大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・017『開けてビックリ!』

2023-04-09 10:09:10 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

017『開けてビックリ!』   

 

 

 ちょっと後ろ向いて。

 

 家に帰るなり、玄関先でお祖母ちゃんが「ただいま」を言う間もなく命じる。

「え、なんか憑いてんの!?」

 小学校の時、いつもとは違う道を通って帰ってくると、これをやられた。

 古いお屋敷が珍しくって、しばらく眺めて帰ったんだけど、その時にいけないものが憑りついたみたいで、そうやって祓ってくれた。

 バシーン!!

「イタイ(*◇*)!」

「よし、これでいい」

「なにが憑いてたの? メッチャ痛かったんですけど」

「憑き物じゃないわ、防御力を上げておいたの」

「防御力ぅ?」

「あの70年代はメグリと相性が良すぎる感じがしたんでね、ボーっとしてると、良からぬものと出くわす気がする。まあ、予防注射」

 良からぬものと言われて10円男の加藤高明の顔が浮かんだ。

 フルフルと首を振って自分の部屋に……張り紙がしてある。

 

――5時まで立ち入り禁止――

 

「バレサン焚いてるの、終わるまでリビングに居て、あと5分ほどだから」

「ああ……(-_-;)」

 バレサンは殺虫剤ではない、漢字で書くと『破霊散』、見た目も使い方も殺虫剤と同じだから、人が来ても怪しまれない。外出とかで着いてきた妖とかが、はびこらないための予防剤。

「やっぱり、なにか連れて帰っちゃった?」

「わたしもね、入学式でいろいろ拾ってきたみたいで」

「あ、あの若作り!?」

「ちょっと座んなさい」

「え、うん」

「高校生にもなったことだから言っておくけど、メグリの中にも魔法少女の血は流れてる」

「うん、あ、はい……」

「気軽に、あの70年代に飛び込んだけど、微妙に瘴気が高い。わたしの若作りはダテじゃないのよ。魔法少女の気を高めると若くなる。つまり、現役だったころのアビリティーを呼び覚ますと若くなるの」

「え、あれ、ディフエンスのためだったの!?」

「ディフエンスだけじゃなくオフェンスのためにもね。魔法少女が少女であるのは、つまりそういうこと」

「はい」

「メグリには、そういうこと教えてないから、もしもの時は、潜在能力をフル稼働させないとも限らないから」

「フル稼働すると、どう……なるの?」

「どんどん若くなる」

「魔法幼女とか(^▽^)!」

「幼女で済めばね」

「え……」

「強力な力は使えるけど、若くなりすぎて存在が消えてしまう」

「そうなの……」

「だから、常人としての防御力だけ上げておいたの。反射力とか打撃力とかの身体能力。あくまで、人間としての能力だから、基本は危ないところには行かない、近づかないこと」

「はい」

「まあ、お茶でも淹れよう、向こうで今川焼き買ってきたから」

「あ、一個20円!」

 初日に見つけて、まだ買ってないアレだ!(005『1970年のこんにちは』)

「それと……学校から書類とかもらってきてない、入学の前後っていろいろあるから」

「あ、そだ!」

 入学式でもらったあれこれ、部屋に置きっぱだ!

「あ、ちょ……」

「もう5分経ったでしょ……ウワ!」

 

 ドアを開けて後悔した。

 

 六畳の部屋には、妖や化け物の幼体、それがムクロになってゴロゴロ転がっていた。

 急いで窓を開ける。

 サッと四月の風とお日様の光が入って来て、ムクロたちは蒸発するように消えていった。

 こういうのは普通の人間には見えない。瞬間、自分の血を呪ってしまった。

 

 そして、四月九日。

 

 今日から本格的な高校生活が始まる!

 そう思ったら緊張して、朝礼前にトイレに行く。

 女子トイレは階段のすぐ横、で、入ってビックリ。

 ある意味、自分の部屋を開けてムクロたちに怖気を振るったよりもビビった!

 八つある個室のどこを開けても洋式が無い! 

 

 ぜんぶ和式なんですけど!

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田 博子             1年5組 クラスメート
  • 加藤 高明             留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館

 

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RE・かの世界この世界:063『ペギーとの再会』

2023-04-09 06:39:24 | 時かける少女

RE・

63『ペギーとの再会』テル  

 

 

