大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・402『王宮某重大事件・1・詩の災難』

2023-04-21 15:41:45 | ノベル

・402

『王宮某重大事件・1・詩の災難』詩(ことは)   

 

 

 ヤマセンブルグには『妖精飛び出し注意』の道路標識がある。

 大阪の幹線道路からちょっと生活道路に入り込んだところに『子どもの飛び出しに注意』の標識がよく出ている。

 そんな感じ。

 地元の人たちが子どもを妖精に例えて安全運転を喚起するために私的に設置したものでは無くて、ちゃんと警察が大まじめで建てた公的な標識。教習所の筆記試験の標識問題のところにちゃんと出ている。

 それに気づいたのは、去年。頼子さんやさくらといっしょエディンバラとヤマセンブルグを訪れたとき。宮殿に向かう車の中で発見して、ディズニーランドでミッキーマウスに出会った時みたいに興奮してしまった。

 女王陛下(頼子さんのお祖母ちゃん)が、その時のわたしの目の色をご覧になって「そんなに興味があるのなら、もっと面白い話があるわよ」と、滞在中、いろんな資料を見せて、お話してくださった。

 そして、それが縁で、わたしはヤマセンブルグに留学している。

 中学からずっと吹奏楽をやってきて、一時は、これで身を立てようと思っていたけど、自分の力に限界を感じて大和川の流れに自分の吹部人生は流してきた。

 それからは、義務的に大学に通うだけで、大げさに言えば生ける屍。さくらや留美ちゃんが生き生きと高校生活を送っているのが、正直羨ましかった。

 

「ヨーロッパは、国同士が親類みたいなもので神話や物語を共有している。ううん、宗教だって、みんな兄妹、親類の関係。それぞれの聖典にお互いのことが載っていて、ユダヤ教キリスト教、イスラム教にさえ被っていることが多くある。同じ文化を持っているからこそ、その、東洋から見ればわずかな違いに目くじらを立てていがみ合ってしまうところがあるのね。日本では、こういうのをなんとか言うわね……」

「近親憎悪ですか?」

「そうそう、キンシンゾウオ。待ってね……(電子辞書をお引きになる)Hatred for close relatives is bigger than ordinary person.……ちょっと長いわね。まあ、息子や孫のヨリコがわたしに楯突くようなものね」

「アハハ( ´艸`)、失礼しました陛下」

「いいのよ、笑って済ますのがキンシンゾウオの一番の解決法。ベスねえさんも、その笑いの感覚で乗り切ってこられたんだから。はてさて、息子の方にそれだけの度量があるのかしらねえ?」

「戴冠式には、陛下おん自ら?」

「ええ、親類の喜び事だし、ベスねえさんとの約束でもあるし、わたしが足を運ばなければならないでしょう。コトハも付いて来てね」

「はい、承知しています」

「バッキンガム宮殿にしろ、ウェストミンスター寺院にしろ、妖精や魔法に関わることが、それも部外秘のものがいっぱいあるから、またとない勉強になるわ」

「ありがとうございます」

「そうそう、その下調べのために見ておく資料が……そうそう、第二図書室の方だったわ。ぜひヨリコに見せてあげたいものが。こっちよ……」

 陛下は階段を八段上ったところで思いつかれ、九段目に足を掛けたまま振り返られ……そしてバランスを崩してしまわれた。

「あらあああああ!」

「陛下っ!!」

 ドッシン ガラガラガッシャーーーーン!!

 六段目にいたわたしは、全身で陛下をお支え申し上げたけれど、抗しきれず、そのまま二階の廊下まで転げ落ちてしまった。

 わたしが下敷きになったので、陛下は筋を違えるだけで済んだ。

「陛下、大丈夫ですか!?」

 陛下をお起こししてさしあげなければ……え……足が動かない。

 でも、陛下を……陛下を……

 ウッ!!

 もう一度体を起こそうとすると、背中に激痛が走って、そのまま気を失ってしまった。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
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巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・020『春たけなわの身体測定』

2023-04-21 11:34:29 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

020『春たけなわの身体測定』   

 

 

 女子の身体測定は午前10時30分から。

 

 ずいぶんゆっくりみたいだけど、10時までは男子がやっている。

 男女で時間を分けるというのは合理的だよ。

 中学までは、種目っていうのか、メニューを工夫することで男女が被らないようにしていた。被らないと言っても、学校の中に居るというのは同じなので、時どきふざけた男子が覗きとか問題を起こして叱られていた。測定が終わったら普通の授業だったしね。

 それが、女子の開始時間の10時30分になると、男子は検査場になる校舎や体育館には立ち入り禁止。まあ、たいていの男子は10時で帰ってしまう。そう、測定が終わったら、もうその日は学校お終いなのさ。

