大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・174『救急艇』

2023-08-04 11:16:19 | 小説4

・174

『救急艇』周温来 

 

 

 ピシピシピシ! ピシピシピシ! ピシピシピシ! ピシピシピシ!

 

 しつこい奴らだ、もう死にかけているというのに、まだ撃ってくる。

 しかし当たらない。

 仕方がない、窪地からにじり出て撃たれやすくしてやろう……

 ジリ ピシュ ジリ ピシュ ジリジリ ピシュピシュ……

 動くたびにスーツの破れ目からエアーが漏れる。

 大昔の爆撃機の燃料タンクにヒントを得たというスーツは小さな穴ならオートリペアする。リペア中の穴からヘタクソの口笛のような音がして、周温来様の断末魔にしては間抜けすぎる。

 まあいい、聞いている者も見ている者もいない。

 

 タタタタ

 

 くそ、軽やかな足音させて……間近に寄って至近距離で止めを刺そうというのか、勘弁してくれ(^_^;)

 

『動かないで、スーツの上からだけど応急処置します』

『え……』

『犯人たちはぶち殺しました。間もなく、救急艇が来ます』

『救急艇……どこの……』

 思っているうちに意識が切れかかる。

 

 フートンで酔いつぶれたような感じになって、みんなの様子を……薄目を開けると、目の前に巨大な宇宙船……え、フートンは……また意識が途切れる。

 

 ピ ピ ピ…………

 

 心音計のような音がして目が覚める。見えている限りは病院の処置室という感じだ。自分のも含めて三つのベッドがあって、正面は壁全体がガラス張になっている。

「よかったぁ、これで大丈夫ですよ」

「えと、救急病院なのかなあ」

「いっぺんに言うと混乱しますから、ちょっとずつ言いますね」

「あ……うん……」

「ご自分の名前、分かりますか?」

「えと……聖天大聖孫悟空」

「真面目に聞いてます」

「さっき死んだから、生まれ変わった」

「死んでません、わたしが救助したんですから」

「えと、君は?」

「国際救助隊」

「サンダーバードォ♪……え、あれのクルーって、全員男だよね」

「見かけで性別を判断してはいけません」

「あ、LGBTQ?」

「仕返しで言っただけですよ、周温来さん」

 ピ

「う……」

「はい、脳波は『その通り』って言ってます。あ、わたしはアルミカンと言います。宇宙戦艦ヒンメルの先任船務員です。略してSSです」

「宇宙戦艦ヒンメル……それって……」

 

『そう、宇宙海賊アルルカン艦隊の旗艦よ』

 

 首を巡らすと、正面のガラスの向こうに、プラチナブロンドにマントを翻した女宇宙海賊の親玉が立っていた。

『ようこそ、宇宙戦艦ヒンメルへ。検査が終わったら艦長室に来てちょうだい。あとは頼んだぞアルミカン』

「ラジャー(^^ゞ」

 アルミカンが敬礼すると、女海賊はマントとロン毛を翻し、ブーツの音を響かせながら行ってしまった。

 大戦艦とはいえ船の中、あの宇宙海賊のコス、引っかかったりしないのか?

 ドシン!

『アイテ!』

 

 ああ、やっぱり引っかかるんだ。

 

「あははは……」

 アルミカンが――しょうがないんです、うちの艦長は(^_^;)――という感じで頭を掻いた。

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス

 

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RE・かの世界この世界:178『期待に胸を膨らませ』

2023-08-04 06:29:37 | 時かける少女

RE・

178『期待に胸を膨らませ』テル(光子) 

 

 

 

 再会を果たし、積もる話は山ほどあるんだけど、取りあえずはイザナギ・イザナミを見守らなくちゃならない。

 

