大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・399『灌仏会の前日は始業式』

2023-04-08 14:37:01 | ノベル

・399

『灌仏会の前日は始業式』さくら   

 

 

 

 昨日は一日中雨やった。

 

 散り始めてた桜は、この雨で一気に花を落として山門の桜は完全に終了。

 まあ、雨のお蔭で境内の掃除はやらんで済んだんやけどね。

 

 その雨の中、昨日の七日は始業式やった。

 

 一年の始まりが雨というのは、ちょっと凹む。

 制服はクリーニングしたてやのに、堺東まで自転車で行ったらスカートびちゃびちゃに濡れるし。

「よし、わしが連れてったろ」

 お祖父ちゃんが車で送ってくれる。帰りはテイ兄ちゃんが迎えに来てくれることになる。

「お祖父ちゃん、ありがとう……ウワ!」

 ブゥィーーーーン ベシャ!

 車降りたとたんに、原チャがすり抜けて盛大に水しぶき。ドアがガードしてくれて制服は無事やけど、足と頭にけっこうな水しぶき。

 まあ、ええねんけど……これは学校に着いてからのさらなる不幸の序曲に過ぎひんかった(-_-;)。

 

 ええ( ゚Д゚)!?

 

 昇降口に貼ってあるクラス表見て目ぇ剥いた!

 お仲間が、ほぼ完全にバラバラ。

 留美ちゃん・1組  メグリン・2組  さくら&ソニー・3組

「まあ、こういうこともあるよ」

 留美ちゃんは冷静に受け止めてる。

「せやかてぇ」

「今までが幸運過ぎたのよ。中学一年からずっと同じクラスなんて、ふつうあり得ないよ。もう高校二年なんだし……」

 そこまで言うた留美ちゃんが息を呑んだ。

「え、月島先生いない……」

「あ!?」

 8クラスある新二年生の、どのクラスを見てもペコちゃん(月島先生)の名前が無い!

 中二の時からの担任で、うちらが真理愛学院に進学すると同時にペコちゃんも真理愛学院に転職してた。

 なんと、中二からずっと同じなんで、これは高校出るまでずっとうちらの担任やと思てた!

 

 いつまでもあると思うな親と担任……格言のモジリがシュールに浮かんでくる。

 

「まさか、学校辞めちゃったんじゃ( ゚Д゚)!」

「え、どないしょ!?」

 なんや、地面が無くなってしもたみたいな不安にかられて、思わずラム&レムみたいに手を取り合う。

 あんまり気のきかん先生やったけど、うちらには頼子さんと並んで、うちらのオネエチャンいう感じの存在やった。

 担任イコールペコちゃん! ペコちゃんイコール担任! そんな存在やった!

 

「ちょっとぉ……手伝ってくれるぅ(;゚Д゚)」

 

 後ろで声。

「「え?」」

 振り返ると、そのペコちゃんがケーブルとかはみ出た段ボールの箱抱えてフーフー言うてるやおまへんか!

「ちょ、せんせ!?」

「担任降りても仕事はあるのよ。まだ時間あるでしょ、体育館までだから運ぶの手伝ってぇ」

「「は、はい!」」

「今年度は視聴覚係りでさぁ、体育館は講堂と違って、放送設備はその都度だからねえ……ヨイショ」

「ウンコラショ、なんで担任辞めたん?」

「中学から、もう三年連続。それに、うちの神社のこともね……」

 荷物が重いせいか、ちょっと仕事にも生活にも疲れた「OLのお局様」みたい。

「だれがお局様よ」

「え、なんで!?」

「さくら、口に出てた(^_^;)」

「まあ、バラバラになっても同じフロアだし、担任はみんないい先生だし、がんばんなさい」

「3組のコトリアソビいうのは、どんな先生なんですか?」

「コトリアソビ?」

 プ(;゚;ж;゚; )

 なんでか、留美ちゃんが吹く。

「小鳥遊(タカナシ)って読むんだよ」

「ええ、ほんまぁ!?」

「再任用だけど、いい先生よ。お歳召してるから、ご迷惑かけるんじゃないわよ」

「そら、もちろん。伊達に十七歳……あ……(n*´ω`*n)」

「ん?」

「そうだ、さくらは明日が誕生日なんですよ。花の17歳」

「そうか……早いものねえ(-_-;)……」

「なんか、死んだ子の歳を数えるみたいにシミジミせんとってくれます」

「ああ、ごめん。あ、ここでいいよ。じゃ、今年もがんばってね」

「「はい」」

「あ、それから、散策部の顧問は辞めてないからね」

「それも辞めてたら殺します!」

「おお、こわ~い(^0^;)」

 

 それから、教室に行って、いつもの学年始め。

 

