せやさかい・401
ヘルメットを被って一週間。
初日は自転車を降りて戸惑った。
「どないしょ?」
自転車を降りると、とたんにヘルメットは邪魔。
ヘルメット被って電車に乗るわけにもいかへん。
「持って行こうか?」
持っていけんこともないけど、満員電車では気が引けるし、きっと迷惑。校門入るとこで生指の先生に呼び止められそうやし。
さくらちゃ~ん! 留美ちゃ~ん!
お店の方から声がかかったんでビックリ!
瑞穂さんが亡くなってからずっと閉めてたはずのハンゼイが開いてる。
で、開けたドアから、檀家の早川のお婆ちゃんがオイデオイデしてる。
「あ、おはようございます!」
「お婆ちゃん、そのかっこう!?」
早川のお婆ちゃんは、瑞穂さんが着てたんと同じコスで、あっぱれ喫茶店の超ベテランフロア係り!
「若いころ、ミナミの喫茶店で働いてたさかいなあ」
あとは言わんと、ニッコリ笑って手を出す。反射的にヘルメットを渡す。
「入り口入ったとこに掛けとくさかい」
「ありがとう!」「ありがとうございます!」
檀家さんとはありがたいもんです。
それにしても、檀家のお婆ちゃんらは元気です(^_^;)。
「早川のお婆ちゃん、10歳くらい若く見えたね」
「アッカンベ48やし!」
「あはは、そうだね」
「ま、気ぃつけていっといでや」
「「いってきまーす」」
早川のお婆ちゃんはAKBは知らんかったけど『会いたかった』とかは知ってた。BGM的に耳に入ってたんやろね。
そんで、ハンゼイのマスターの苦境を知って、昔取った杵柄で話つけてんわ。
それから一週間。
新学年も半月たって、すっかり日常モードで校門の見える角を曲がった。
「「え?」」
二人そろって驚いた。
校門からバスが次々に出ていく。
「一年生の子たちだよ」
「遠足?」
「いや、宿泊学習だ」
気が付くと、横をソニーが歩いてる。
「おはよう、ソニー」
「ああ、おはよう。さくらたちは無かったんだろ宿泊学習?」
「行きたかったあ!」
「あはは、コ▢ナだったからね」
「宿泊学習て、どこに行きやるんやろ?」
「神鍋という話だぞ」
「え、神鍋言うたらスキー場やんか!」
「いまは四月だぞ」
「あ、せやった(^_^;)」
「留美ちゃん、クラスには慣れたか?」
「え、あ……うん」
「園田先生は気は効かないが面倒見のいい先生だ。日ごろからコミニケーションを忘れないことだな」
あいかわらずの軍人口調やけど、人のことよう見てる。
「じゃあ、今日は日直だから先に行く」
「「うん」」
スタスタと先に行くソニーを見てると、なにかせんとあかんような気になってきた。
「よし、散策部でどっかいこか!」
「そうだね、四月になって、まだどこにも行ってないもんね」
校門を潜ると、ちょうど最後のクラスのバスが出ていくとこ。
窓から見える一年生たちは楽しそうな子やら不安そうな子、早くも寝てる子。
元気そうな中にも緊張感があって、一年前の自分らの姿と重なった。
☆・・主な登場人物・・☆
- 酒井 さくら この物語の主人公 聖真理愛女学院高校一年生
- 酒井 歌 さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
- 酒井 諦観 さくらの祖父 如来寺の隠居
- 酒井 諦念 さくらの伯父 諦一と詩の父
- 酒井 諦一 さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
- 酒井 詩(ことは) さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
- 酒井 美保 さくらの義理の伯母 諦一 詩の母
- 榊原 留美 さくらと同居 中一からの同級生
- 夕陽丘頼子 さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
- ソフィー ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
- ソニー ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
- 月島さやか 中二~高一までさくらの担任の先生
- 古閑 巡里(めぐり) さくらと留美のクラスメート メグリン
- 百武真鈴(田中真央) 高校生声優の生徒会長
- 女王陛下 頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
- 江戸川アニメの関係者 宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)
- さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)