大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

くノ一その一今のうち・69『ミッヒはランツクネヒト』

2023-08-08 09:59:31 | 小説3

くノ一その一今のうち

69『ミッヒはランツクネヒト』そのいち 

 

 

 英語の時間は自習になった。

 

 なんでも、先生が具合悪くなって保健室で寝てるって話。

『これでゆっくり話せるね(^▽^)』

 え、忍び語り?

『何者よ、あんた?』

『アンタじゃないよ、ミヒャエル・ミュンツァー。ミッヒって呼んで』

『だから何者?』

『ランツクネヒト』

『ランツク……?』

『ランツクネヒト、日本の言葉だと……傭兵かなあ、まあ忍者みたいなもの』

『ドイツ人?』

『まあね、研修で徳川物産に来てるんだ』

『その研修生が、どうしてわたしの後ろにいるのよ?』

『え、だって、僕の担当はキミだから』

『聞いてないわよ』

『連絡ミスだね、確認してみてよ』

『あとで』

『ええ、今でもできるだろ?』

『だって、先生来るよ』

『え?』

 ガラ

「やあ、迷惑かけたね、もう大丈夫だから授業やるわね」

 弱々しい声で顔色も悪いんだけど、英語の妹尾先生はキッパリと授業を始めた。

『量を間違えたかなあ……』

『あんたの仕業ね』

『ハハ、先生も疲れ気味だったし、ちょっと休んだ方がいいかなって(^_^;)……』

「テキスト34ページ、レッスン2セクション1、一行目から五行目まで読んで訳して……今日は風間さんからね」

「は、はひ(;'∀')」

 ヤバイ、ドイツ人傭兵のお蔭で半分もできてない。

『あ、ぼくがサポートするから』

『さっさと、お願い』

 

 それで、まあ、事なきを得て昼休。

 

「はい、どうぞ」

 ピチャ

「きゃ!」

 振り向くと頬っぺたに冷え冷えの缶コーラ。

「アニメとかだったら、定番だろ、お近づきのシルシ」

「ちゃんと買ったんでしょうね?」

「もちろんだよ。学食のメニューって利が薄いから、儲けのかなりは自販機のジュースなんだよ。昔と違って分母になる生徒数も減ってるしね。ぼくはちゃんと売り上げに貢献したよ。あ、二個目はルーレットに当ってただだったけど」

「ふうん、籤運もいいんだ(´¬_¬)」

「じゃ、カンパイ!」

 プシ!

 プルトップを起こすと、程よく炭酸が解放される。

 ドジな奴は、学食から駆け上がってきて缶をシェイクしてしまって中身ごと盛大に噴出させてしまう。

「あ、炭酸大丈夫だった?」

 グビグビグビ……プハァ!

 返事の代わりに一気に飲む。

「おお、今度はビールでやろう!」

 グビグビグビ……プハァ!

 ゲップ!

「「アハハハ(^◇^)」」

 不覚にも揃って笑ってしまった。

「で、なんでランチクネクネが研修になんか来てんのよ?」

「ランツクネヒト」

「そのクネヒトが、なんで?」

「共通の敵に対処するためさ。草原の国は一つじゃないからね」

「なるほどね」

「近々、共同で働かなきゃならないことになる。撮影所でもいっしょになると思うから、よろしくね、センパイ」

「あ、五限は生物で移動だよ」

 キンコンカンコーン キンコンカンコーン……

 ちょうど鳴ったチャイムでミッヒの手を躱す。

 すると、奴は窓枠に足を掛けた。

「ちょ、なにすんのよ!」

「生物室なら飛んだ方が早い」

「校内では、そういうの禁止!」

「チェ」

「舌打ちすんな\(`-´メ)」

 

 生物教室へ向かう途中、学食の前を通る。

 キャー ウワァ ラッキー

 自販機を取り巻いて歓声が起こっている。

「あ!?」

 自販機のルーレットがマヒしたように当たりを出して、次々に缶ジュースを吐き出していた。

「アハハハ」

「笑ってる場合か\(`-´メ)」

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 風間 その        高校三年生 世襲名・そのいち
  • 風間 その子       風間そのの祖母(下忍)
  • 百地三太夫        百地芸能事務所社長(上忍) 社員=力持ち・嫁持ち・金持ち
  • 鈴木 まあや       アイドル女優 豊臣家の末裔鈴木家の姫
  • 忍冬堂          百地と関係の深い古本屋 おやじとおばちゃん
  • 徳川社長         徳川物産社長 等々力百人同心頭の末裔
  • 服部課長代理       服部半三(中忍) 脚本家・三村紘一
  • 十五代目猿飛佐助     もう一つの豊臣家末裔、木下家に仕える忍者
  • 多田さん         照明技師で猿飛佐助の手下
  • 杵間さん         帝国キネマ撮影所所長
  • えいちゃん        長瀬映子 帝国キネマでの付き人兼助手
  • 豊臣秀長         豊国神社に祀られている秀吉の弟
  • ミヒャエル        ドイツのランツクネヒト(傭兵)

 

 

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RE・かの世界この世界:182『黄泉の国を目指す神々の会・2』

2023-08-08 06:11:39 | 時かける少女

RE・

182『黄泉の国を目指す神々の会・2』テル 

 

 

 歩いていくと言うのか!?

