大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

巡(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記・016『メグ・ロコと呼び合う』

2023-04-03 20:20:12 | 小説

(めぐり)・型落ち魔法少女の通学日記

016『メグ・ロコと呼び合う』   

 

 

 トキツカサッ……!

 

 はんぱな呼びかけに振り返ると、横断歩道の向こう側に宮田さん。

 わたしと同じ電車だったんだろうか。

 改札出たところで信号が変わりそうだったので、小走り。宮田さんは信号に間に合わなかったみたい。

 やれやれ、信号変わるまで待ってあげよう……と、思ったら、変わったばかりの赤を無視して走ってきた(^_^;)

「おはよう」

「おひゃようごじゃいま……」

「あ、ひょっとして舌噛んだ?」

「あ、いしゃしゃか(^皿^;)」

 トキツカサは微妙に言いにくいんだけど、それに『さん』を付けるとトキツカササンで、サが重なってはっきり言いにくい。

「下の名前でいいよ、メグリとか、中学じゃメグって呼ばれてたし。言いやすいでしょ?」

「いいですね! じゃ、わたひのこともロコって呼んでください!」

「あ、かわいい!」

「エヘヘ(*´σー`)」

「言葉も友だち言葉でいこうよ、愛称でよびあうんだから」

「え、いいんですか!?」

「『いいの!?』でいいよ」

「あ、そっか。じゃ、あらためてよろしく!」

「こちらこそ!」

「5番の男知ってます?」

「5番……あ、出席番号5番!?」

「そう、怪しい5番ですよ」

「先生も無視っぽかったから、最初は幽霊かと思ったわよ」

 改札では10円請求されてたから幽霊なわけないんだけど、本人の態度も周囲の反応も見えてないみたいにシカトっぽかったし。

「あいつ、加藤高明って言って、留年生だって話です」

「留年生!?」

「留年生は入学式には出られない」

「そうなんだ!」

 そうだよね、一年前に入学してるんだもんね。

「ちょっと変なやつって評判です」

「病気とかで……?」

「う~ん、これから調査です」

「あはは、調査しちゃうんだ(^_^;)」

「面白そうなことは、調査しなくちゃいけません!」

「あらら、敬語に戻ってるわよ」

「え、あ、あははは……」

「クセなんだよね。ま、ぼちぼちいこう」

「はい! あ うん!」

「うんうん♪」

 

 電器屋さんの前まで来ると、朝のワイドショーを流している。

 画面は小さくてショボいんだけど、音が大きい。

―― この三日に、ようやく解決したよど号乗っ取り事件で人質になっていた乗務員の人たちが、検査入院を終えて退院…… ――

 え、解決したの遅くない……っていうか、犯人の要求みんな通って、解決ってどうよ?

―― 人の命は地球よりも重いといいますから、まあ、良かったんじゃないですかねえ ――

―― いや、そうですね。では、次のニュースです…… ――

 いつの時代もテレビはいいかげん。

 

「……メグさん?」

「あ、ごめん。つい見入ってしまった(^▽^;)」

 お祖母ちゃんが言ってた、日本のこの対応はあとを引くんだって……。

「わたし、二月におおすみが成功したのには感激しました!」

「おおすみ?」

「あ、日本初の人工衛星」

「え、あ、ああ!」

 度忘れを装ってビックリしておく。

「日本も宇宙時代の幕開け!」

「うん、そうね!」

 令和じゃ新型の打ち上げ失敗したとこなんだけどね。

「知ってました? 2004年になったらアトムが誕生するんですよ!」

「え、ああ、そうなんだ(^_^;)」

「あ、ごめんなさい。ちょっと引いちゃいますよね(;'∀')」

「ううん、わたしこそ疎くって」

 ロコちゃんと付き合うには、そっち系の情報とかも仕入れておかなきゃいけないかもね。

「今日は生徒手帳もらえるんですよね」

「そうだ、やっと定期券買えるんだよね!」

「うんうん、定期通学って、ちょっと夢だったんです(n*´ω`*n)」

「うん、分かるぅ、ちょっと大人って感じ」

「メグさんはどこからですか?」

「奥宮だから、たった二駅なんだけどね」

「ああ、ロコは谷口だから反対方向です」

 谷口……聞いたことのない駅だ。

 いっしゅん反応に困ったけど、ちょうど商店街の放送が『世界の国からこんにちは』を流し始め、いっそう仲良くなった新入生同士、入学式以来最初の学校に向かった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 時司 巡(ときつかさ めぐり)   高校一年生
  • 時司 応(こたえ)         巡の祖母 定年退職後の再任用も終わった魔法少女
  • 滝川                志忠屋のマスター
  • ペコさん              志忠屋のバイト
  • 宮田 博子             1年5組 クラスメート
  • 加藤 高明             留年してる同級生
  • 藤田 勲              1年5組の担任
  • 須之内写真館            証明写真を撮ってもらった、優しいおねえさんのいる写真館

