大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

やくもあやかし物語・2・004『ルームメイトはネル』

2023-08-27 14:22:59 | カントリーロード

くもやかし物語・2

004『ルームメイトはネル』 

 

 

 二人部屋を一人で使ってる。

 

 わたしのクラスは女子が7人なので、ハミゴのわたしは一人なんだと思っていた。

 でもね、今日からは二人なんだ。

 

「家の都合で入学式に間に合わなかった子が一人いるんだけど、ヤクモと同室になります」

「あ、はい」

 キャリバーン教頭先生の話にこっくり頷く。

「OK?」

「イエス、マム」

「……あのねぇ」

「はい、何でしょうか、先生」

「これは決定事項ではあるんだけども、疑問とか不安があったら、ちゃんと聞いた方がいいわよ。ヤクモ」

「はい」

「二人部屋を一人で使っているのはあなただけだから、ヤクモに言ったんだけど『理由はそれだけですか?』とか『同室になるのはどんな子ですか?』とか、思うところがあれば聞いた方がいいわよ」

「あ、はい」

「えと…………じゃ、いいわね」

「はい」

 

 教頭先生は――やれやれ――という感じで職員室の方へ行ってしまった。

 ちなみに職員室には『スタッフルーム』と看板が出てる。なんか、ファミレスの休憩室みたいでおかしい。

 校長室は『プレジデント』だよ、プレジデントって大統領のことだよ。むろん、校長や生徒会長のこともプレジデントっていうんだけど。先生たちはただのスタッフ。スタッフとプレジデント。やくも的には変なんだけど、きっと変な子だと思われるから聞かない。

 

 トントン

 

 ドアがノックされて「はい、どうぞ」と返事する。

 ドアが開いて、なぜか講師のソフィア先生に引率されて制服姿の女子が立っている。

「教頭先生から聞いていると思うが、今日から同室になるコーネリアだ。コーネリア、ルームメイトのヤクモ・コイズミだ。ヤクモ、よろしくな」

「はい、ヒギンズ先生」

「ソフィアでいい。苗字で呼ばれると今の百倍は口うるさい教師になりそうだからな。じゃあな」

「はい、先生」

 

 コツコツコツ……

 軍人らしい足音をさせながらヒギンズ……ソフィア先生は行ってしまった。

 

「コーネリア・ナサニエルよ、あらためて、よろしく」

「ヤクモ・コイズミです、よろしく」

「ああ、言葉とかはフランクにいこうよ」

「え、あ、うん」

 握手した手に感動して、ちょっと上の空。

 きれいな手だけど大きい。大きいのは手だけじゃなくて、身長も180くらいありそうでプレッシャー。

 それにね、ロングのプラチナブロンドに青い瞳。鼻筋もピシッと通っていて、すごい美人さん。

 でもね、近ごろは、たとえ誉め言葉でも人の容姿にアレコレ言うのは反則っぽいから言わない。

「ソフィア先生、苗字で呼ばれるの微妙に嫌がってたでしょ、なんでか分かる?」

「あ、えと……(声を潜めて)マイフェアレディーだから?」

「フフ、分かってるじゃない。ヒギンズ教授なんて、ジェンダー的には敵みたいなもんだからね……ベッドは、こっち使っていいのかなあ?」

「あ、うん。机もクローゼットもそっちかな」

「うん、ありがとう……ああ、くったびれたぁ~!」

 バフ!

 すごい音をさせて仰向けに寝転がるコーネリア。

 胸、おっきい……。

「ごめんね、長旅だったし、いろいろあったんで……ちょっとグロッキー」

「あ、晩ご飯までは時間があるから寝てていいよ。起こしてあげるから」

「うん、そうさせてもらおうかなあ……えい!」

 ガバっと起き上がると……え、服を脱ぎだした!

 下着一枚になると旅行鞄からジャージを取り出して着替える。

 めちゃくちゃプロポーションがいい! 

「じゃ、ちょっと寝かせてもらうね」

「うん」

 

 あ……また触った。

 

 ドアが開いてから三回耳を触ってる。

 耳にかかる髪が気になるのかと思ったけど、ひょっとしたら耳たぶに怪我したのが治りかけとか……いろいろあったんで……ちょっとグロッキー……とか言ってたし。

 

 ……晩ご飯の時間が迫ってきた……まだ、よく眠ってる。

 

 形のいい胸が上下して、ちょっと触ってみたくなる。

 おっと、女子同士でもセクハラになるし……クークーと寝息を立てて、ジャージじゃなくて、ちゃんと相応しい服を着ていたら、白雪姫か眠れる森の美女か。

 あ、また耳触った。

 わたしも触ってみようかなぁ。

 

 誘惑に負けて手を伸ばしたところで、起きる気配。

 慌てて自分の場所に戻ったよ(^_^;)。

 

「ちょっと遅れてしまったけど、この夕食からみんなの仲間になります。コーネリア・ナサニエル、ネルって呼んでくれると嬉しいかな。好きなものは日本のアニメ。部屋はヤクモと同室。日本の子なんで、アニメの話とかしたかったんだけど、長旅ですぐ寝ちゃって、それにガツガツ聞いてドン引きされてもアレなんで、またよろしくね、ヤクモ。むろん、みんなもね!」

 パチパチパチパチパチパチ

 みんなに祝福されて席につくネル。

 ネルって、よく寝るからネルなのかもしれない。

 あ、また耳触った。

 

 さあ、晩ご飯。

 

 みんなでお祈りをして、ヨーイドンって感じで食事が始まる。

 隣の席、刺激物大好きのアーデルハイドが盛大にペッパーミルをゴリゴリ。

「やだ、詰まったのかなあ」

 拳でトントンやるものだから、蓋が取れちゃって、粒のやら粉になったのやらのコショウが飛び散る。

「ちょ、ハイジ!」「アーデルハイド!」「またかよ!」

「ハーーックション!!」

 ネルがたまらずにでっかいクシャミ!

