大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・018『オリエンテーション』

2023-04-15 13:08:55 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

018『オリエンテーション』   

 

 

 和式にビックリしたあくる日は対面式から始まった。

 対面式っていうのは、新入生が二三年生に初めて会って、まあ、挨拶する儀式。

 

 教室で担任の藤田先生から対面式を含む一日の説明を聞いて体育館へ。

 と、その前に本館前でクラスごとに並ぶ。

 体育館には、すでに二三年生が離任式を終えて待機しているので、その列の中に速やかに整然と入っていくためらしい。離任式っていうのは、この春で退職したり転勤した先生が生徒にお別れを言う儀式。新入生には関係ない。

 

 わ(*o*)!

 

 フロアに踏み込んでビックリ。

 モーゼの出エジプト記で海が割れるみたいにフロアが開いている。

 二三年が脇に寄って、その真ん中に一年生が入っていく。

 両側からメッチャ視線を感じる。いや、視線以上、もう圧だね。

 それに狭い!

 一学年8クラスで400人近く、その三倍だから……1200人くらい入ってるんクソ狭い。

―― まるでガクトシュツジンだなあ ――

 男子の中から呟きが漏れる。ガクトシュツジンってなんだ? 格付けクイズのチャンピオン?

 上級生からの視線、大半は男子の二三年から。

 

『新入生代表挨拶』

 

 マイクの声で「ハイ」と声が上がって賢そうな男子がステージに上がり、紙に書かれた『挨拶の言葉』を読み上げる。

 なんか、まさに読み上げる。国語の時間に当てられて教科書読んでる感じ。

 ロコの話では、入試で最高得点をとった者がやらされるんだって。

 そう言えば、今朝はロコの顔見てない。チラリと横を見ると三人向こうにロコの横顔。なんか眠そうに視線を落としてる。

 あっという間に終わって、生徒会長が歓迎の言葉。

「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます」

 さすがは生徒会長、紙もメモも読まないでマイクに向かうんだけど、これも印象に残らない。

 話がヘタってだけじゃなく、そもそも、ギューギュー詰めなんで集中力がもちません。

 

 ガラガラガラ シャーー シャーー

 

 なんかガラガラヘビでも出たのかって音がしたと思ったら、先生がギャラリーに上がって窓とカーテンを開けている。

 とたんに頭のモヤモヤが消える……酸欠だったわけ?

 

『対面式は、これで終わります。二三年は教室に戻って二限から授業、一年は引き続きオリエンテーションをやります』

 

 ホォーーーーーーーー(o´д`o)

 

 明らかに――解放されたあ――的なため息、ため息も二学年分まとまると、ちょっと迫力。

 二三年は出ていったし、窓も開いて爽やかな風も吹きこんでくるんだけど、やっぱり眠い。

「ちょっと、みんなでノビしようか!」

 藤田先生がマイクを通さない地声で提案。

 この切り替えは上手いよ。

 地声が新鮮だし、ノビは効くと思う。

「ウ~~~~~~~~~~~~~~ン」

 背伸びするようにノビをすると、わたしたち生徒もフロアに座ったままノビをする。

 前に立ってる先生たちも「ウ~~~~~~~~~~~~~~ン」とノビをする。

 

 あ( ゚Д゚)!

 

 仕事の都合なんだろう、ジャージを着ていた四組担任の花園先生がつま先立ちで精いっぱいノビ。

 で、ジャージの上が上がっておへそが覗いてしまう。

 先生も気づいて、すぐにジャージの上を引き下ろす。もう、顔が真っ赤。

 なんか、そのアタフタが面白くて、四組の生徒たちから笑いが漏れる。

 ああ、四組はいいクラスになるだろうなあ。

 うちの藤田先生はセサミストリートの眉毛でポーカーフェイス。

 こういう時の反射は鈍いみたい。

 

 それから、いろんな先生が『新入生心得』を基にあれこれレクチャーしてくれる。

 だけど、ちっとも頭に入らない。

 せっかくノビですっきりした脳みそが緩んでくる。

「実際行ってみないと……」

 女子の呟きで目が覚める。

 心得の校内案内図を示しながら担当の先生が説明の真っ最中。

 ああ、確かに習うより慣れだよね。

 フワァ~~

 前で男子がノビしてる。あの頭は留年坊主の加藤だ。

 あいつは、二年目だもんね、学校施設なんて自分ちみたいに知ってるよね。

 

 で、やっとオリエンテーションも終わって上履きを履いて外に。

 

 教室に戻るとロコちゃんが頬杖付いて、ちょっとタソガレている。

 そう言えば、今日は、まだ「おはようも」も言っていない。オリエンテーションじゃ俯いてたし。

「どうかした、ロコちゃん?」

「ああ、メグさん、どうしよー!」

「え、なにかアクシデント?」

「アクシデントもアクシデント! マンモス級のアクシデントですよ!」

「え、なになに(^_^;)?」

「ビートルズが分裂したんですよ!」

「あ、え?」

 ビートルズという単語に、すぐにはピンとこない土曜の4月11日だった。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田 博子             1年5組 クラスメート
  • 加藤 高明             留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館