「小鳥遊先生は、さくらの祖父君と同じ歳であられるようだぞ」

 席が隣になったソニーが、こっそりと教えてくれる。

「え、こ、古希!!?」

「酒井くん」

「すみません」

「謹んで指導第一号の称号をあげよう」

 先生は真面目な顔のまま閻魔帳に書いた。みんながクスクス笑う。

 

 今年も人に笑われるとこから始まってしもた。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任)
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RE・かの世界この世界:062『メデューサに徹甲弾!』

2023-04-08 06:07:04 | 時かける少女

RE・

62『メデューサに徹甲弾!』テル  

 

 

 地図で見るとノルデン鉄橋に向かう道は東への直線だ。

 

 しかし、実際には微妙に蛇行しているし高低差もある。

 時おり、左にムヘン川が見える他は、道の両側は草原か灌木林で、道の蛇行や高低差と相まって、地図で見るほどに見通しはよくない。

 時々、車載機銃や75ミリの主砲で榴弾を撃ったりする。

 見通せない向こうを警戒するためだ。これまでに、シリンダーやプレパラートを発見し、避けたり駆除しながらここまでやって来た。

「2シュトリヒ先の灌木林、機銃掃射」

「2シュトリヒ先の灌木林、機銃掃射」

 タングリスの発声を復唱してトリガーを引く。

 タタタタ

 乾いた発射音、灌木林の中で火花が四つする。

「いい勘をしているな、岩か何かがあるぞ」

 火花がたつということは固いものがある証拠だ。

「少し左にも当ててくれ」

「承知」

 タタタ

 再び火花、けっこう大きな岩か金属の構造物がある模様。

「榴弾、撃ってみるか?」

「いや、徹甲弾にしてくれ」

 榴弾に手を伸ばしていたケイトが怪訝な顔をする。シュタインドルフを出てから徹甲弾など撃ったことがないからだ。

「装填急げ」

「徹甲弾装填!」

 測距用ペリスコープで照準を確認。他の乗員もペリスコープにかじりつく気配。

「テー!」

「テー!」

 復唱してトリガーを引く。ガクンと発射の衝撃、主砲尾部が後退してリロード。

 リロードの瞬間、装填手のケイトはへっぴり腰になる。主砲尾部のリロードから身をかわすためだ。

 最初のころはロキが笑った。その都度ケイトに頭を張られていた。餅つきのリズムに似ている。

 今は笑わない。慣れたこともあるが、徹甲弾を撃つというイレギュラーなことに興奮しているのだ。

 

 ズッガーーーン!

 

 灌木林の中で爆発が起こり、火花と破片が舞い散って煙が上がる。

 戦車か?

 思った瞬間、人影がまろび出てきた。

 髪をなびかせながら道に出てくると、膝をついて頽れてしまった。

「女の子だ!」

 声を発すると同時に、ハッチを開けてロキが飛び出した。見えない糸で繋がったようにポチが続く。

「待て!」

 タングリスの制止も間に合わない。ロキもポチも四号の構造に慣れてしまって自在に動けるようになったのだ。

「ロキを追え!」

 操縦席と通信手のハッチが同時に開いて、タングニョーストとブリュンヒルデが飛び出す。

 少女戦車兵の傍に寄って手を掛けたロキが、ストップモーションのように静止した!

「メデューサだ! ゴーグルをかけろ!」

 叫びながら飛び降りたタングリスはゴーグルをかけて走り出した。右手にはなにかを握っている。

 タングニョーストとブリュンヒルデは姿勢を低くして近寄ると固まってしまったロキを引き離しにかかる。

 メデューサはノロノロと起き上がろうとする、おそらく負傷しているんだろう。

 三メートルほどに近づいたタングリスはメデューサに跳びかかると背後から首をロックした。

 はっきり顔の見えたメデューサは哀願の表情の美少女だ。口をパクパクして命乞いをしているようにも見えるが、タングリスは斟酌せずに手にしたものをメデューサの口にねじ込んで飛びのいた。

 ドーン!

 メデューサの首が吹っ飛んで、肉片が四方に飛び散った。

 思わず口を押えるほどに凄惨な光景だったが、数秒後には肉片もろともメデューサは消えてしまった。

「金の針を!」

 そうだ、石化を直すには金の針を打ち込むしかない。

 始まりの草原で仕入れた金の針をケースごと投げてやる。

「間近でやられたんできついなあ……」

 五本の金の針を使って、やっとロキは元に戻った。心配そうに飛び回っていたポチがすり寄って、やっと人心地がついたようだ。

「さ、おちついたら前進だ」

 車内に戻ろうとして気づいた。

 半身をハッチから乗り出したかっこうで、ケイトが石化していた……。

 

☆ ステータス

 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:0 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)     二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)   今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス        トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
 ロキ           ブァイゼンハオスの戦災孤児
 ポチ           ブァイゼンハオスの子どもたちが飼っていたシリンダーの幼生

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

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