あんた裸!?」

 掛け布団めくると、美枝はスッポンポン。

「明日香も……」

 あっという間に、バスローブ脱がされてしまう。

「ちょっとだけ練習……」

 言い終わらないうちに美枝が後ろから抱きついてきた。胸の先触られて、体に電気が走った。

「もう、びっくりするじゃんか!」
「今度は、明日香が」

 そう言うて、美枝は背中を向けた……。

 やっぱ胸は触れなくて、背骨に沿って指でなぞってやる。

「うひゃひゃひゃ~~~(#'∀'#)」

「ちょ、なんて声出すのよ(^_^;)」

「明日香、上手いよ!」

「ちょ、なにがよ!?」

「女同士でも感じるんだねえ」

「もうヤンペ」

「こういう感覚、この感覚を愛情だと誤解せんことなんだよね」

「ったりまえでしょ!」

「だよね、Hの後にIがあるもんやけど、やっぱり愛が先にあらへんとねえ」

 そういう女子高生らしい恋愛論の結論に達して、あたしらはご休憩時間ギリギリまで居て、ホテルを出た。

 

 実は、美枝から、ある話を聞いたんだけど、女の約束で言えません。

 ただ、外に出たとき、五月の風が、とても爽やかやったことは確かでした。

 

 そういう女子高生の、ちょっとした冒険で締めくくろうと思ったら……帰り道、明神さまの大鳥居まで来て発見してしまった。

 なんと、さつきが実体化して、だんご屋でアルバイトをやっているのを。

 

※ 主な登場人物

  •  鈴木 明日香       明神男坂下に住む高校一年生
  •  東風 爽子        明日香の学校の先生 国語 演劇部顧問
  •  香里奈          部活の仲間
  •  お父さん
  •  お母さん         今日子
  •  伯母さん
  •  巫女さん
  •  だんご屋のおばちゃん
  •  関根先輩         中学の先輩
  •  美保先輩         田辺美保
  •  馬場先輩         イケメンの美術部
  •  佐渡くん         不登校ぎみの同級生
  •  将門さま         神田明神
  •  さつき          将門さまの娘 別名滝夜叉姫

 

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