大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・159『海の中の木漏れ日』

2023-04-30 15:42:10 | 小説4

・159

『海の中の木漏れ日』ニッパチ 

 

 

 潜水モードにした機動車は深度20メートルで西に流されている。

 

「36時間は、このペースですが御辛抱ください」

「いいえ、こんなにゆったりとするのは久しぶりだから……それに、贅沢にも柔らかな木漏れ日も付いていますし」

「木漏れ日……ああ、これですね」

 ヨイチさんと見上げた海面には数万個の軽石が浮かんでいて、そこを透過した日光がまるで木漏れ日のよう。

 敵に探知されないように、機動車は動力を切って黒潮反流という海流にのって潜行している。

 時速0・5ノットほどだけども、流れは確実。この海流に乗っていく。時おりの小噴火で噴き上げられた軽石が南西諸島方面に流され、沖縄などで建材や装飾品の材料にされている。ヨイチさんは、その黒潮反流に機動車を潜らせ、ラダーを操作するだけで深度と進路を固定している。

「西之島は火山島だから緑が少ないでしょ、木漏れ日なんてショッピングモールのアプローチぐらいですから、とても和みます」

「ニッパチさんは西之島を出るのは初めてなんですね」

「はい、元々は本土で使われていたんですけど、単なる多用途作業機械でしたから記憶がありません」

「ロボットの登録はなさらないんですね?」

「ええ、島を出るつもりはありませんでしたから」

「技研に着いたら発行してもらいます」

「あ、それは……」

「むろんフェイクです。街を歩いたり交通機関を利用できる程度の」

「あ、それなら嬉しいです。胸のオペが終わったら基本的には用事がありませんから、お散歩できると嬉しいです」

「まあ、技研の周囲と江ノ島ぐらいですが」

「十分です」

「そうだ、このタブレットに観光案内が入っています。一昔前の10ペタモデルでおもちゃみたいなのですが」

「ありがとうございます! こういうのはオフラインがいいですね。ウィルスとか枝が付く心配とかありませんから」

「おお、少し流れが早くなってきました、1ノットあります。これなら20時間ほどで海面に出られます」

「わたしは、軽石の木漏れ日でもいいですよ」

「状況の許す限り可及的速やかに参ります」

「フフ、なんだか軍人さんみたい」

「アハハ、予備役ですが、陸軍准尉でありますから」

「あ、そうでしたそうでした。マイさん……元帥とは満州戦争からごいっしょなんですよね?」

「はい、興隆鎮以来副官を拝命しておりました」

「今は記念館の……」

「はい、管理人をやっております。あ、本土では元帥はお亡くなりになったことになっておりますので」

「承知して……ガガ ガ ピー……あら、ノイズ……が」

「ガガ……ケーブル直結……ピー……ですから」

「ですね、浮上でき……になったら、普通に……話せま……」

「そうしま……う」

 

 プチ

 

 ハンベに繋いだケーブルを抜くと、わたしもヨイチさんもダンマリになって、浮上の時を待った。

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  •  

 

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RE・かの世界この世界:083『ポチの力』

2023-04-30 07:13:09 | 時かける少女

RE・

83『ポチの力』テル 

 

 

 変身にも驚いたが、玄武を一撃で撃退した力には、もっと驚いた!

 ポチはすごい力を身に着けて戻ってきたのだ!

 

「どうして、あんな力が身についたんだ?」

「あ、あたし……なにかやったの?」

 墜落のショックか、ポチ自身には自覚がない。しかし、言葉は人間のようにしっかりしてきてみんな感動した。

「「「おお(*_*)」」」

「ポ、ポチイイイイイ!」

「く、くゆしい……(。>ㅿ<。)!」

 ロキが、さっきよりも強く抱きしめるので手足をばたつかせる。それが、また可愛いので笑ってしまう。

「ちょっと離してやれ」

 タングリスに言われて、ロキはポチを肩の上に座らせてやる。必死でロキの首にしがみ付くのが可愛くて、みんな目をへの字にしてしまう。

「ポチの話を聞こう」

「えと……でも、こっちは何があったの?」

「そうだ、タングねえちゃん、おいらたちの話もしてやらなきゃ」

「実はな…………」

「ファウ(*_*;!」

 説明してやると、真っ青になってロキのシャツの中に逃げ込んでしまうポチ。

「そ、そんなこがあって、そんなことしたの!?」

 シャツの中をゴソゴソ動き回り「や、やめろ、くすぐったい(≧∇≦)!」と嫌がっているのか嬉しがっているのか分からないロキの襟首から顔を出した。

「思い出したよ! お空の上にぶっ飛んだら、シリンダーの群れの中に突っ込んで、そいつらが話しかけてくるんだよ! シリンダーが、それも大勢が喋るんで、気持ち悪くてビックリした!」

 自分自身がシリンダーであることを忘れ、顔を赤くして冒険のあれこれを喋りまくる。

「山の向こうには四号のみんなが居るし、早く知らせなきゃと思って急降下して地面にぶつかりそうになって、山の木や草に掴まりながらスピードを落として……気がついたら、手や足みたいなのが出てきて、それでも、うまく停まらなくて、あちこちぶつかってビュンビュン飛んでるうちに、みんなのところに出てきてしまったの」

「それで、ヨタついていたんだな」

「そしたら、みんなが亀の化け物みたいなのにやられそうになっていて、それで、突っ込んだら……やっつけられたんでビックリした!」

「しかし、あの力はすごかったぞ!」

「フフ、あれは無意識のうちに我が闇の力をチャージしてやっていたのだ、ポチはすでに我がリトルデーモンなるぞ」

「あ、それはない」

「ポチ、試しに、あの木をへし折ってみろ」

「ラジャー!」

 タングリスが示した木を見るや、一瞬のタメで突っ込んでいった。

 セイ!  ゴッチン!

「アイターーーー!」

 大きなタンコブを作っただけで、ヨタヨタとかえってくる。笑える状況なのだが、だれも笑わない。ロキなどは、ポチを抱え上げて、涙を流している。

「ポチ、おまえは、あの図体のでかい玄武の鼻先目がけて突っ込んでいったんだぞ」

「ただの成り行きか?」

「あ……えと……攻めるんだったら、あそこだなあって……思ったのかも……よく分かんない」

「ひょっとして……ポチにはアナライズの力があるんじゃないかな?」

「でも、今の木はヒビも入らなかったし」

「ひょっとしたら……ここ一番という時にしか目覚めない力なのかもな」

「よし、我が魔力によって、力を定着してやろう」

「いいから、行くぞ」

 ポコン

「あいた! ブツことないだろ! タングリス、なんか言ってやれよ」

「見ておりませんでした」

「プン、では出発するぞ!」

 履帯の修理の終わった四号に乗り組み、タングリスがイグニッションキーを回した。

 

 ブルン ブロロロローーー

 

 後ろのエグゾーストから黒い煙が噴き上がり、ブルンと四号が身震いする。

 機嫌のいいポチは、言われなくてもスパナを抱えて見張りの任務に戻る。

 カンカンカンカン!

「どうした!?」

「ストップストップ! 町長さんが! 町長さんが……!」

 ガックン

 動き出したばかりの四号はつんのめるようにして停車した。

 

 

☆ ステータス

 HP:9000 MP:5000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)
 装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 
☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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