 

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せやさかい・398『もうじき灌仏会』

2023-04-03 11:07:16 | ノベル

・398

『もうじき灌仏会』さくら   

 

 

 山門の桜も盛りを過ぎた。

 

 遠目には分からへんねんけど、近くで見ると、桜の花群れの下に若葉が芽吹いてるのが分かる。

 もう三日もしたら、若葉の方が花群れを圧倒する。

 なによりも、地べたに落ちる花びらの量が多くなってきた。

「全部掃いてしもたらあかんねんで」

 先週、メグリンやらソニーが来てお花見してる頃は、お祖父ちゃんは、こない言うてた。

 花びらにしろ落ち葉にしろ、全部掃いてしもたら風情が無いらしい。

 それが、四月三日の今朝は、掃いてる尻から花びらが降ってくる。

「まあ、こんなもんやろ。キリないし」

「そうかな、もういいかな?」

「ええよ、もう行っといで(^▽^)」

「あ、うん。じゃあ、行ってくるね」

「箒は片づけとくから、早よぅ」

「うん」

 留美ちゃんは、箒をうちに渡すと、つっかけをカラカラいわしながら本堂の階段を上がっていく。

 部屋に戻るのは庫裏から行くよりも本堂の中を通った方が早い。

 

 留美ちゃんはお父さんに会いに行く。

 

 留美ちゃんは真面目な子ぉやし、奨学金をとることにしたんや。

 毎月の生活費やら学費やらは、お父さんが口座に振り込んでくれて、その管理はお祖父ちゃんがやってる。

 最初はおばちゃんがやってたんやけど「ボケ防止にやらしてえや」というてお祖父ちゃんがやり出した。

 お祖父ちゃんは、自分の方が留美ちゃん、話しやすいいうことを知ってるさかい。

 おばちゃんは、お寺の坊守(ぼうもり)やし、他にもボランティアの仕事やらも引き受けてるさかい大変。

 まあ、並の大変ではへこたれへん人やねんけど、よくできる女いうのは年下の同性には圧が高い。

 住職の仕事も完ぺきにおっちゃんに譲って隠居の身分やしね。伊達に何十年も坊主をやってへん。

「親鸞さんも蓮如さんも人の面倒見のええ人やったしなあ」

 畏れ多くも浄土真宗の開祖と中興の祖を自分になぞらえよる(^_^;)。

 

 もう一つ、口に出して言わへんけど、お父さんに会いたいんや。

 

 うちも留美ちゃんも、親は失踪同然におらんようになった。

 留美ちゃんのお母さんは看護師やってはって、どうやら流行り病で亡くならはった。

 お父さんが全て後始末して、お父さんも留美ちゃんのことをお祖父ちゃんらに頼んで消えてしもた。

 うちの親も留美ちゃんのお父さんも、どうやら同じ仕事をしてるような気がする。

 公安調査庁とか内閣情報局とか、ひょっとしたら、ネットなんかで検索しても出てけえへん秘密組織とか。

 リコリスリコイル的な? みたいな? ぽい?

 あかん、お母さんがリコリコの制服着てるとこ想像してしもた(;'∀')。 

 よう知らんけど。

 

 じゃ、行ってきます!