 ケイトの石化を解いてやると金の針が無くなってしまった。

 
「面倒だが、車外に出る時は必ずゴーグル着用だ。車内でも覗視孔から外を見る時はゴーグルだ。石化しても直しようがないからな」

「メデューサなんて聖戦以来だな」

 タングリスの注意に応えながら、タングニョーストはアクセルを踏む。

 ブルンと身震いして四号は再び走り始めた。

「来るときは、強敵だったがシリンダーと融合体に出会っただけだった。プレパラートとかメスシリンダーだとか、クリーチャーが多すぎないか」

「主神オーディンの力が弱っているのかもしれない、心して進まなければな」

「下手をすれば、また戦争が始まるかもしれない……」

「あれ、真っ赤に錆びついてるよ……」

 ペリスコープから先ほどの戦車を見てケイトが呟く。わたしも意外だ。メデューサのとは言え、戦車兵のナリで少女は転がり出てきたのだ。当然生きた戦車だと思う。

「メデューサは、廃墟や残骸を依り代にして現れるんだ。戦車そのものは先の聖戦で撃破されたスクラップさ。ムヘン川沿いは激戦地だったから、あちこちに残骸がある」

「あ……変なオバサンが居た」

 ペリスコープを覗いたままロキが呟く。

「オバサン?」

「メデューサか!?」

「違うと思う、ニコニコしていたし、大きな荷物を担いでいた」

「どこにいた?」

「草が少し禿げたとこ」

「タングニョースト、戻ってみてくれ」

「了解」

 グィーーーーーーーン

 四号が遊園地のコーヒーカップのように回れ右をした。超進地旋回というやつだろう、ちょっと目が回る。

 戻ると、そのオバサンは道の真ん中に出てきて陽気に手を振っているではないか。

「あ、ペギーだ! 出ていい? いいよね!」

 ろくに返事も聞かないでケイトが飛び出して、わたしたちも続く。

 


 オバサンは、始りの荒野で店を開いていたペギーだ。

 


「ペギ―、夜逃げでもするのか?」「重そうだな」

 知り合いらしく、タングリスもハッチを開けた途端に声をかけている。

「行商に出た方が儲かりそうな気がしてね」

「まあ、ちょうどよかった、少しばかり金の針が欲しい」

「おや、あれ以来だけど、あんたらもたくましくなったね。その子は?」

「ああ、わけあって預かってるんだ」

「そうかい、まあ、旅は賑やかな方がいいさね。で、金の針は使いきっちまったのかい?」

「ああ、一本も無い。ついさっきメデューサに出くわして、その坊主が間近で目を見ちまったんでな」

「メデューサ……やっぱ、復活したんだ(⌒∇⌒)」

「嬉しそうに言うなよ」

「少しは女らしい喋り方をした方がいいよ、ちゃんとしたナリをしたらいい女なのにさ」

「軍人に性別はない」

「ああ、トール元帥の副官なんかをしてちゃなあ」

「ポーションも少し欲しいんだ、1000ギルで買えるだけくれ」

「1000ギル? しみったれてるねえ」

「あれから稼いでないんでな」

「ウィンド開いてごらんよ、もっと貯まってるはずだよ」

「あ、そんなものがあったね……」

 
 日々のことに追われて、しばらくご無沙汰のウィンドを開いた。

 HP 2500  MP 1200  所持金 8500ギル

 
「すごい、いつの間に?」

「ステータスはこまめにチェックしなきゃ。これだけあるなら石化防止の指輪も買っときな、一個1000ギルに負けといてやるよ。おや、四号に六人も乗ってるんだ、リクライニングシートにして、エキストラシートも付ければ快適になるよ」

「とても、そこまでのギルはないよ」

「消耗品以外はリポ払いにすればいいさ」

「リポ払いってなに?」

 ケイトが身を乗り出す。

「リボ払いみたいなもんじゃないか?」

 前世の知識が蘇る。

「冒険者の予測経験値で組めるローンみたいなもんさ。あんたたちは前途有望だから……10万ギルまでいけるよ」

「え、すごいじゃん!」

「うんうん」

 ロキが目を輝かせ、ケイトがウキウキしてペギーのペースになっていく。

 ロキを除く五人のリポ払いで80000ギルも使わされてしまった。

「あんたらには武器も売りつけたかったけど、トール元帥の技物を持っていたんじゃねえ。お、坊主、珍しいもの持ってるじゃないか!」

 ペギーに目を付けられ、ロキは後ずさりする。

「シリンダーの幼体が人に懐くとは珍しい! 売りなよ、20000ギルで引き取るよ!」

「やだ、ポチは売り物じゃねえ!」

「残念、売りたくなったら、いつでも言っとくれ。必要な時、必要な所には現れるからさ。ところで……」

 
 それから一時間以上喋って、ペギーと別れた。タングリスたちとペギーの話は半分も分からなかったが、互いに情報を交換できて有意義だった。

 

 明日にはノルデン鉄橋に着けそうだ。

 

☆ ステータス(買い物を終えて)

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ            無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス             トール元帥の副官 グニ(タングニョースト)と共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 グニ(タングニョースト)と共にラーテの搭乗員 グリの相棒 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

    二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
  中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
  志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

 

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