 

 いざ出発という時になって、波打ち際に向かって歩き出すイザナギに驚いた。

「はい、この世界は生まれたばかりで、交通手段がないのです。すみませんが、歩いて行くしか手がないんです」

 たしかに、オノコロジマはアメノミハシラが太ぶとと突っ立っているだけの小島で、海の向こうは生まれて間がない裸の土地が黒々と続いているばかり。

 所どころに煙が立ち上っているのは、イザナギが切り刻んだ火の神の欠片が燻っているところだ。

 ようく見ると、それでも木々の緑が萌えはじめているところがあって、やがては豊かな森林地帯になりそうだが、道らしいものや人里らしきものは気配も無い。

「はてさて……」

 ブァルキリアの姫騎士は、岩場の一番高いところに登って腕組みをする。潮風に髪を嬲らせ、彼方の陸地を睨んでこの先の思案……というよりは覚悟をしているんだろう。

 歩いていくと言っても、道があるわけではないので、剣を振るって蔦や草を薙ぎ払いながらの強行軍になりそうだ。

「イザナギ、わたし達は空を飛ぶことができる。きみ一人なら背負うなり、ぶら下げるなりして行くことができる。空を飛んでいかないか?」

 軽々と岩場から下りてきてヒルデが提案する。うる憶えのわたしでも、黄泉の国がオノコロジマの近くではないことぐらいは分かっている。黄泉の国は日本海側のどこかであったはずだ。当然、海を渡らなければならないし、中国山脈も走破しなければならない。

 まず、なにより目の前の海を、飛ぶこともせずに、どうやって渡ると言うのだ?

「歩いて行くんです」

「「「歩いてえ!?」」」

「そんなに難しいことではありません」

「いや、難しいだろ」

「というか、不可能だ」

「でも、おもしろそう(^▽^)/」

 わたしとヒルデがいぶかる中、ケイト一人が無邪気に目を輝かす。

「そう、面白い。右足を出して、それが沈まぬうちに左足を進め、左足が沈まぬうちに右足をという具合に交互に進めて行けば歩いていけるはずです!」

「うん、やってみよう!」

「ま、待て。仮に歩くとしても、事前にルートを確認しておかないか」

 せっかく奮い立たせた覚悟をくじかれて、それでもヒルデは自分が仕切らなければならないと我々の顔を見る。

「そうね、ケイト、そこの木の枝を拾って」

「うん、どうぞ」

「えと……オノコロジマがここだから……」

 わたしは砂浜におおよその西日本の地図を描いた。オノコロジマは淡路島の東に想定されているはずだ。

「なるほど、これがわたしがイザナミと産んだ国なのか……」

「まあ、地理苦手だから、だいたいの位置関係が分かる程度にしか描けないんだけどね(^_^;)」

「海を三回渡らなければならないのだな……」

 元来が北欧の戦乙女、地図に目標を記すと目が輝き始める。

 ケイトはぼんやりと見ているだけで、まだ他人事のような目をしている。ケイトは時間的にも物理的にも目の前に迫ってこないとイメージの湧かない性格だ。その性格のために身を亡ぼすほどの目に遭って、わたしの旅に付き合っている。どんな目に……ちょっと思い出せないが、今は目の前のことだ、どうやって黄泉の国に至るかだ。

「淡路島に渡って西に進む、次の海を渡ると四国。たぶん鳴門市のあたりに着くと思う。そこからは右手に海を見ながら北に……高松の向こうあたりから瀬戸内海を渡って……岡山かな?」

「あ、そのあたりまで行けば、分かると思う。黄泉の国は負のオーラがハンパではない、おそらくは、そのオーラが空まで立ち上って目印になると思う」

「よし、じゃあ、とにかく出発しよう!」

 自慢のオリハルコンを抜くと、ヒルデは西の空を指した。

 ボワ!

 一瞬で、我々の前方に『黄泉の国を目指す神々の会』の旗が風をはらんではためいた!

「あたしが持っていいよね!?」

 地図には興味のないケイトだったが、旗には一瞬で食いついて、行軍の先頭に立った。

 

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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