 

 うちにまで、きちんと頭を下げていく留美ちゃん。

 グッドラック……と、後姿の相棒にエールを送る。

 

 来週は、三年ぶりの灌仏会、つまりお花まつり。

 お花見に来てくれたお婆ちゃんらも楽しみにしてくれてる。

 境内のお花の手入れも灌仏会に向けて佳境に入ってくるし。

 それに、うちの十七回目の誕生日。

 12歳でここに来て、七日目で誕生日やった。あ花まつりとも重なって、檀家のお婆ちゃんらも喜んでくれたのを懐かしく思い出す(005『御釈迦さんといっしょ』)。

 

 思い立って自転車で大和川を目指す。

 

 13号線を北に進む。

 13号線、ほんまは30号線。なんでか地元では13号線て呼ぶ。

 四車線の広い道やけど府道。

 四年前、堺東からタクシーに乗ってお母さんとやってきた道。

 毎日通学で自転車こいでる道やねんけど、休みの日に一人で走ると、なんや感じがちがう。

 時間を巻き戻してるような、リアルとは違う並行世界の13号線を走ってるみたいな。

 堺東まで来ると、信号のとこにいつもの婦警さん。

 自転車のおばちゃんを呼び止めてる。以前も危険運転の自転車を呼び止めて怒ってた。

 私服の彼女も知ってるさかい、職業的なものやろうとは思うねんけど可愛くない。

「ちょっとすみません」

 見とれてたら、男のお巡りさんに呼び止められる。

 え、なんかやったっけ!?

「四月一日から、自転車のヘルメット着用努力義務をお願いしてます」

 にこやかにポケティッシュ入りの啓発ビラをくれる。

「あ、はい、ごくろうさまです(^▽^)」

 ありがたくいただいてチラ見すると、婦警さんも笑顔で配ってて安心した。

 あの婦警さんは、やっぱり笑顔の方が似合う。

 

 さらに北上して大和川。

 

 川が広くて空が大きいいうのは、それだけで嬉しなる。

 なんか叫びたくなるけど、やめとく。

 もうじき17歳やし。

 大和川は永遠に流れる。

 永遠の17歳。

 なんや、アキバのメイドさん的。

 12歳から、あっという間やった。

 今度、ここに来るときは幾つになってるんやろか……西の空に一つだけ雲が浮いてる。

 よし、あの雲がこの上を通っていくのを見届けてから帰ろか。

 ハクション!

 まぶしいからクシャミが出てしもた。

 五分ほど見てると、もう一つの雲がやってきてひっついてしまう。

 孤高の雲や思たのに、ちょっと残念やった。

 

 

☆・・主な登場人物・・☆

  • 酒井 さくら      この物語の主人公  聖真理愛女学院高校一年生
  • 酒井 歌        さくらの母 亭主の失踪宣告をして旧姓の酒井に戻って娘と共に実家に戻ってきた。現在行方不明。
  • 酒井 諦観       さくらの祖父 如来寺の隠居
  • 酒井 諦念       さくらの伯父 諦一と詩の父
  • 酒井 諦一       さくらの従兄 如来寺の新米坊主 テイ兄ちゃんと呼ばれる
  • 酒井 詩(ことは)   さくらの従姉 聖真理愛学院大学二年生
  • 酒井 美保       さくらの義理の伯母 諦一 詩の母 
  • 榊原 留美       さくらと同居 中一からの同級生 
  • 夕陽丘頼子       さくらと留美の先輩 ヤマセンブルグの王女 聖真理愛女学院高校三年生
  • ソフィー        ソフィア・ヒギンズ 頼子のガード 英国王室のメイド 陸軍少尉
  • ソニー         ソニア・ヒギンズ ソフィーの妹 英国王室のメイド 陸軍伍長
  • 月島さやか       さくらの担任の先生
  • 古閑 巡里(めぐり)  さくらと留美のクラスメート メグリン
  • 百武真鈴(田中真央)  高校生声優の生徒会長
  • 女王陛下        頼子のお祖母ちゃん ヤマセンブルグの国家元首
  • 江戸川アニメの関係者  宗武真(監督) 江原(作監) 武者走(脚本) 宮田(制作進行) 花園あやめ(声優)  
  • さくらをとりまく人たち ハンゼイのマスター(昴・あきら) 瑞穂(マスターの奥さん)
  •   

 

  

 

 

 

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RE・かの世界この世界:057『さらばシュタインドルフ!』

2023-04-03 06:47:31 | 時かける少女

RE・

57『さらばシュタインドルフ!』テル  

 

 

 え、あいつか!?

 
 ジャンケンの勝負は一発で付いた。

 連れて行くなら、子どもながらにイケメンで品行方正なフレイがいいと思った。

 フレイアも女の子なので、少々お転婆でも扱いやすいだろう。それが、わんぱく坊主のロキだ(-“- )。

 ただのわんぱくなら、まだいい。

 カエルを投げつけてきた首謀者、それも、捕まっても素直に認めずフレイやフレイアのせいにしようとした。

 そういう性格が気に入らない。

 
 それに、なんでジャンケンなんだ?

