大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 119『浦島太郎の言い訳・1』

2023-04-22 15:10:16 | ノベル2

ら 信長転生記

119『浦島太郎の言い訳・1信長 

 

 

 トンビに見守られながら鬼ヶ島への道を進むと、いつの間にか海辺に出てきた。

 

 砂浜の背後は崖になっていて、見上げると見覚えのある巨木の上半分が見える。

 巨木は、あの桃の木だ。

 なんだ、ここは村長(むらおさ)の屋敷の裏だったのか。

 よく見ると、崖の上辺は石垣になっていて容易には登れない仕組みになっている。

 石垣に上にはダビット(救命ボートやラッタルの上げ下げに使われる小さなクレーン)があって、船の舷梯のような階段が吊り上げられている。そういうダビットが見ただけで五六個はあって、日ごろは、ここから出入りしている様子だ。

 この階段を上げてしまえば、容易に村には入り込めない。

 我々がここにたどり着くまでは桶狭間を小型にしたような谷があって、うかつに通れば、谷の上から攻撃されて全滅させられる仕掛けになっていた。そこを易々と通ってきた鬼どももなかなかのものだ。あるいは、鬼どもが村の者さえ気づかぬ間道を見つけたか。いずれにしても油断がならない。

『誰かいるわよ』

 あっちゃんが呟いて、再び海岸に目を戻すと、砂浜に引き上げられた小船の陰に人の脚が見える。

『土左衛門かのう?』

『土左衛門なら祀ってあげて、住吉神社が建てられるぅ♪』

「水死体を祀るのか?」

『そうよ、戎とか住吉とかいうのは、流れ着いた土左衛門たちを祀った神社なのよ』

「変な趣味だな」

『神道の常識!』

「であるか……ん?……まだ生きておるぞ」

 漁師の若者のようだが、呼吸に合わせて花提灯が出たり入ったりしている。

 そして、傍らには漆塗りに螺鈿を施した立派な箱が転がっている。

 怪しい奴だ、どこかで盗みを働いて、浜に着いたとたんに疲れと安心で寝てしまったというところか?

 これは場合によっては成敗してやらねばならん。

 俺は、事の大小にかかわらず悪事、曲事には容赦がない。門番の最中に通行人の女をからかった足軽や、俺の留守中に勝手に遊びに行った女どもは、みんな成敗してやったぞ!

『あ、いきなり切ったりしてはならんぞ』

『いま、あんたが持ってる刃物は、このわたしだけなんだから。させないわよ』

「分かっておる、生前の俺とはちがう。とりあえず、起こして事情を聞く。おい、起きろ!」

 ゲシ!

 一発で決まった。

「ウッ、なにすんだ……あ……ああ……乙姫!?」

「乙姫?」

「あ、ごめん、乙姫、これは違うんだ……(;゚Д゚)」

 目が泳いでいる、嘘バレバレ。

 しかし、俺を乙姫と見間違って……こいつ、浦島太郎か?

 平手の爺からいろんなお伽話を聞いたが、浦島太郎の話を聞いた時は腹が立った。

 こいつの話は、徹頭徹尾の現実逃避だ! ろくすっぽ漁にも行かずに竜宮城で無駄な時間を過ごして、それにも飽きて戻ってきたら、村は知らない奴ばかりとか言い訳して、玉手箱をネタにもう一つ言い訳して年寄りのふり。結局一生引きこもった大うつけ者だ!

 こんな奴、生かしておいてはためにならん!

『ちょっと待って!』

 シャキーーーン

 あっちゃんの一言で、周囲の時間が停まった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

RE・かの世界この世界:075『広場の激闘』

2023-04-22 06:15:22 | 時かける少女

RE・

75『広場の激闘』テル 

 

 

 目を見てはならん!

 
 わたしたちと同時に気づいたゼイオン司祭が叫んだ。

「この中にメデューサが紛れ込んでおる!」

 声を出したのが間違いだし、順序も逆だ。

 声に出せば互いに顔を見かわしてしまう。

 瞬くうちに、十数人が驚愕の表情のまま石化してしまった!

 キャーーー! ウワアーー!

 パニックになった。

 しかし、石化した人たちの中央にいる少女がメデューサだと見当は付いた。

 見当が付いたとたんに、メデューサは逃げ惑う人々に混じってしまう。

「逃げろ! 広場から出るんだ!」「しゃがんで目をつぶれ!」

 相反する指示が下される!

