大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 117『また例の田園風景』

2023-04-07 12:54:15 | ノベル2

ら 信長転生記

117『また例の田園風景信長 

 

 

 目が覚めると、また例の田園風景。

 

 この前とは逆の方向に体を捻る。

 ガチャリ

 やはり草摺りの鳴る音がして鎧を着こんでいることが分かる、手で触れればやはり鶴姫の胴丸鎧だ。

 しかし、反対側に体を捻ったので見えているのは土煙を上げて進軍する軍勢ではない。

 子どもの頃に遊びまわった尾張の村々だ……が、少し様子が変だ。

 尾張は美濃と並んで実り豊かなところだ。

 平手の爺に習った知識では、平安の昔から上国に分類され、都の中級貴族どもは進んで国司になりたがった。

 中級だから都での出世は望めないが、甘い汁をいっぱい吸って私腹を肥やすために都に近い上国に行きたがる。

 そんな国司は迷惑千万なのだが、そういう国司たちにむしり取られても、まだ余りある豊かさがあった。

 だから、尾張の村々は、どこでも活気があった。

 村人たちは田楽の歌や拍子に合わせて田植えや稲刈りに励み、手伝いの終わった子らはあぜ道を走り回って遊んでいた。

 田んぼは稲刈りが済んだ後か…………いや、これは早田刈りだ!

 賊どもが村々を襲い、刈り入れ寸前の田畑の実りを根こそぎ刈っていく狼藉だ。

 百姓が愛しむようにして刈った跡ではない。後妻打ち(うわなりうち)にあってジャキジャキに髪を刈られた女の頭のように無残だ。

 村が焼かれた気配はない。

 おそらくは、一度の襲撃では稲を刈るのが精いっぱいで、時を改めて二度目の襲撃に来る腹積もりなんだ。近隣の村々も同じ目に遭っているに違いない。

 

 あぜ道を進んで村の入り口に来ると、首が晒してあった。

 

 髪を大童にした若者の首だ……首筋の肉付きもよく、死してなおキリっと口を結んで、目こそつぶっているが眉尻は上がって、なかなかに逞しい。

 見下ろすと、晒木の下には赤い布切れ……紐が付いているので下帯(フンドシ)かと思ったが、広げて見ると腹掛け。

 その赤い腹掛けの真ん中には、太々と金色で金の一字が書かれている。

 

 こいつ、金太郎か!?

 

「今度は、わたしも付いていきます」

 右の腰が軽くなったかと思うと、あっちゃんが巫女服姿で現れた。

「わしも力になろう」

 今度はオモイカネの爺さんが現れる。

「グ、今さらという感じがするぞ」

「そう申すな、今度は、百姓たちにも迷惑をかけておる、数は多い方が良い」

「アハハ、三人だけだけどね」

「人相の悪い鎧女が乗り込んだら、百姓たちは逃げてしまう」

「誰が着せた鎧だ」

「必要だからじゃ。さ、まずは村の中へ……」

 そう言うとオモイカネはさっさと村の中に進んでいく。

 神主風のオモイカネ、巫女服のあっちゃん、それに鎧姿の俺。

 まあ、名のある神社の神主が巫女と護衛を連れてやってきたぐらいには見える。

 

 その効き目があったのか、村の広場に至るころには恐る恐るながらも村人が集まってきた。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚

 

 

 

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RE・かの世界この世界:061『草上のバーベキュー』

2023-04-07 07:42:38 | 時かける少女

RE・

61『草上のバーベキュー』テル  

 

 

 

 教室ほどの広さに草が刈られている。

 
 特徴がある。

 ほとんど真円に刈られた草地は絨毯のようで、草の丈は二センチほどでしかなく、腕のいい庭師が精密に刈ったみたいなのだ。

「プレパラートの巣の跡だ」

 砲塔の上、双眼鏡で周囲を見渡しながらタングリスが言う。

「プレパラート?」

「クリーチャーさ。単体では一センチ四方ほどの薄いガラス片にしか見えないんだが、生き物だ。川岸に巣を作って、蟻のように集団で生活している。多くなりすぎると巣を放棄して、新しい営巣地を求めて移動するんだ。全個体が集合するまで、巣の上を円を描いて飛びまわる。それで草が綺麗に刈り取られるんだ」

「相当鋭利に出来ているんだな……」

「ああ、大型のクリーチャーを集団で襲うこともある」

「そんな奴らの巣の上で休憩して大丈夫なの?」

 首だけハッチからのぞかせたロキが不安そうに言う。

「放棄した巣には戻ってこない」

「タングリス、どのくらい休むんだ?」

「二時間ほど。ここを出たら、一気にノルデン鉄橋を目指します」

「二時間あれば魚が釣れるな」

「釣りをなさるんですか?」

「流刑地じゃ自給自足だった。上手いものだぞ、闇の力で得物を引き寄せ、一気に仕留めるんだ。おまえたちも付いてこい(^▽^)/」

「でも、釣り竿とかどうするの?」

 見ると、タングニョーストが四号のアンテナを外している。戦車の装備と言うのは無駄がないようだ。

「バーベキューにするから、用意をしておいてくれ」

「こんな草地で火を使うのか?」

「大丈夫だ、水を撒けば問題ない。念のために石ころで炉を作ってくれていると嬉しい」

「よし、わたしとケイトでやっておこう」

 あっという間に役割分担ができて、釣り組と設営組とに分かれた。

 

 ピピピピ ピピピピ

 

 ブリュンヒルデのCアラームが鳴りだして、緩みかけた空気がいっぺんに張り詰める。

「北西の方角……そんなに近くはないが」

 いったん降りた四号に駆けあがり、タングリスが双眼鏡を構える。

「プレパラートがメスシリンダーを襲っている」

「ほんとうか!?」

「メスシリンダー?」

 シリンダーの一種なのだろうが、初めて聞くクリーチャーだ。

「大型のシリンダーだ、プレパラートとは共存しているはずなんだが……どうやらクリーチャーの間にも異変があるような……」

 瞬間迷ったブリュンヒルデだったが、こちらにはやってこないと踏んでアンテナの釣竿を肩に魚釣りに出かけた。

 やがて、小魚や目の下五十センチもある魚を三匹釣ってきて、バーベキューが始まった。

 魚の名前を教えてもらったが、みんなで食べているうちに忘れてしまう。

 それと、いつの間にかタングリスとタングニョーストの言葉が変わっている。文字にするとタメ口だが、遠慮のない同僚・同輩に対するそれで距離が近くなった。指摘すれば、任務以外は不器用そうな下士官たちはアタフタしてぎこちない敬語に戻してしまうだろう、この方がいい。

 ロキとケイトはポチをボールにしてキャッチボール。やがてボールにされることに飽きたポチが追いかけまわして鬼ごっこに変わる。

「鬼ごっこならヒルデも入れろ!」

 最初は我々と大人の会話をしていたヒルデも小魚を咥えたまま参加する。

 凛とした姫騎士の姿も見せるヒルデだが、時どきスイッチが切り替わったように子どもっぽい姿も見せる。

 使い分けているんじゃない、そうなってしまうんだ。

「その通りだ、姫の周囲は大人ばかりで、十分に子どもの時代を過ごせないでお育ちになった。テルも自然に受け入れてくれると嬉しい」

 タングリスはタングニョースト共々、チェックしていた行程表から顔を上げて目を細める。

 自分のことはともかく、ヒルデのことはよく分かっているんだ。

 

 楽しかった。

 どうやら、六人はいいパーティーになりそうだ。

 

☆ ステータス

 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)     二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)   今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス        トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
 ロキ           ブァイゼンハオスの戦災孤児
 ポチ           ブァイゼンハオスの子どもたちが飼っていたシリンダーの幼生

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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