大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・155『邂逅する者たち・3・スロットル』

2023-04-06 15:46:34 | 小説4

・155

『邂逅する者たち・3・スロットル』越萌マリ(児玉元帥) 

 

 

 なんだ、付いてこないのか。

 

 パルスバイクの側車を示すと、孫大人はニヤリと笑った。

「命が惜しい」

「満州じゃ地平線の向こうまで馬を走らせた仲じゃないか」

「何十年前の話アルカ」

「そうだな、あの頃、俺は新米の中隊長。大人は西域公司の五番番頭……」

「四番番頭アルよ、それに、勝ったらグランマが一晩付き合ってくれるって話だったアル」

「そうだったのか。勝ちを譲ってやるんじゃなかった!」

「あれは、実力アル! それに、一晩付き合ってやらされたのは、超アナログな帳簿の整理だったアル」

「アハハ、そうだったな。じゃあ、今度も西之島のロジスティクスは頼んだぞ」

「任せろアル。大事なお得意様アルからなアル!」

「だから、その変な中国語はよせ」

「普通に喋ったら泣きそうだ、劉宏は簡単な相手じゃない。なんだか、今の児玉はあの戦いの前日、北大街で会った時のようだぞ」

「それは、孫悟兵、貴様もいっしょだ。これから漢明と付き合うには悟兵みたいな奴は欠かせんからな。お互い命は大事にしよう」

「お、おお」

「元帥、そろそろ……」

「ヨイチ、貴様は残ってくれ」

「は?」

「ヨイチは、俺とは別に仕事があるような気がする。まあ、作戦会議までには戻る」

「お気をつけて」

「ああ、俺も一人で決戦するつもりはないからな。では!」

 

 ウィーーン

 バイクのスロットルを上げる。

 レトロな表現ではナナハンの倍ほどの馬力のあるバイクだが、パルスエンジンなので馬力に相応しい爆音がしない。

 やはりオートホースの方が身には合っている。馬腹を蹴って瞬発。瞬発して人馬共にアドレナリンが沸騰するような感覚が懐かしい。

 下方四時の方向から同型のパルスバイクが追って来る。

 シュィーーーン

 高度を下げて横に並ぶと、さっきブンカ―で出会ったラボのメグミ所長だ。

「どこに急いでいるのかしら?」

「あ、越萌さん」

「救急ね?」

「ええ、危篤状態のロボットのパルス半導体を交換してあげたいんですが予備が無くて……」

「負傷したロボットから部分的な移植をすれば……あ、型式が?」

「はい、ポーランド式で、漢明の……」

「戦死体から取る?」

「それよりも古いんです。敵の舟艇やパルス機に組み込まれているので、それを挑発に行きます」

「西部海岸に押し寄せてきた部隊ね」

「はい、撃破されて擱座しているものから頂きます」

「そう……分かった。南部で陽動攻撃を加えるわ。そう……三十分でいいかしら?」

「危険です! 南部は敵が集中しています、劣勢になりつつはありますが、まだまだ健康な部隊も存在しています!」

「じゃあ、強行偵察をやるまでよ!」

 

 ブィーーーーーーン!!

 

 つい馬のつもりになってボディーを蹴ると、思いのほかの爆音でパルスバイクは飛び出した。

 

 

 ☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
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RE・かの世界この世界:060『Cアラーム』

2023-04-06 06:48:03 | 時かける少女

RE・

60『Cアラーム』テル  

 

 

 前にも触れたが、ムヘンは菱餅の形をしている。横に長い◇(菱形)と言ってもいい。

 

 菱形の、ほぼ真ん中を東西に流れているのがムヘン川。

 ムヘン川の真ん中と西の端に玉がぶら下がっている。

 真ん中の大きいのが城塞都市ムヘンブルグ。西の小さいのが今朝まで居たブァイゼンハオス(孤児院)があるシュタインドルフ。

 そのシュタインドルフとムヘンブルグを結ぶ川沿いの道を東に向かっている。ノルデン鉄橋を渡って北辺の港ノルデンハーフェンを目指しているのだ。

 何事もなく進んで行けば、ノルデン鉄橋までは三日の行程だ。

 二号戦車の倍ほどの広さのある四号戦車の車内だが定員五人のところを子どものロキを入れて六人が乗っている。

 大きいと言っても戦車だ。長距離バスのように休憩用のベッドも無ければ、シートがリクライニングになっているわけでもない。

 

「……お尻が痛い」

 

 主砲の尾栓の下で声がする。

 ロキが情けない顔をして中腰になっている。

「振動で、お尻の骨がバラバラになりそうだよ」

「辛抱しろ、ノルデン鉄橋までは油断できないからな」

 砲手席から声を掛ける。

 ちなみに車内の配置は、車長・タングリス、操縦手・タングニョ-スト、砲手・テル、装填手・ケイト、通信手・ヒルデ、そして車長の足元でロキが膝を抱いてしゃがんでいる。

 来るときにシリンダー融合体に襲われた。なんとか切り抜けたが、いつ襲われるかしれないので、うかつに車外には出られないのだ。それに、襲ってくるのはシリンダーとその融合体とは限らない。ムヘンには主要街道沿いだけでも九十九種類のクリーチャーが確認されているという。

「ん……?」

 ロキの尻の方で動くものがある。ロキも気づいて後ろを見ると、シリンダーの幼体であるポチがスリスリしている。

「ポチ……そうか、お尻が痛いから撫でてくれているんだな……」

 ロキがしみじみ言うと、ポチがこころなしポッと赤くなったような気がした。

「ごめんよポチ、気を使わせちまったな。いいよ、おかげでマシになった」

 ロキがやせ我慢を言うと、ポチはロキの頬に回ってスリスリする。

 尻のマッサージよりも効き目があるようで、ロキはくすぐったそうに目を細めている。

 

 ピピピピ ピピピピ ピピピピ

 

 突然アラームが鳴った。

「できた!」

 通信手席のヒルデが声をあげる。アラームはヒルデの手元からしている。

「なにをしてるんだ?」

 車内の視線がヒルデに集まって、バレンタインチョコを上手く作れた女子中学生のような笑顔で振り返る。その手には、スマホみたいなのが掲げられている。

「クリーチャーアラームを作ったんだ! 略してCアラームだ!」

 なるほど、ピピピのアラームはヒルデの手元のそれから発している。

「てことは、間近にクリーチャーが(; ゜゜)!?」

 ケイトが足を上げてアタフタする。

「ポチに反応したんでしょ」

「「ポチは除外しておいてください」」

 車長と操縦手のシートから声がする。ヒルデが数回画面を操作するとアラームは消えた。

「ポチは、別の登録にしておいた」

「え、どんなの?」 

 乗り出したロキの鼻先のポチにCアラームが突き付けられる。

 
 ポチポチ ポチポチ ポチポチ

 
 これは分かりやすい、車長席のタングリスまでが笑っている。

 タングリスは、笑うと意外に可愛い……思ったが言わない。

「じゃ、Cアラームが鳴らないのを確認して休憩にしよう」

 
 ヒルデがOKサインを出して、四号は停車した。

 ガチャリ

 一斉に五か所のハッチを開ける。

 うーーーーーん

 思わずのびをして、深呼吸したくなるような新緑の空気と日差しに生き返る五人であった。

 

 見上げた空には、我々同様に東を目指す雲たちがゆっくりと流れていた。

 

☆ ステータス

 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)     二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)   今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス        トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係
 ロキ           ブァイゼンハオスの戦災孤児
 ポチ           ブァイゼンハオスの子どもたちが飼っていたシリンダーの幼生

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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