せやさかい・277
バサリ バタン ギーー ハラリ ガチャリ ガラリ カラカラ ガックン ブーーン
どれやと思います?
人生のページがめくられる音! 幕が開く音! 扉が開く音! ギアが切り替わる音! 一コマ進む音!
「雲が晴れる感じ!」
留美ちゃんが変化球を投げてくる。
「せやね、なんか生まれかわったような……」
「うん、そうだよ。さくらもわたしも生まれかわったんだよ(^▽^)!」
「せや、女子高生留美とさくらの爆誕記念や!」
「なんか大げさ(^_^;)」
アハハハハハハハハ
二人抱き合うようにしてコタツの前で転けまわった。
そうなんです!
留美ちゃんと二人、聖真理愛学院に通ったんです!
「そうだ、写真撮っとこうよ!」
「うん、そうだね!」
スマホを出して、コタツの上で受験結果を映し出してるパソコンの画面を背景に写真を撮る。
ミャ~
「よしよし、ダミアもお祝いに来てくれたんやな」
でもってブタネコダミアを抱っこして……重たい(体重11キロもある)のを今日だけは我慢して、パシャリ。
プルルル!
「「わっ!」」
構えたスマホが鳴ってビックリ!
「頼子さんだ!」
『もしもし、どうだった!?』
「「はい、受かりましたっ!」」
『おめでとう!』
「わざわざお電話ありがとうございます!」
「頼子さんにも、すぐ電話しよ思てたんですけど、先越されましたね!」
『うん、わたしも、居てもたってもおられなかったからね』
「ありがとうございます、これで、また一年間いっしょに居れますねえ!」
『うん、いっぱい、みんなで遊ぼうね!』
「なんか、無性に会いたいですねえ!」
「コロナじゃなきゃ」
『外なら大丈夫だよ』
「「え?」」
『本堂の前に出てごらん』
「「まさか!?」」
ダダダダ
部屋を飛び出して、廊下を通って文芸部の部室を抜けて、本堂の内陣、外陣を抜けて、ガラリと本堂の扉を開ける!
すると、ちょうど山門脇の自動車の出入り口から見慣れた黒のワンボックス!
「「頼子さーん!!」」
『合格おめでとう!』
あたしらが駆け寄るのと、頼子さんがドアを開けて出てくるのが同時!
「距離をとってください!」
助手席を出ながら叫ぶのはソフィー。
運転席で、どこやらに連絡入れてるのがジョン・スミス。
うちらも、ヤマセンブルグのセキュリティーには慣れてるんで、ちゃんと、ソーシャルディスタンスを開けてる。
「これを間に挟みます」
ソフィーが車内から持ち出したのは、折り畳みのテーブルとアクリル板。
デーーン
据えられたテーブルには、お祝いの花束が据えられ、騒ぎに気が付いた、うちの家族も嬉しそうに出てくる。
「いやあ、頼子さ~ん!」
テイ兄ちゃんがいちばん喜んだのは言うまでもありません。
「お祖母ちゃんも、スカイプでお祝いを言いたかったらしんだけどね、急な公務で時間が取れなくて」
「いいえ、そんな、畏れ多い……(;'∀')」
「本当に、合格おめでとう! 落ち着いたら改めてお祝いしようね」
「え、今日やったんか、合格発表!?」
お祖父ちゃんがボケてる。
「この雰囲気見たら分かるでしょ(^▽^)」
「あ、ついさっき発表されたところだから」
「合格は確信してたけど、やっぱり二人の顔を見て喜びたかったからね」
頼子さんは、ほんの五分ほどで名残惜しそうに帰って行った。
屋外やし、もうちょっと居ってもとは思たんやけど、やっぱり立場を考えると、これが限界やねんやろね。
「戦争が近づいてるのかもしれへんなあ……」
テイ兄ちゃんがぶっそうなことを言う。
「え、なんで?」
「頼子さんのお婆さん、スカイプにも出られんくらい忙しい言うてたやろ」
「うん、公務やからちゃうん?」
「ヤマセンブルグもNATOのやさかいなあ」
「え、納豆?」
「ねえ、人は呼べないけど、今日はうちでお祝いするわよ!」
「え、ほんま!?」
おばちゃんの呼びかけに、NATOも納豆も吹っ飛んでしまううちらでした。