大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・124『アキバ上空青龍戦・2』

2022-02-12 17:45:48 | ライトノベルセレクト

やく物語・124

『アキバ上空青龍戦・2』 

 

 

 見渡す限りの闇なんだけど、ところどころボンヤリと薄明るくなっているところがある。

 そのボンヤリは、息づくようにフワフワと大きくなったり小さくなったり、明るくなったり暗くなったり。

 まるで、そのボンヤリに命があるような感じさえする。

「青龍の夢は、まだ形にはなっていないようね」

 わたしもアキバ子も薄気味悪さに息を飲むだけなんだけど、さすがは御息所。

 人の夢に中に潜り込んで、人を呪い殺すだけのことはあって、平然と観察している。

「いま、不届きなこと思ってたでしょ(*`へ´*)」

「ううん、そんなことない。頼もしいって思ったんだから(^_^;)」

「あのボンヤリしてるのは、青龍の願望よ……衝動と言ってもいい。でも、まだハッキリしてないのよ。いずれ、色を持って明るく輝きだして形ある夢になっていく……でもね、青龍って名乗るぐらいだから、自分の姿かたちにはハッキリしたイメージを持っているはずよ。それを見つけて」

「見つけたら、どうなるんですか?」

「見れば、あいつも自信をもって形にするわ。夢は、人に見られて成長するものなのよ」

「なんとなく分かるような気がします。アキバもそうです。人に見てもらって、認め合ってテンション上がっていくもんですから」

「そうよね、コスプレのレイヤーさんたちって、もろ、そうだし。同人誌とかゲームとか、そうだよね」

「そう、承認欲求! それは、妖のなかにもある! しっかり探して!」

「うん!」

「はい!」

「あ、あれだ!」

 探せと言う割に、いちばん最初に見つけたのは御息所だ。

 さすがに夢のエキスパート! 褒めてあげようかと思ったけど、御息所にとっては触れてほしくないところでもあるんだろうと思ったので止める。

 そのボンヤリは薄青く明滅しているんだけど、明滅の真ん中に糸くずみたいなのがあって、それがウネウネしている。

 理科の実験で見たミジンコや青虫のイメージなんだけど、三人で見ているうちに姿がハッキリしてきた。

 先っちょが膨らんで頭になり、手足のようなものも出てきて、頭には角が生えて、小っちゃな龍になった。

 ピカ!

 まぶしい( >д<)!

 アノマロカリスが気が付いて、そのボンヤリを体で隠そうと突進してきて、重なったところでスパークが起こって、周囲が真っ白になってしまう。

「やっぱり龍だったな」

 御息所は平気で目を開けていたので、悠然と腕組みしたままだ。

 アノマロカリスは、元の十倍はあろうかという立派な青龍に変貌を遂げていた。

「思っていた通りでしたね」

「で……あれを、どうやってやっつけろって言うの?」

「コルトガバメントでしょ」

「気楽に言わないでよ、第一形態のアノマロカリスで効かなかったのよ」

「だから、本性である青龍の姿にしたんでしょ」

「あ、ああ」

「御息所……ひょっとして、龍の姿にするところまでしか考えてなかった?」

「いや、そんなことはないわよ。本性に変身させれば、やっつけられるんだから、あとは吸血鬼の胸に十字架の杭を打ち込むようなものよ。さっさとやんなさいよ!」

「で、でも……」

 青龍の姿は、大きくて、キラキラ力強くて、とても、コルトガバメントでやっつけられるようには思えなかった。

 ギラ(⚙♊⚙)

 ヒエエエエエエ!

 いっしゅん青龍の目が光って、三人揃って縮みあがってしまった。

「さっさと、やんなさいよ!」

「ああ、こっち見てますよおおおお!」

「早く!」

「う、うん!」

 ドギューーーーーーーン!

 ビビりながらも思いを込めたせいだろうか、銃口から弾丸が飛び出し、真っ直ぐに青龍の眉間に飛んで行くのが見えた。

 シュルルルル

 銃身に刻まれたライフル(線状)によって旋回運動を加えられ、白い煙のエフェクトを纏いながら銃弾は、青龍の眉間に命中!

 チーーーン

 え?

 銃弾は、釣鐘にパチンコ玉が当たった程度の音を響かせてはじき返されてしまった。

 グオオオオオオオオオオオオ!

 真っ赤な口を開けて、青龍は、あたしたちめがけて飛びかかってきた!

 

☆ 主な登場人物

  • やくも       一丁目に越してきて三丁目の学校に通う中学二年生
  • お母さん      やくもとは血の繋がりは無い 陽子
  • お爺ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い 昭介
  • お婆ちゃん     やくもともお母さんとも血の繋がりは無い
  • 教頭先生
  • 小出先生      図書部の先生
  • 杉野君        図書委員仲間 やくものことが好き
  • 小桜さん       図書委員仲間
  • あやかしたち    交換手さん メイドお化け ペコリお化け えりかちゃん 四毛猫 愛さん(愛の銅像) 染井さん(校門脇の桜) お守り石 光ファイバーのお化け 土の道のお化け 満開梅 春一番お化け 二丁目断層 親子(チカコ) 俊徳丸 鬼の孫の手 六畳の御息所 里見八犬伝 滝夜叉姫 将門 メイド将軍 アキバ子

 

 

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明神男坂のぼりたい・70〔夏も近づく百十一夜・4〕

2022-02-12 07:04:46 | 小説6

70〔夏も近づく百十一夜・4〕 

        


 夏も近づく百十一夜……いつまで続くんだ?

 と、思ってる人、ごめんなさい。

 ほんとうは、夏も近づく八十八夜でいきたかったんだけど、気がついたのが5月の28日。で、数えたら八十八夜ならぬ百十一夜。語呂がいいので、それで書き始めたら終わらなくなってしまって、もう6月。

 ほんとうは、この「夏も近づく百十一夜」で、手紙書こうと思ってた。で、一日延ばしで他のことやってるうちにタイミング失うてしまって(^_^;)。

 で、今日は百十一夜にトドメを指します。っていうか、ほとんどピーカンのカンカン照りだしい(>△<;)。

 で、なんと今日は体育祭、運動会!

 昔は、秋にやるものと決まってたらしい。

 それが、文化祭と重なることや、三年生の進路決定の時期と重なるというので、あたしたちは、小学校のころから運動会は5月末から6月の頭になっている。

 で、分かってるだろうけど、早い年は、もう梅雨が始まりかけて雨の確率が高い。

 

 で、なんと言っても暑い!

 

 あたしは、運動会は好きじゃない。スポーツはいいよ。だけど、いろんな競技を一日掛けてダラダラやるのは嫌い。

 考えてみてよ。好きで行ったライブとかでも、まあ、三時間じゃね? 人間の集中力には限界があるんだよ。映画も芝居も3時間超えるやつなんか、めったにないぞ。

 オリンピックの花と言われるマラソンもドンベの選手も入れて、まあ、3時間には収まるよ。それが運動会は昼休みを挟むとは言え、7時間以上の長丁場。

 もう、これだけでアウト!

 それに、あたしは嫌いじゃないけど、好きと言うほどスポーツは上手くない。中学二年までは関根先輩と学校いっしょだったから、かっこわるいとこ見せられないから必死。で、一等賞はとったことがない。いっつもゴール寸前で陸上とかやってる子に抜かされるんだもんね。

 ちょっと、話は横道へ。

 あたしの名前の明日香には意味がある「今日できなくてもいい。明日に香るような子でいてほしい」というのが名前の由来。まあ、お父さんらしい名前の付け方。男だったら「介(すけ)」の付く名前なんだってさ。

「介」って言うのは、昔の日本の役人の制度では、次官(二番目の役人)を表すらしい。まあ、過剰な期待や努力をしなくていいという思い。

 それには感謝なんだけどね……あたしには、なにごとも一日延ばしにするという悪いクセがある。「今日出来ることは今日のうちに」と、学校では教えられてきた。だけど、うちの家族、とくにお父さんは「明日出来ることは、今日するな」いう主義。

 これにも理屈はある。

  急いで一日でやったら見落としが必ず出てくる。お父さんは、本書いていてアイデアに詰まると、何日かホッタラカシにしとく。そうするとフッとアイデアが浮かんでサラサラと書けるらしい。

 これを「ウンコ我慢法」と言う。念のため、お父さんの命名。立派なバナナ型のウンコをひり出そ思たら、最初の便意は我慢して、その次も我慢して、そしてギリギリになってトイレに駆け込むとモリモリと立派なウンコが出来るそうで、これも立派な努力の方法だと言ってます。
 お母さんは、ただの無精もんの言い訳だと、一言のもとに切り捨て。なんで、こんな性格の違う二人が結婚したのか、あたしの中では世界七不思議の一つです。

 アハハハハハ(๑˃▽˂๑)!

 さつきがノドチンコむき出しで笑った。

 あたしは、ホームルームで種目決める時に、さっさと手を挙げたよ。

 ぐずぐずしてたらリレーのアンカーとか、借り物競走とかのしんどいか、しんきくさい競技に回されるのが分かってるからね。

 しかし、あたしは、やっぱり抜けてる。

 運動会というと、必ず休む子がいるっていう法則だよ。小学校から10回も経験してながら抜けてる。我ながら経験から学習しないバカだ。

 中学校のとき、障害物競走に出る子が休んで代わりに出た時の話。

 平均台渡って、網潜って、麻袋穿いて両足でピョンピョン。ここで、となりの子に抜かされそうになった。ラストは片栗粉の中のアメを探して(手は使えない)ゴール。あたしは、ここで時間かかると思って必死で麻袋脱いだら、ハーパンと、その下まで脱ぎかけて会場大爆笑。その時の半ケツの写真が出回ったとか。

 ああ、これが人生の判決かと(なにシャレとんねん)諦めたけど、関根先輩に見られたのは一生の不覚(-_-;)。

 あ、で、今度のバカは、休んだ子がリレーのアンカーだったこと。リレーの前が女子の棒倒しで、みんなヘゲヘゲになってるんで、パン食い競争で早々と出番の終わったあたしにお鉢が回ってきた。

「明日香、お前が走れ!」

 ガンダムの有無を言わせない命令は、やっぱ元生指部長の迫力。

 バトンを受け取ったときは二番目だった。

 あたしは一番にはなろうとは思っていない。受け取ったバトンを二番目のまんまでゴールしたら、ピンチヒッターの面目は立つ。

 ところが、リレーのアンカーと言うのは陸上の専門みたいなやつが配置されてる。それも三番目のクラスに。

 あたしはコース半分のとこで越されそうになって、必死のパッチ!

 で、あたしとしてはがんばった。50センチくらいの距離でピタっとくっついて、ゴールの寸前!

 で……ころんでしまった。

 運の悪いことに、ゴールは本部テント前。

 校長先生やらPTAの役員に混じって招待客やら一般の人らも混じっている。ころんだ瞬間、本部テントの中からいくつもの視線が刺さる。その中には、明日から正式に登校する新垣麻衣の姿。一瞬笑ってるように見えた。案外この子は見かけとはちがう子かも……と思った。

 むろん順位は大きく落としてブービー賞。

 退場門のとこで、ゆかりと美枝が待っててくれて慰めてくれた。

 で、次に心臓がフリーズドライになりそうになった。

 なんと本部テントの中で、関根先輩が見ていた……!

 

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