 でもね、令和の高校はフッてきたから分からないけど、同じなら令和の方がいい。だってさ、女子も昼までには終わって帰れるんだもんね。遊ぶとなると令和の方が数的にも質的にも断然多い。

 

 うわあ、男くさ~い(^▲^;)

 

 ほんの30分前まで、男子の時間だった体育館のフロアーは男のニオイでいっぱい。

 でも、口に出して「くっせー!」とか言う子はいない。「あはは、すごいですねえ」とロコが鼻にしわを寄せるくらいのものだった。

 メニューは、身長、体重、胸囲、座高、聴力、視力の六つ。聴力は渡り廊下、視力は他の項目が全部終わって、教室で担任がやってくれる。

 最初に学年全体の説明があって、その後、クラスごとに指定された検査にまとまって移動。そのあとは、空いてるところを見て周っていく。

「保健委員は?」

 最初の身長コーナー。担当の先生が記録係りの保健委員を呼ぶ。

「はい!」

 元気よく手を上げて、記録者席に向かったのは保健委員の吉本さん。

 お喋りじゃないけど、喋る時はハキハキしていて、ヘアバンドで堂々とオデコ出してることと合わせて好印象。

「じゃ、吉田さん最初ね」

 保健委員は最初に済ませて記録に専念するみたい。

「155!」

 先生が叫んで、吉本さんは自分で記録。そして、あとは出席番号順に進んでいく。

 あ、ちなみに服装はジャージ。ロコの話だと、去年までは女子もパンツ一丁にされたとか。

 保健室の先生が主張して、女子はジャージでよくなった。ジャージは上下で400グラムあるんだそうで、その分をあらかじめ引いてあるのかどうかは分からない。

 

 あ……

 

 体重計は、なんちゅうか、まるっきりハカリ。

 目の高さに時計みたいなのが付いてて、乗っかるとガチャンと音がして針が遠慮なく体重の目盛りを差す!

 で、目盛りが両面にある! 体重丸出しアナログ丸出しのハカリ!

「50・1!」

 そんな大声で言わなくても……で、人生で初めて50キロを超えてしまった(-_-;)。

 

 座高なんて保育所以来計ったことない。「昔は計ってたよ」とお祖母ちゃんの言う通り。

「座高のトップは称号があるんだよ」

 移動しながら吉本さん。「え、なになに?」と周囲の人たちが聞く。

「ざこういち!」

 アハハハ( ´艸`)

――ちょっと、そこ!――

 おこられてしまった(^_^;) けど、楽しくなってきた。

 

 胸囲を済ませて、渡り廊下の聴力。担当はグラマーの妹尾先生。

 グラマーと言っても男の先生。

 昭和の英語はリーダーとグラマーに分かれてる。リーダーはうちの担任で、英文を読んでは訳していく。

 グラマーは、SVとかSVOとか五文型とかややこしい文法をやる。どっちも好きじゃない。

 ヘッドホンの片耳だけみたいなのを耳に当てて、ピーって音が聞こえたところで手を挙げる。

 両耳が終わると、先生は小さく……たぶん「異常なし」って言ってる。体重の先生もこれくらいのデリカシーがあればと思ったよ。

 渡り廊下は両側がガラス張りで、とても明るい。

 古い校舎だけど、設計した人は採光をよく考えていると思う。昭和28年にできたらしい、まだ戦後って言っていい時期で、日本中貧乏だったんだけど、いい仕事している。

 聴力検査だから、みんな静かにしている。静かにしていると眠くなる。

 窓の下は中庭になっていてロダンの『考える人』のブロンズがある。考える人は考えるふりをして寝てるんじゃないかと思うくらい春たけなわの上天気。顔を上げて流れる雲を見ていたら「次!」と怒られた(^_^;)。

 

 教室に戻って、まずは制服に着替える。

 よくできた制服だけど、ベストとスカートを連結させるのが、ちょっとだけ面倒。

 着替え終わってジャージを袋に詰める。自分のジャージだけど生暖かいのが、ちょっと気持ち悪い。

 みんな着替え終わって視力検査。

 黒板横の窓側掲示板に視力検査表が貼ってあって、5メートル離れたとところから片目ずつ。

「手で押さえつけるとボケるからな、出来るだけ、目隠しを使えよ」

 目隠ししゃもじを奨励して検査開始。

「両眼とも2・0」

 先生が宣言すると、みんなから小さく歓声が起こる。

 視力だけは、いつもクラスで一番。でも、良すぎるのは老眼になるのも早いって言うからね。

「羨ましいです……」

 そう呟いたロコは、両眼0・4。

 眼鏡をしないのはこだわりなんだ。コンタクトレンズは、この時代ではまだ無いのかもしれない。

 

 あんまりいいお天気なので、廊下に出てスマホで検索。

 

「この時期、宮之森で景色の良いところ教えて」

 と、小声で音声入力。

『宮之森城址の八重桜が見頃です!』

 スマホも音声で返してきた。うっかり音声オフにするのを忘れてた!