 海に潜ったヒルコとアハシマにも気持ちは残ったけど、三羽のカモメのように並んでオノコロジマに戻った。

「すごい大木!」

 ケイトが目を丸くする。

 確かにカテンの森(152『カテンの森』)の巨木たちが苗木に見えるほどに巨大だ。

 わたしもヒルデも驚いたが、ケイトほどではなかった。ヒルデは世界樹のユグドラシルを知っているし、わたしも冴子ほどではないけど日本の神話を知っている。

「ほんとうは、アメノミハシラという柱だよ」

 沖に出て戦っているうちにアメノミハシラの周囲はさらに緑が深くなっていて、わたしたちは、ミハシラの下の方、程よく洞になっているところに身を隠した。

「あちこち芽吹いて大木のようになっているけどね、この世界の生命の根源なんだよ」

「この世界? えと……オーディンとかヴァルハラとかの世界じゃなくて」

「あちらからすると異世界だけど、わたしの世界の神話世界だと思う」

「テルの……というと日本の?」

「そうよ、どんな力が働いているのか分からないけど、ここからやり直せということなんだと思う」

「や、やり直し……」

「わたしはワクワクしているぞ。とりあえず、ここではラグナロク(最終戦争)は起こらずに済みそうだからな」

「ヒルデも、嫌だったの?」

「ロキ達を世界樹の女神に送った後は、真っ直ぐ父の主城ヴァルハラだ。そこで父は命ずる『ラグナロクの準備をしろ』とな……」

 ヒルデは言いよどんでしまう。

 ケイトも、あそこまで付き合った旅だから、十分聞く資格はあると思う。

 でも、いまは触れるべきじゃないとも思う。ケイトは日本神話についての知識は無いみたいだから一度に言っても分からないだろうしね。

 それにね……

「予感がするのよ」

 ちょっと眉根にしわを寄せて返した。

「あ、今の表情可愛いぞ」

「よ、よしてよヒルデ(^_^;)」

 冷やかされて思い出した、冴子に「それは反則だ」と言われたわたしの癖だ。

 話がマジになり過ぎたり、話をここまでにしておきたいときに出てくる子供のころからの癖。

 微妙な卑しさがある。

 話を打ち止めにするだけじゃなくて、半ば無意識に自分の可愛さをアピールしてしまう。

「ここはさ、たぶん日本神話の世界。それも一番最初の国生み神話のころだと思うのよ」

「ラグナロクにはならないの?」

「無いと思う。日本神話はキチンと習ったことが無いけど、そう言うのは無かった……はず」

「えと……だったら、観てればいいだけ? 人のゲーム動画みたくにさ!?」

「それはどうかな。ここに来て、いくらも経っておらんが、もう二回も戦っているぞ。一度は、ついさっきだ、テルもいっしょに戦っただろうが」

「あ、そうなんだ」

「今回はスマホが使えるんで一応の流れは分かるんだけど、どこでどの程度干渉することになるか分からない」

「まあ、気楽に行こうではないか。ケイトも戻ってきたし、このまま進んで行けば、他のメンバーも戻って来るような気がするぞ」

「そうね、取りあえず、あの二人を見守らなくっちゃ……」

「テル」

「なに?」

「なんか優しくなってない、言葉が女の子っぽい」

「え、あ……そうかなあ」

「よいではないか、わたしもオーディンの呪いがぶり返した時は幼児化してしまうからな」

「アハハ、そうだったね」

 わたしも笑っておいたけど、ケイトには元々の記憶は蘇っていない感じだ。

 今は、まだこれでいいんだろう。

 ゴソゴソゴソ


 三人並んで、斥候のような気分になって草をかき分ける。


 男女神は生まれたままの姿で、背を向けて、それぞれの方向にミハシラを周っている。

 二人とも、さっきの失敗を取り戻す意気込みと、互いへの興味で、この高さから見てもハッキリわかるくらいに赤くなって、再びの出会いに期待を膨らませている感じ。

「膨らんでいるのは期待だけかぁ?」

「なんか、いやらしいっすよ、ヒルデ」

「なにがイヤラシイ、わたしは胸の事を言ったんだ、期待に胸を膨らませって言うであろうが」

「あ、なんかごまかした」

「い、いやらしいって言う方がいやらしいんだぞ」

「なんか息、荒くないっすか?」

「そ、そんなことは無いぞ、そういうケイトの方が赤いぞ」

「ち、違うっす(#'0'#)」

「二人とも静かに」

「テルは落ち着いてるっすね」

「こいつは、ムッツリなだけなんだろ(#'∀'#)」

「う、うるさい、ほら、二人がまた出会うわよ!」

 イザナギ・イザナミの二神はミハシラを巡って、二度目の出会いを果たそうというところだった……ミハシラは東京ドームほどの太さになっていた。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・0 マップ:14 金の針:0 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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