大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・154『邂逅する者たち・2・スポンソン』

2023-04-01 11:46:52 | 小説4

・154

『邂逅する者たち・2・スポンソン』越萌マリ(児玉元帥) 

 

 

 孫大人と二人でブンカ―のスポンソン(海側に張り出した連絡通路)に出る。

 

「あんたと喋っていると男言葉になってしまうからな」

「儂は、越萌マリでもいいぞ。ネットで時々見とるが、カルチェタランのマダムに負けん女っぷりだ(^▽^)」

「冷やかすな。あそこに見張り所がある、あそこまで行こう」

「あんなとこまでかぁ……足もとがスノコというのは、どうも落ち着かん」

「あそこなら、鉄板の床がある、キャッツウォークよりはいいだろ。なんなら、アンテナのスポンソンまで行くか?」

「勘弁してくれ、あそこはジャッキステーを上らなきゃならん。儂はサーカスをしにきたわけじゃない」

「じゃ、見張り所だ」

 

 見張り所と云ってもリアルに見張りが立っているわけではない、将来の拡張性を考えて設置されたものだ。

 西之島が市制を布くにあたって、さまざまな助言をしてきたが、このブンカ―の機能を100%使うようなことは無いだろうと踏んでいた。

 平時は全天候型の荷役港や荒天時の避難港になればと進言したが、及川市長は本気で整備した。

 官僚時代にはいろいろ軋轢もあったようだが、立派に市長職をこなしている。

「四方を海に囲まれているせいかね、潮風と海風に晒されて、人が磨かれていくいくようで、面白いなあ」

「孫大人が殊勝気に褒めると蕁麻疹が出るぞ」

「アイヤー、そのきれいな肌に蕁麻疹を出させては申し訳ないアル。悪党に切り替えようか」

 大人とは満州で司令官をやっていたころからの付き合いだ、バカ話を続けていたいが、そうもいかない。

「念を押しておく、大人は島の味方をしてくれるんだな?」

「儂は、関羽将軍の味方アル」

「関帝、商売の神さまだな。でも、漢明の神さまだ」

「商売はインターナショナルさ。その目で見れば、今の漢明は敵。その次にできる国に賭けるよ。西之島は、いい投資先だ。カッてもらわなければ困る」

「漢明は、西之島遠征軍を反乱軍認定して、国際世論を味方に付けたな」

「劉宏大統領は賢い、反乱軍鎮圧を名目にして、ついでに西之島にも進駐するつもりだ。日本政府は事変不拡大の方針で、出撃をためらっている。手を打たないと、数年後には劉宏に盗られてしまう」

「劉宏のこと、どこまで知ってる?」

「手の内は明かせないが、劉宏はあんたと同じニオイがする」

「やつの本性は劉宏だが、入れ物としての劉宏は死につつある。劉宏の体に入っていては全力を発揮できない。やがて、ソウルを100%王春華に遷すさざるを得ない」

「アイヤー、元帥も劉宏の秘密を知ってるアルかぁ!?」

「劉宏の姿をしているからこそ大統領でいられる。おそらく、想像もつかない奇策に出てくる。その第一歩が反乱軍認定だ」

「ひとつ聞いていいアルか?」

「なんだ?」

「氷川社長は親王を名乗って綸旨を発したアル」

「日本政府が救援を送ってこないんだ、自存自衛のためには仕方あるまい。実際、相当のボランティアが集結しつつあるぞ」

「しかし、元帥」

「なんだ!?」

「元帥は、今上陛下の元帥アル」

「そうだ」

「皇統を二分することになるアル」

「島の独立を確保するのが緊急の課題だ。パルスギの管理を島の者以外に渡すわけにはいかん」

「それもそうアル。パルスギを握れば世界を征服できるアル」

「想像したくないがな」

「政府は別にして、日本国内で秋宮睦仁親王の人気はうなぎ上りアル」

「あくまで方便だ、氷室社長に野心はない。さっき本人に会って確信した。わたしも、ここではシマイルカンパニーの越萌マリとして力を尽くすのだ」

「元帥のソウル丸出しででアルか?」

「え、あ、越萌マリです(^o^;)!」

「ちょっと気持ち悪いアル(ー_ー)」

「貴様……あ、あなたの中国風もキモイですわよ!」

「儂のはお国言葉アル!」

「アルアルは中国語じゃないですわよ!」

「色気出しながら怒るなアル!」

「なによ、この猪八戒!」

「そっちこそ、鉄扇公主!」

「人を妖怪みたいに言うな!」

 子どものいじり合いのようになってきた。

 