 

 ポヨン

 

 ええ!?

 

 クシャミをした拍子に、ネルの耳は「呪縛を解かれた!」って感じで伸びてしまった。

 

「あ、ああ……ごめんなさい、言いそびれていたけど、ネルはエルフだったりします」

 

 いっしゅん凍り付いたようになったけど、すぐにネルがテヘペロ(ノ≧ڡ≦)をカマシて暖かい拍手が起こったよ(^_^;)。

 

 

☆彡主な登場人物 

  • やくも        斎藤やくも ヤマセンブルグ王立民俗学校一年生
  • ネル         コーネリア・ナサニエル やくものルームメイト エルフ
  • ヨリコ王女      ヤマセンブルグ王立民俗学学校総裁
  • ソフィー       ソフィア・ヒギンズ 魔法学講師
  • メグ・キャリバーン  教頭先生
  • カーナボン卿     校長先生
  • 酒井 詩       コトハ 聴講生
  • 同級生たち      アーデルハイド

 

 

 

 

 

 

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RE・かの世界この世界:201『鬼ノ城・3』

2023-08-27 05:50:28 | 時かける少女

RE・

201『鬼ノ城・3』テル 

 

 

「あ……いや……あなた方でしたか……」


 解れるように太刀先を下ろしたのは、ついさっきカーラジオで消息を聞いたばかりの屋島の英雄だ。

「与一さん、どうしてここに……」

「あ、いやはや、お恥ずかしい」

 あまりのことに、わたしの言葉に続く者はいない。イザナギさんでさえ、意外な再会に目を丸くしている。

「事情があるようだな。ここで会ったのもなにかの縁だ、よかったら聞かせてくれ」

 最初に口を開いたのはヒルデだ。

 自分自身ラグナロクに向けて悩み多いヴァルキリーの姫騎士、屋島の英雄に想いを重ねるところがあるんだろう。

「お恥ずかしい話ですが、壇ノ浦から逃げてきました」

「逃げてきただって!?」

「!?」

 子ども二人の目が三角になる。

 イザナギさんが二人の後ろにまわり、そっと抱き寄せた――こういう時は、そっと話を聞け――という姿勢だ。この神さまは、学校の先生に向いているのかもしれない。

「屋島でもお話しましたが、わたしには十人の兄が居ります」

 そうだ、与一という名前の由来は十一男という意味なんだ。

 落語風に言うと与太郎で、日本人にはこちらの方が通りがいいが、ひとかどの侍としては間が抜けすぎている。

 それで、ちょっと工夫して『与一』という、ちょっとカッコいい名乗りにしたんだ。

 おそらくは、那須の大田舎から出征するにあたり、母親がそう名乗るように言ったんだろう。

「兄たちは、ことごとく平家の郎党です。わたしのことなど眼中にない兄たちでしたが、その兄たちが、こぞって平家に与力するように言ってくるのです。一番上の兄などは、すでに平家の敗北を予見して『いざという時は、与一の才覚で一家の存続と繁栄を計れ』と申してきました」

「板挟みなのだな……」

「悪目立ちしすぎました。源氏の方でも――与一に一方の大将を任せてみては――という推挙の声も上がりました」

「うむ、それは頷ける。与一には人気と時の運がついている。それに、その謙虚な姿勢。武将として並みの力を持っていれば、壇ノ浦でも名前に相応しいだけの手柄は立てられるだろう」

「ご推挙の先頭に立っておられたのは梶原景時殿、景時殿は源氏の軍監です。梶原殿は鎌倉殿の軍監として義経様のお手柄を快く思ってはおられません」

「それで、逃げてきたっていうのかよ!」

「最後まで聞きなさい、桃太郎二号くん」

「御大将、義経様にも相談いたしましたが『与一君の良いようにしたらいい』とおっしゃいます」

「それは……与一がどちらに付こうと自分の勝利に変わりはない……義経の自信の現われだな?」

「義経様は『どちらに付こうと、与一君が扇の的を落として源氏の意気を高めてくれた手柄は古今無双だ。それだけで、那須の本領を安堵してお釣りが出る』とおっしゃいました」

「そうか」

「そして『与一、君は鎌倉で軍団を結成して以来一日も休暇を取っていないなあ、有給休暇溜まりまくってるから、ちょっと休暇をとればいいよ。去年の使い残しも含めて40日。それだけあれば、壇ノ浦なんて片付いてしまう。都の凱旋パレードには出て欲しいかなぁ。よし、たった今から与一は休暇だ!』と笑って送り出してくださいました」

「タイプは違いますが、トール元帥がおやりになりそうな気配りです」

「そうだな、爺の若いころはそんなだったかもしれんな……しかし、だったら、なんで、こんな鬼ノ城で身を隠しているんだ?」

「わたしのことを快く思わない者が、源平双方に居ります。先に陣を畳んで戻るのは、なにか企んでいるに違いないと邪推され、追手を差し向けられて……いやはや、これも与太郎の浅はかさ、考えの及ばぬところでした……しかし、まあ、良いのです。この身はどうなろうと、手柄は手柄、那須の領地と母の暮らしはなんとかなるでしょう」

 なんとか微笑もうとするが、目に光が灯らない。ちょっと痛々しい。

「なるほどなるほど……そういうことだったのか……」

 一通りの事情を聞くと、ヒルデは「うぅ~~~ん」とノビをして与一さんの方に顔を向けた。

 

 ☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎

 

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