巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記
身体測定の日は学食はお休み。
お弁当ってほどじゃないけど、城山(宮之森城址公園)には売店も自販機も無いということなので、ちょっとお買い物。
学校を出て道を渡ったところにお店がある。
いちおう大手パンメーカーの看板は掛かってるんだけど、お店の中ではもんじゃやらお好み焼きとかも食べられて、子供向きの駄菓子とかも置いてる。
「あら、お花見? いいわねえ、オバチャンの時代は女子挺身隊だったからね、お花見どころじゃなかった」
お店のオバチャンはリアル女子挺身隊(^_^;)
「五人分はかさばるから、紙袋あげるね」
ひとり二個のパンと飲み物。一人分ずつを小袋に入れて、それをまとめて西武百貨店の袋に入れてくれる。
この時代、レジ袋もコンビニも存在していない。
「なにシゲシゲ見てんの?」
ジュースのパックを見ていると吉本さんに見咎められる。
わたし:「ああ、変わったパックだから」
吉本:「え、普通のテトラパックじゃないの?」
辻本:「給食の牛乳これだったね」
ロコ:「うちは、ビン牛乳だった」
吉本:「三年まで脱脂粉乳だった!」
横田:「あ、あれは飲めたもんじゃなかったよねぇ」
辻本:「アメリカじゃブタの餌だし」
ロコ:「ブーブー!」
吉本:「ブタはブヒブヒだぞ」
ロコ:「ブーブー!」
吉本:「ブヒブヒ!」
横田:「もう、食べ物屋さんでブタごっこはいけません」
みんな:「「「「「アハハハハハハハ」」」」」
なんか、早くもみんなお友だちの雰囲気で城山を目指した。
吉本:「八重桜はゴージャスだねえ!」
感嘆の声を上げたのは吉本さん。
天守閣とか建物の無いお城って、どんなのかと思ったけど、苔むした石垣との対比がステキだ。
辻本:「来てよかった……」
横田:「そうね、荒城の月って、こんな感じよね」
ロコ:「あれって、夜の歌じゃないんですか?」
吉本:「ああ、月は夜だよね」
横田:「夜になるのは四番よ、一番は『春 高楼の花の宴~』よ。お城でやったお花見がテーマ」
辻本:「そうね、めぐる盃ぃ~かげさしてぇ~♪」
吉本:「よし、あたしらも盃にしよう!」
みんな:「「「「「おお!」」」」」
高島屋の袋からパンと飲み物を出し、石垣の縁に立ってグビグビ、チビチビ。
ロコ:「メグさん、シミジミしてますねえ」
わたし:「え、あ、なんかモノノアワレ的なみたいな?」
横田:「あ、そうね。荒城の月って、昔を偲んでシミジミする歌なんだよね。時司さん、正しいわよ」
わたし:「いえいえ、そんなあ(^_^;)」
『荒城の月』知らないだけだしぃ(#^_^#)
吉本:「う~ん、写真撮りたいねえ」
辻本:「あ、そうね、青春の一コマ的かもね」
うう……スマホあるから簡単に撮れるんだけど、出すわけにはいかない。
ロコ:「スケッチしましょうか?」
みんな:「「「「スケッチ?」」」」
ロコ:「あ、ほんのクロッキー的なもんです。期待されると困るんですけど(^o^;)」
みんな:「「「「やってやって!」」」」
みんなで桜の木の下に立ち、つつましくポーズをとった。
ロコは、自分の立ち位置とポーズを決めると一段高い石垣に上がり、器用に五分余りで書き上げた。
今日は、一気に友だちが五人になった。
めでたしめでたし。
☆彡 主な登場人物
- 時司 巡(ときつかさ めぐり) 高校一年生
- 時司 応(こたえ) 巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
- 滝川 志忠屋のマスター
- ペコさん 志忠屋のバイト
- 宮田 博子 1年5組 クラスメート
- 辻本 たみ子 1年5組 副委員長
- 高峰 秀夫 1年5組 委員長
- 吉本 佳奈子 1年5組 保健委員
- 横田 真知子 1年5組 リベラル系女子
- 加藤 高明 留年してる同級生
- 藤田 勲 1年5組の担任
- 先生たち 花園先生:4組担任 妹尾先生:グラマー
- 須之内写真館 証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館