「前線偵察の用意ができました」

 

 二人そろってバカになりそうなところにヨイチ准尉が飛行モードのパルスバイクで現れ、思考を元に戻すことができた。

 

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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RE・かの世界この世界:055『女神の子たち』

2023-04-01 06:52:42 | 時かける少女

RE・

55『女神の子たち』テル  

 
 

 
 朝食が終わって、子どもたちが後片付けや掃除に取り掛かる。

 我々も出発の準備にかかろうと腰を上げると――ちょっとお待ちを――という風に院長先生が手を挙げた。

「少しよろしいでしょうか?」

「あ、はい」

 ヒルデたちは子どもたちと庭に出て、ダイニングはわたしとタングリスの二人で、今日の行程を確認するために部屋に戻ろうとしていた。

「ユグドラシルをご存知でしょうか?」

「はい、世界の時間を司っているという伝説の木と心得ますが」

「子どものころに、おとぎ話で聞いたような……」

「実は、伝説でもおとぎ話でもなく、ユグドラシルは存在します。この世界とは、ほんの少しだけズレた亜空間に存在するので、世界樹とはいえ、普段は目に見えません。先の聖戦は実に悲惨な戦争で、この実世界だけではなく、この実世界に隣接する亜世界や異世界にも大小の歪をもたらしました。その聖戦の歪が祟ってユグドラシルは枯れそうになってしまいました。ユグドラシルは三人の女神によって守られているのですが、女神たちはユグドラシルの回復に全力を注がねばならず、子どもたちの世話が出来なくなってしまい。それで、十年前にわたしが預かることになったのです」

「女神の子ども?」

「はい、女神にはそれぞれ一人ずつ子どもが居て、その子どもたちは女神の希望なのです。その希望にかまけていられないほどに、世界樹の再生は大変な仕事だったのです。そして、その仕事が一段落したいま、子どもたちの力が必要になってきているのです」

「子どもが働くんですか?」

「よくは分かりません、後継ぎが必要な段階になったのか、はたまた、子どもたちが女神の力を十二分に発揮するためのブースターになるのか。言えるのは、子どもたちの帰還を喜ばない者……者と擬人化してはいけないのかもしれません。悪、あるいは運命と呼ぶべきかもしれません。その悪、運命は、子どもたちが居ない形で世界を新秩序に収めようとしています。そうなる前に子どもたちを戻したいのです。孤児院に居る限り手出しは出来ませんが、一歩シュタインドルフを出てしまえば、わたしたちでは守り切れるものではありません」

「それで、わたしたちに」

 タングリスの声には困惑の響きがあった。

 ブリュンヒルデの供をするだけで一杯なのだ。子どもの世話、それも、どこにあるか分からない世界樹の根元の国にまで届けることは余計なことだ。

「三人ともとは申しません、一人だけ女神の元に送っていただければ運命の道が開けます。そうなれば、わたしかシスター・フリッグのどちらかで送ってやることができます」

「しかし……」

 さすがに、タングリスは腕を組んだ。ヴァルハラに向かうだけでいっぱいいっぱいなんだ。

「お気持ちは分かります、でも、余計なことに見えて、この仕事はブリュンヒルデさまのおためにもなることなのです」

「姫さまの……」

「創世記二十四章にあります、獄を出でし子は……」

「あれが姫様の事だと……」

「山羊たちを供として父に見参せんと……試練の子たちと……川を渡りて……共に手を……」

 わたしには分からない神話世界の話のようだ。瞬間視線を落としたタングリスだったが、顔を上げるとキッパリと応えた。

「分かりました。それで、その子らとは……?」

 
 ちょうど掃除を終えた子どもたちが入ってきた。

「「「「終わりました、院長先生!」」」」

 
「ご苦労さま、では、勉強の時間まで遊んでらっしゃい、あ、三人は残って」

 三人だけで通じるようだ。ロキとフレイとフレアが顔を見合わせながら、こちらを向いた。

 三人は連れていけないぞ~(^_^;)

 子どもたちなりに戸惑っていると、庭に通じるドアからヒルデがタングニョーストとケイトを連れて入ってきた。

「いいことを思いついたよ!」

 明るく言ったヒルデだったが、わたしたちの様子に戸惑ってしまった。

 
「なにかあったか……?」

 

☆ ステータス

 HP:1000 MP:800 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・20 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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