 

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RE・かの世界この世界:069『ローゼンシュタット・2』

2023-04-15 06:56:20 | 時かける少女

RE・

69『ローゼンシュタット・2』テル 

 

 

 ローゼンシュタットは町ぐるみバラの海に浮かんでいるように華やかだ。

 
 町の周囲だけではなく、町の中のちょっとした空き地にも花壇があって、色とりどりのバラが咲き誇っている。

「ようこそ! ローゼンシュタットへ!」「ブリュンヒルデさま!」「いらっしゃいませ!」

 歓待の声に目を向けると、家々の玄関先や窓辺にもバラの鉢植えやフラワーポットがひしめいている。

 町の中央は広場になっていて、居並ぶ人々によって、我々の四号は誘われていく。

「すごいバラの香り!」「バラだらけだ!」

 広場の噴水の飛沫が飛んでくると、それにもバラの香りがして、ケイトもロキも無邪気に喜んでいる。

 ロキがハッチから身を乗り出すので、ポチも飛び出してロキの周囲を飛び回る。ポチは幼生とは言えシリンダーなのでマズイと思ったが、可愛いシリンダーだと、町の人、とくに子どもたちには人気だ。

「ローゼンシュタットのバラは、この世の始まりに神さまがおつかわしになったという伝説がございます」

 溢れるようなバラに圧倒されている我々に、ミュンツァー町長が説明してくれる。

「バラをおつかわし?」

 人間っぽい言い方に、ヒルデが興味を持つ。

「はい、このムヘンの島が主神オーディンのご加護を被る以前の事、神のご加護を待てずに住み着いた我々の先祖を憐れに思召して、遣わされたのが、プリンツェシン・ローゼン、つまりバラの姫君でありました」

「待て、話の腰を折って悪いが、我が父オーディン以前の神とはなんだ? 父オーディン以前は、この地上はカオスであったはずだが」

「はい、オーディン歴2000年までは公にすることははばかられておりましたが、2000年紀に入って二十年。もう、お話いたしてもよろしいでしょう……始原の神もまたオーディンと申されました」

「父以前に?」

「はい、始原神オーディンは地上をカオスにでしか保持できなかったことを残念に思われて、名乗りを憚られました。その後、英気溢れる智謀の神が現れたので、その神を実の息子のように思し召し、始原神はオーディンの名をお与えになったのでございます」

「それが、父であると申すのか?」

「いかにも。始原神オーディンは、自分の加護が及ぶ前にムヘンの地に住み始めた人間たちを気にかけておられました。そこでプリンツェシン・ローゼンをおつかわしになったのでございます。神の系図で申し上げますと、ブリュンヒルデさまの義理の叔母にあたる女神さまでございます」

「叔母君にあたる女神か……」

「しかし、地上のカオスは姫のお手にも余ります。はじめは、このローゼンシュタットを足場にムヘンを平らかにしようと意気込んでおられましたが、とても叶わぬとお悟りになりました。一年かけて町と町の周囲を平穏に収めても、明くる年には元のカオスに戻ってしまいます。姫は、永久に町を護りムヘンに祝福を与えるには、その身をバラに変え、毎年数多のバラとして生まれ変わって守るしかないと決心なさったのでございます」

「素敵な話だ……!!」

 わたしたちも素敵に思ったが、ヒルデは過剰なほどに目を潤ませている。自分の境遇と重なってしまうんだろう。タングリスが愛しむような眼差しで後ろに立っている。

 どうも、我々が知らない秘密がある……ような気がするが、当人たちが言わない限り聞いてはいけないような気がした。

 
 町長が話を締めくくると、広場の奥まったところ、ひときわバラの植栽が行き届いた家が灯りに照らし出されて際立った。際立ち方は始まりの草原でペギーの店が現れた時に似ているが、ネオンサイン等の電飾が一切なくて、とても上品だ。

「とりあえずは、あの迎賓館でおくつろぎください」

 町長が手を広げて誘うと、広場に集まった人たちが迎賓館までの道を開けてくれる。 

 迎賓館といっても二階建ての民家風なのだが、背丈が高く、使ってある建材や手入れのされ方に念がいっている。

「実は、明日が四年に一度のプリンツェシン・ローゼンの降誕祭なのです。ことしの降誕祭にはオーディンの姫君が訪われると予言されたのです」

「予言?」

「はい、町の司祭であり一級魔導士であるゼイオン様が……」

 町長が対面の教会を示すと、オボロな人影が浮かび上がり、数秒で白髪に白の法衣を着た老人の姿になると、人々に祝福を与えながら迎賓館の前に至った。

 オオ……!!

 感嘆と畏敬のこもったどよめきが広場を満たし、

「初めてのお目通りの栄に浴します。ローゼンシュタットの司祭職を務めておりますゼイオン・タングステンでございます」

 静かに寄ってくると、ゼイオンはブリュンヒルデの前で片膝をついて名乗り、ごく自然にヒルデの手にキスした。

 なんだか、有名な宗教絵画を見ているように、広場は厳かな空気に満ちた……。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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