大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・2・001『やくもふたたび』

2023-08-07 21:05:28 | カントリーロード

くもやかし物語・2

001『やくもふたたび』 

 

 

 ラスボスをやっつけて、達成感と虚脱感がいっぺんにやってきた。

 

 三か月かかったゲームも、これでお終い。

 エンドロールが淡々と流れ、最後にスペシャルサンクス……Yakumo Saitou……と出てくる。

 あ……プレイヤーの名前、リアルにしてたんだ。

 ま、いいやオフラインでやってたし……コンプリートムービーが2クール目になりかけ、オプションボタンを押してゲーム終了をクリック。

 ホームに戻ると、ちかごろご無沙汰の『メディア』が気になってネタフリックスにしてみる。

 おすすめの映画……あ、これ見れるようになったんだ!

 流行り病のせいで映画館で見れなかった作品が見られるようになってる!

 近ごろのわたし、少しは人と喋れるようになった。そのぶん、あやかしたちとはご無沙汰になった……っていうか、あやかしの姿も聖霊の声も聞こえなくなった。

 寂しかったんだけど、いつの間にか学校の人たちとも、まあ、普通に話せるようになった。

 映画とかアニメの話をしている子たちが居て、いつの間にか、その話の輪の中に入れるようになったんだ。

 でね、流行りのコンテンツをネタフリで観るんだ。

 ちょっと無理してスタンダードプラン。

 中学生のお小遣いで月々1490円はお安くない。

 でも、まあ、自分への投資だしね。三月目からはお小遣いとは別に貰えるようになったし。

 まあ、まだ中学生だし甘えてもいいよね。

 

 それで、そのまま、日付を跨いで観てしまった!

 

 一日のうちにゲームと映画のエンドロールを観てしまうなんて、我ながらタフになったもんだ。

 二つの感動を胸に、そろそろ寝ようとコントローラーを持って、気が付いた。

 

 え……わたし、英語のままで映画を観ていた。

 

 画面の『選択』には英語と日本語があって、英語のところにアンダーバーが付いてる。

 あ、見終わって無意識に『選択』を英語に切り替えてしまったんだ。

 わたしの英語能力は[this is a pen]のレベルだからね(^_^;)。

 英語だと、ラストの台詞はどういうんだろ……英語でラストのところを映してみる。

 

 え……え……英語なんだけど、意味が分かる。分かってる!

 

 I’m feeling a little peckish――ちょっとお腹が空いた――と和訳しなくても理解できてる( ゚Д゚)!

 

 嬉しい1/3 びっくり1/3 気持ち悪い1/3 

 で、さっさと寝た。

 

 寝坊することも無く、いつものように起きて学校に行く。

 いつもの坂道を下って折り返しの曲がり角。

 曲がったところに三人の外人さん。スマホを見ながら困った様子。

 近ごろは、こんなところまで外人観光客の人たちが足を伸ばしてくる。

 地元民にはなんでもないところでも、外人観光客の人たちには新鮮なんだね。

 でも、どうやら地図音痴で、アプリの地図とリアルの地形を重ね合わせられないみたい。

「だいじょうぶですか?」

「あ……ええと、このつづら折りの坂道なんだけど……」

「あ、それなら、方角が逆です。こっちの道を……」

 そのつづら折りの道は、わたしにも思い出の道なんで情熱的に説明できた。

 

 ちょっといい気分になって回れ右……教頭先生が立っている。

 

 教頭先生は、時どきこの道を通って学校に通勤しているので、たまに見かけるんだけど、顔を合わせるのは初めて。

「斎藤さん、きれいなクィーンズイングリッシュでしたね……」

「え……あ……?」

 そうだ、思い出したら外人さんとは英語で喋ってた。

「その英語は……」

 聞き咎めてるんじゃない、教頭先生の中にある情報と照らし合わせている、そんな感じ。

 教頭先生は、まだあやかしが見えていたころ二三の事件で関りがあった。

 能力がなくなってからは、普通の生徒と教頭先生の関係。直接口をきくのもその時以来。

「よかったら、放課後、職員室にきてください」

「は、はい」

 

 そして、放課後、職員室に行くと「この学校を受けてみないかい」と、ある学校を紹介された。

 三年生の秋になっても受験先が決まらないわたしは――この学校、面白いかもしれない――と思ってしまった。

 

 その学校はね、ヤマセンブルグ王立民俗学学校っていうんだ。

 

 しばらくぶりに、わたしの中に火が灯った気がした。

 

  