「誰かと喋ってました?」

 ロコが出てきて、怪訝な顔。

「あ、ああ、独り言! あ、ねえ、城跡の八重桜観に行かない!?」

「あ、いいですねえ!」

 

 で、けっきょく女子五人でお花見に行くことになってしまった……。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田 博子             1年5組 クラスメート
  • 辻本 たみ子            1年5組 副委員長
  • 高峰 秀夫             1年5組 委員長
  • 吉本 佳奈子            1年5組 保健委員
  • 横田 真知子            1年5組 リベラル系女子
  • 加藤 高明             留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 先生たち              花園先生:4組担任 妹尾先生:グラマー
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館

 

 

 

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RE・かの世界この世界:074『タングリスと以心伝心の目配せ』

2023-04-21 06:41:10 | 時かける少女

RE・

74『タングリスと以心伝心の目配せ』テル 

 

 

 乾杯の後は宴になった。

 いつの間にか広場のあちこちにテーブルが出され、そのテーブルを中心に人々が思い思いに集まってビールを飲んだり、山ほど用意された料理に手を伸ばして盛り上がっている。二十人ほどの楽隊がポルカのような軽快な音楽を奏で、町の人たちが二人一組で手を取り合ってステップを踏みはじめた。

 誰が指揮をしているわけでもないのに、ステップの輪は広場の噴水ステージを二重に取り巻く大きな輪に育ち、文字通りのフェスティバルになった。

「オイラたちも入っていいかなあ」

 ロキが目を輝かせながらも、しおらしくタングリスに聞く。

「ああ、いいとも。ここから見ていてやる」

「よし、行くぞ!」

「こら、引っ張んなあ!」

 ロキはケイトの手を取って踊りの輪の中に入っていく。

―― 見物だけとはつまらない ――

 うわーー!

 歓声があがったかと思うと、タングリスもブリュンヒルデも町長や町の若者に手を引かれていってしまった。

 臆したわけではないが、わたしは山車の陰に回ると、クルクルと踊っている人やビールの泡を飛ばしている酔っぱらいたちをかいくぐって、迎賓館のポーチに移った。宴もたけなわなのだろうが、一人ぐらいは覚めた頭で控えていないと、いざという時に対応できないと思ったからだ。

 タングリスも分かっているようで、踊りの輪の中で揉みくちゃになりながらも―― あとで代わる―― と以心伝心の目配せ。

 男たちは民族衣装のボレロに似た上着を脱ぎ、肘まで袖をまくり、それでも羽毛の付いた帽子だけは脱がずに。若い女たちのスカートには仕掛けがあって、膝下や、あるいは膝上10センチくらいのところから取り外せるようになっていて、元気に楽しく踊っている。

 冴子が得意にしていた日本の神話や昔話に似たものがあった、天岩戸の前で、岩戸に身を隠した天照を誘い出そうとやったお祭り騒ぎ。盆踊りの原型になったと言われる歌垣とかね。

 え、えと、冴子って……誰を思い出したんだ?

「いやあ、クリーチャー相手の戦闘の方が楽かもしれんなあ(;'∀')」

 十分もすると、ジョッキを二つ持ってタングリスがやってきた。ドレスは股下5センチほどになって、フリフリの袖も肩口から無くなっている。

「暑くて外したら、子どもたちが持って行ってしまった」

「あはは、戦隊物の女戦闘員みたいだ」

「あはは、お互いにな」

 気づくと、いつのまにか自分でもスカートを短くしていた。

「みんなタフだ。気は抜けないが、ま、一杯ひっかけてからでもいいだろう」

「そうだな、我々も、ようやくチームになりかけてきたな」

 縁の下の力持ち同士、小さく乾杯。特に言葉を交わすこともないが、これからの旅への覚悟と労いを交わすことができた。

「さ、交代するよ!」

 ポーチの陰から出ると、相変わらず盛り上がっている踊りの輪。だが、さすがに疲れたのか充電しているのか、柱にもたれかかったり、テーブルに突っ伏している者がチラホラ。

「大丈夫かい?」

 そんな一人の肩に手を置いて……驚いた。

 

 石化している《゚Д゚》!?

 

―― メドューサが入り込んでいる(⊙ꇴ⊙)! ――

―― 声を立てるな、パニックになる(`エ´*) ――

 

 タングリスが二度目の目配せをした。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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