大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・401『早川のお婆ちゃん 一年の宿泊学習』

2023-04-18 09:40:38 | ノベル

・401

『早川のお婆ちゃん 一年の宿泊学習』さくら   

 

 

 ヘルメットを被って一週間。

 

 初日は自転車を降りて戸惑った。

「どないしょ?」

 自転車を降りると、とたんにヘルメットは邪魔。

 ヘルメット被って電車に乗るわけにもいかへん。

「持って行こうか?」

 持っていけんこともないけど、満員電車では気が引けるし、きっと迷惑。校門入るとこで生指の先生に呼び止められそうやし。

 

 さくらちゃ~ん! 留美ちゃ~ん!

 

 お店の方から声がかかったんでビックリ!

 瑞穂さんが亡くなってからずっと閉めてたはずのハンゼイが開いてる。

 で、開けたドアから、檀家の早川のお婆ちゃんがオイデオイデしてる。

「あ、おはようございます!」

「お婆ちゃん、そのかっこう!?」

 早川のお婆ちゃんは、瑞穂さんが着てたんと同じコスで、あっぱれ喫茶店の超ベテランフロア係り!

「若いころ、ミナミの喫茶店で働いてたさかいなあ」

 あとは言わんと、ニッコリ笑って手を出す。反射的にヘルメットを渡す。

「入り口入ったとこに掛けとくさかい」

「ありがとう!」「ありがとうございます!」

 檀家さんとはありがたいもんです。

 それにしても、檀家のお婆ちゃんらは元気です(^_^;)。

「早川のお婆ちゃん、10歳くらい若く見えたね」

「アッカンベ48やし!」

「あはは、そうだね」

「ま、気ぃつけていっといでや」

「「いってきまーす」」

 早川のお婆ちゃんはAKBは知らんかったけど『会いたかった』とかは知ってた。BGM的に耳に入ってたんやろね。

 そんで、ハンゼイのマスターの苦境を知って、昔取った杵柄で話つけてんわ。

 

 それから一週間。

 新学年も半月たって、すっかり日常モードで校門の見える角を曲がった。

 

「「え?」」

 二人そろって驚いた。

 校門からバスが次々に出ていく。

「一年生の子たちだよ」

「遠足?」

「いや、宿泊学習だ」

 気が付くと、横をソニーが歩いてる。

「おはよう、ソニー」

「ああ、おはよう。さくらたちは無かったんだろ宿泊学習?」

「行きたかったあ!」

「あはは、コ▢ナだったからね」

「宿泊学習て、どこに行きやるんやろ?」

「神鍋という話だぞ」

「え、神鍋言うたらスキー場やんか!」

「いまは四月だぞ」

「あ、せやった(^_^;)」

「留美ちゃん、クラスには慣れたか?」

「え、あ……うん」

「園田先生は気は効かないが面倒見のいい先生だ。日ごろからコミニケーションを忘れないことだな」

 あいかわらずの軍人口調やけど、人のことよう見てる。

「じゃあ、今日は日直だから先に行く」

「「うん」」

 スタスタと先に行くソニーを見てると、なにかせんとあかんような気になってきた。

「よし、散策部でどっかいこか!」

「そうだね、四月になって、まだどこにも行ってないもんね」

 

 校門を潜ると、ちょうど最後のクラスのバスが出ていくとこ。

 窓から見える一年生たちは楽しそうな子やら不安そうな子、早くも寝てる子。

 元気そうな中にも緊張感があって、一年前の自分らの姿と重なった。

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       中二~高一までさくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん) 小鳥遊先生(2年3組の担任) 田中米子(米屋のお婆ちゃん)
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RE・かの世界この世界:072『ローゼンシュタッテンの儀』

2023-04-18 06:08:29 | 時かける少女

RE・

72『ローゼンシュタッテンの儀』テル 

 

 

 いつまでこのナリでいなければならないのだ……(-_-;)

 まったく……(-_-;)

 
 わたしとタングリスの思いは同じだ。

 夕べは試着と言うことで、ほんの十分ほどで解放されたが、今朝はプリンツェシン・ローゼンの降誕祭本番。

 顔を洗うと、すぐに昨夜のフランス人形のようなナリにされてしまった。

 ロキとケイトはハローウィンの仮装のように喜んでいる。ヒルデは日ごろのナイトメア設定とは違う赤バラのドレスに戸惑いはあるが、まんざらでもない様子で、朝食のベーコンエッグにナイフを入れている。

「食べておかないと夕方までもたぬぞ」

「食べてからの着替えにしてほしかった」

「こうコルセットを締め上げられては……レンジャーの訓練の方が百倍もましです……」

 タングリスの判断でパンは残すことにして、ベーコンエッグとサラダ、バナナ一本をなんとか胃袋に収めて本番に臨む。

 
 パパパパーン! パパパパーン! パパパパーン!!

 
 出迎えの時の三倍ほどの花火が上がって、パレードが始まった。

 そう広くもないローゼシュタットの町だが、時速二キロほどのバラの山車に乗せられ、にこやかに手を振っていると、けっこうな時間に感じられる。

 町の人たちは、わたしたちの衣装ほどではないが、色とりどりのバラをイメージした衣装で沿道に並び立ち、山車が目の前を通ると、そのまま山車の後ろに付いてパレードに加わった。

 人々が喜んでいるというのは一種のエネルギーで麻酔効果があるのだろう、パレードが広場に戻ってくるころには平気になってきた。

 
「それでは、本年のプリンツェシン・ローゼン、ブリュンヒルデ殿下によるローゼンシュタッテンの儀を執り行いまーす!」

 
 ミュンツァー町長が良く通る声で宣言すると、町の子どもたちによって五つのフラワーポッドが持ち込まれた。

「バラの花には、弱きもの悪しきものが一定の割合で咲いてしまいます。見かけは、どのように美しく華やかであろうと、シュタッテン、つまりは剪定いたしませんと、全体としては祝福の力が弱まります。そのシュタッテンを姫にお願いいたします」

 ゼイオン司祭が恭しく金の剪定ばさみを差し出した。

「あ、でも、どの花を切ってよいやら、わたしには分からぬが」

「鋏を構えていただければ分かります。むろん、司祭にして一級魔導士たるわたしには見えてはおりますが、聖人、あるいは王家の地を引く方が剪定しなければ効果がありません。さ、鋏を……」

「分かった……お、司祭の言う通りだ、黒く見える花が現れる……ん?」

「いかがなされました?」

「一株抜けているような……」

 町長が役人に、こっそりと聞いている。

「神聖花壇より運ぶ途中で取り落とし、埋め戻した時に抜けたようです。が、一株の事、どうぞ今見えているものをシュタッテンなさってください」

「分かった」

 
 ヒルデは、最初の一株を手に取ると、チョキンと音を立ててバラを選定し始めたのだった。

 

☆ ステータス

 HP:2500 MP:1200 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・35 マップ:4 金の針:20 所持金:500ギル(リポ払い残高80000ギル)
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 荒れ地の万屋ペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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