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鳴かぬなら 信長転生記 136『信長版西遊記・玉門関・1』

2023-08-07 11:14:25 | ノベル2

ら 信長転生記

136『信長版西遊記・玉門関・1信長 

 

 

 万里の長城さえ尽き果てて、なお、その道は天竺や秦西(たいせい)に至らんと地平の彼方に伸びる。

 シルクロード……呟いただけで胸の高鳴りを憶えるのは戦国大名の性だ。好奇進取の気概あればこそ、この信長は天下の半ばを手中に収め得たし、生まれ変われば世界に雄飛することも夢ではない。

 

 しかし、そのシルクロードには背を向けて、俺たちは三国志の中原を目指す。

 

 この旅は、三国志に戻り、曹操の野望を打ち破り、扶桑にも三国志にも平安をもたらすための旅だ。

 次兄曹素の姦計に嵌められ国賊として追われる茶姫を援け、叶うことなら、茶姫を魏王に座に就かせ、三国を鼎立させる。そのために、天下三分の計の主唱者である諸葛茶孔明を訪ね、孔明との、中華風に言うならば合作を計る。

 曹素のために、茶姫は謀反の首魁にされ、つまりは全国指名手配されている。茶姫の近衛として付き添った俺たちも、織田兄妹としては三国志の血を踏むことはできない。

 そのために、意には沿わないが、オブジェの三蔵を戴いて、西遊記の続編というかスピンオフというかを装って蜀の成都を目指している。

 

「あ、見えてきた、ブヒ!」

 

 意外にノッテいる市が猪八戒になり切って声を上げる。

「玉門関だッパ」

 茶姫も語尾に『カッパ』を付けることで、沙悟浄らしさを出そうとしているのだが、促音化させて『ッパ』になっている。

「ああ、そうだな」

「だめだぞ、悟空は語尾に『ウキ』を付けなきゃブヒ」

「やってられるか(#`O´)!」

「そうだぞッパ」

「三蔵法師、なんとか言ってやれ」

 三蔵はアルゴリズムに従ってニコニコ笑うばかりだ。

 ちょっと、意地悪してやる。

「市、いや八戒、玉門関の玉門の意味を知ってるか?」

「え……玉のように大事な関だからブヒ?」

「知っているッパ」

「沙悟浄は答えちゃだめだブヒ」

「ふふ、八戒には、ちょっとむつかしい」

「あ、あ、そんなことない。言えるもん、ブヒ」

 子どもの頃に、他愛のないナゾナゾや質問をして遊んでいた時のノリになってきた。

 市……八戒はインタフェイスの地図を睨んで、なにか閃いたようで、嬉しそうに指を立てた。

「玉とは、将棋の駒の玉将のことブヒ」

「なんで、将棋になるんだ?」

「玉門関は河西回廊の西端ブヒ。長城も尽きてしまってるし、北や西から攻め込まれれば苦しいブヒ。だから、ちょっと大き目の王将クラスの砦を造ったブヒ」

 なるほど、画面に映っている玉門関は小振りだが堅牢な城塞だ。周囲を見ると、二重に防壁が組まれた跡もあり、最果ての出城にしては立派な造りだ。

「玉門関から敦煌までは凡そ300キロ、馬なら五日ほどだが、砦や城を攻めるには歩兵が中心の部隊編成になって、十日はかかる。つまり、十日以内に落す自信があれば攻めてみようという気にさせる構えだ。一万、いや、わたしなら8000の兵があれば五日も掛からん。ちょっと勢いがあれば攻めてみようという気にさせるぞ」

「そうだな」

「しかし、よく見ると、敦煌との間に小規模な砦が八カ所。忍ばせれば、それぞれ1000から1500の兵を籠めておくことができる。合わせれば8000から12000の兵になる。連携さえとれていれば、玉門関が包囲されるまでに陣を敷いて野戦に持ち込める。玉門関の兵と合わせれば、敵を逆包囲することもできる」

「おお、さすがは信長の妹、よく見抜いておる」

「そ、そうよ、玉を囮にして、敵を一網打尽にする。将棋の構えに似てるのよ」

「ブヒを忘れているぞ」

「こ、これから言うとこなのよブヒ!」

「悟空、もう正解を言ってやれッパ」

「仕方がない。ようく聞いていろ」

「な、なによブヒ」

「玉門関の玉門とは、女のオ○コのことだ」

「な(; ゚゚)!?」

「見ろ、玉門関の大手門を!」

「え……」

「縦長にすぼまった下に小さく門があって、そのような感じであろう」

「…………(#'∀'#)」

「その様子を見て、いつかしら、玉門関と呼ぶようになったのだ。ここを侵せば中原を落としたも同様だとな」

「……こ、このうつけぇ! お、お兄ちゃんのバカァ! ブヒィィィ!!」

 ドタドタドタドタ……!

「行ってしまったぞッパ」

「前には玉門関しかない、行けば、すぐに追いつく」

 

 しばらくは河西回廊、砂漠の旅だ、力を抜いて行かなければな。

 意味は無いんだろうが、三蔵がウフフと笑った。

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)

  

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RE・かの世界この世界:181『黄泉の国を目指す神々の会・1』

2023-08-07 06:05:52 | 時かける少女

RE・

181『黄泉の国を目指す神々の会・1』テル 

 

 

 こいつめっ!!

 

 イザナギは太刀を振るった!

 突然のことに、止める暇もなかった。

 温厚な男のように見えているが、さすがに国生みの神だ。オーディンの威光も届かぬ流刑地ムヘンで様々な災厄に遭い、敵の襲撃を凌いできた我々でも咄嗟に対応できなかった。

 イザナギは、生まれたばかりの火の神を一撃で切り倒した。

 その斬撃は凄まじく、火の神は数百数千に爆散して、できたばかりの世界に散ってしまった。

「イザナギ、気持ちは分かるが、あれでは、火のタネを増やしただけだぞ」

「あ……すまない、ついカッとなって荒ぶってしまった(-_-;)」

「ヒルデ、あちこちに火の山が盛り上がってきたよ」

 ケイトが指差す方を見ると、霞を通してもはっきりと分かるほどに赤々とした山容が浮かび上がっている。それも一つ二つではなく、山の向こうにも次々と燃え盛り始めている。

「……イザナミさんが息を引き取ったよ」

 そこだけ焼け残ったイザナミの手は脈を打っていなかった。

「イ、イザナミ……イザナミィ!」

 真っ黒に焼け焦げた妻の亡骸を掻き抱いて慟哭するイザナギ。

 その後ろで、我々は不運な女神に頭を垂れるばかり。

 ヒルデも北欧神として、かなり過酷な運命を背負わされているが、イザナギ・イザナミの不幸に言葉もない。

「テル、このあとはどうなるんだ?」

「それが……検索しても出てこなくなってきた」

 わたしたちは日本神話を習っていない。

 日本史の授業の中で『古事記』『日本書紀』と習うだけだ。712年『古事記』、720年『日本書紀』、稗田阿礼、太安万侶も四文字の記号のような人物名としか頭に入っていない。

 日本神話は、ラノベやアニメのモチーフにされ、加工されたものしか知らない。

 ついさっきまで身を隠していたアメノミハシラも、ゲームのダンジョンでしか知らなかった。

「妻を迎えに行く!」

 ひとしきりの慟哭が収まると、イザナギはスックと立ち上がり、西の空に向かってまなじりを上げた。

 はた目にもカッコいいのだけど、こういうヒーロー感丸出しの男と言うのは、えてして失敗が多いものだ。

「迎えに行くのはいいが、どこに行こうと言うのだ?」

 オノコロジマは四方が海に囲まれて、真ん中にアメノミハシラが立っているだけの孤島だ。

「黄泉の国」

 イザナギが目を向けた先は霞が薄れ、島々を浮かべた原初の海が湯気を立てている。

「我々も同行したいが、かまわないか?」

 ヒルデが一歩前に出る。

「おお、ご同行願えるか?」

「ああ、国生みの最初から関わってきたからな。東西の隔てはあるが、共に原初の神だ、力になれるのであれば」

「おお、百人力! いや、千人力! 万人力! よろしくお願いする!」

 そう言うと、イザナギはズタブクロと剣一振りという軽装で歩き出した。

「え……歩いていくの?」

 ケイトが、残念そうに呟く。

 ムヘンでは乗り心地はともかく二号とか四号に乗って移動していた。のっけからの歩きは意欲を削がれるのだろう。

「ヒルデに出会うまでは歩いていたじゃない。荒れ地の旅なんて、ケイトもはしゃいでいただろ」

「え、そうなの?」

「忘れた?」

「あ、うん……最初の方は、なんか記憶があいまいで」

「ま、そのうちに思い出すさ」

「さあ、みなさん、潮が満ちる前に島を出ますぞ!」

 イザナギが上げた拳には『黄泉の国を目指す神々の会』と添乗員の小旗のようなものが握られていた。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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