 なんだか、院長先生にしてやられた感じがしないでもない。十三人の子どもたちの中から、よりにもよって。

 単に、厄介者のロキを放り出したいから……そう勘ぐってしまうほど、ロキを連れて行くのには気が進まない。

 
 皆さんの旅に神のご加護のあらんことを!

 
 ウダウダ思っているうちに、院長先生とフリッグ先生は送別会の準備を整えてしまった。

「ロキ、みんなに旅立ちのご挨拶をなさい」

「そ、そんなのいいよ……」

「ロキ、元気でね」

「お便りちょうだいね」

「水には気を付けて」

「オネショすんなよ」

「ご飯の時は、ロキの席に写真を置いとくからね」

「そうだよ、旅に出ても、心は一つだからね」

「いつか帰って来いよ」

「ロキが居なくなってせいせいする!……と思ってたのに、寂しいよ」

 最後の言葉はフレイアだ。なにか言おうとするのだが、涙を浮かべてアワアワするばかり。

 いやなガキだと思っていたけど、こいつなりに受け入れられていたんだと、ちょっとだけ目頭が熱くなる。

 
 ……ロキ!

 
 感極まってフレイアが抱き付く。すると、他の子どもたちも寄ってきて、泣きながら抱き付いて、モミクチャの団子になった。

「さあ、泣いてばかりいたら出発できなくなるわ。ゲートに並んでお見送りしましょう」

 促された子供たちは、涙をぬぐいながらゲートに並んだ。

「ちょっと待って!」

 フレイアが建物に戻って一分ほどで荷物を作って戻ってきた。

「枕がかわったら寝られないっていうから、枕と着替え。いいでしょ先生?」

「う、うん、構わないわよ」

 先生は、渡すべき荷物を用意していたようだが、フレイアの気持ちを大事にするんだろう、フレイアには見えないように荷物を減らしている。二号よりは大きいと言え四号も狭苦しい戦車だ、荷物は少ない方がいい。

「わたしたちから渡す荷物はこれだけです、よろしくお願いします」

「お預かりします」

 
 旅立ちに四号戦車はピッタリだ。

 
 砲塔のキューポラだけではなく、側面のハッチ、操縦手と通信手のハッチからも半身を乗り出して、お別れの手を振る。

 ゲートまでと言われた子どもたちは、坂を下って村の境まで付いてきた。

 もう、涙涙でグシャグシャだ。

 ついさっきまでは、このクソガキと思っていたけど、涙と鼻水でヨレヨレになったロキも可愛い。

 

「さ、ここまでですよ」

 

 オーディンシュタインの効き目は村はずれの峠までだ。峠のてっぺんで二人の先生は促した。

 五つのハッチから身を乗り出した我々は改めて敬礼。ポンプの修理に無理な魔法を使ったヒルデはヘロヘロだったが、なんとか笑顔で手を振っている。

 峠を下ると、道は『く』の字に曲がってしまって孤児院のみんなは見えなくなる。

「全員車内へ、警戒しつつ前進!」

 タングリスが車長として指示し、全員車内に収まる。

「ん? ロキ、お前のポケット……」

 ケイトがロキの上着のポケットを指さした。

「え? あ、う、うわー!」

 ポケットの中でグニグニ動くものがあって、ロキはアタフタと上着を脱いで。ハタハタと振る。

「バカ、車内でやるんじゃ……!」

 注意するのが遅かった。

 ポケットの中から転がり出てきたのは、子どもの拳ほどのシリンダーだった。

 とうぜん車内は大騒ぎになるが、もっとビックリした。

「ポ、ポチ!?」

 ロキが、シリンダーを名前で呼んだではないか!

 

☆ ステータス

 HP:2000 MP:1000 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・25 マップ:3 金の針:5 所持金:8000ギル
 装備:剣士の装備レベル10(トールソード) 弓兵の装備レベル10(トールボウ)
 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

 テル(寺井光子)     二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)   今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 
 ヒルデ(ブリュンヒルデ) 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
 タングリス        トール元帥の副官 タングニョーストと共にブリの世話係

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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