 タングリスは歴戦の経験から、司祭は言い伝えられてきたメデューサ対処法からの、とっさの指示を叫んだのだ。

 広場は混乱するばかり、阿鼻叫喚の中を1/3ほどの人々は広場から逃れ、次の1/3ほどは目をつぶってしゃがみ込み、残りの1/3ほどは次々と石化していった。

 メデューサは祭りの衣装を着ているので、同じ年ごろの少女たちと見分けがつかない。あとで分かったことだが、タングリスはメデューサが剪定し損ねた悪いバラと融合したものだと判断していた。

 バラと融合したものなら、植物性のクリーチャーだ。そう遠くには移動できないと考え、町の人々を広場から逃がしてしまえば、被害も抑えられるし、残った一人がメデューサだと判断もできるとふんだのだ。

「そいつがメデューサだ!」

 石化した人たちに混じって静止していたメデューサだったが、折からの風にそよいだ髪で分かってしまった。石化した人間の髪はそよぎはしない。

「どうやって戦うの? こんなナリで、武器も持ってないよ!」

 戦闘も始まらないのにケイトが弱音を吐く。ロキは、そのケイトの陰に隠れて、ポチと共に震えている。

「自分が戦うさまを念じろ!」

 そう言いながらタングリスは戦闘モードに移行して、いつもの戦闘服に得物の鞭を構えた姿に変わった。

「三人とも、タングリスに倣うんだ!」

 そう叫んで、戦いの姿をイメージした。

 ポンと弾けるような感じがして、手にソードの感覚が湧き出してきた。

 視界の端にケイトとヒルデが見える。二人の変身は中途半端で、二人とも弓やソードは持っているが、まとっているのは丈が短くなった降誕祭のドレス、目にはメデューサ除けのサンバイザー、見た目には魔法少女戦隊になった!

 こちらの意気に反応してメデューサも力を貯める。

 シャアアアアア!

 瞳は蛇のように細くなって金色に輝き、髪はウネウネと逆立って、無数の蛇のようにゾワゾワと蠢きだした。

「かかれ!」

 タングリスの号令でメデューサを取り巻くように旋回する!

 グルングルン グルングルン グルングルン グルングルン

 二周目で最初の一撃を食らわせる。

 ピシュ!

 我々も続く!

 ズビャ! ズビュン! バシ!

 三撃立て続けに食らわせるが、メデューサは身軽に躱して、ヒットしたのは、わたしの一撃だけだ。わたしの技量が長けているからではない、やはり、連携した攻撃が大事なのだ。

 ウオーーーー!

 渾身の気迫を込めてソードを振りかぶる。

 振りかぶった手は戦闘服の袖をまとってはいなかった。わたしの変身も不十分なようだ。

 キエーー!

 構わずに喰らわす斬撃!

 ビリ

 服のどこかが裂けた! 構ってはいられない、ヒルデとケイトにアタックを促し、タングリスに連携の目配せをする。

 攻撃は五回に一回ほどしかヒットしないが、メデューサを確実に弱らせていく!

 セイ! トアーーー! ウオーーー! ズビャ! ズビュン! バシ!

 時にメデューサは躱したモーメントを利用して追いかけてくるが、広場の外縁に近くなると、見えないゴム紐に引き戻されるように広場中央に戻ってしまう。やはりバラとの融合体なので、根を張った広場からは出られないのだ!

 タングリスの判断は正しかった!

 十数回アタックして、ようやく、こちらの呼吸も合ってきた。

―― 一斉……! ――

 思念の半分だけ聞いて、四人が同時にアタック!

 ケイトの矢が胸を貫き、わたしの剣とヒルデのツインテールが胴を払い、タングリスの鞭が頭に炸裂した。

 ドゲシ! バシ! ブシュ!

 グエ!

 一瞬空中で静止したようになったかと思うと、次の瞬間、分子結合を失ったようになってメデューサは飛散し果てていった。

 ジャキジャキジャキーーン!

 ☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~☆~

 ステータスが音を立てて上昇した。

 

☆ ステータス

 HP:8000 MP:4000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・100 マップ:6 金の針:20 所持金:1000ギル(リポ払い残高39000ギル)
 装備:剣士の装備レベル20(トールソード) 弓兵の装備レベル20(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

 

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  テルの幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする