大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

RE・かの世界この世界:203『鬼ノ城・5』

2023-08-29 14:48:20 | 時かける少女

RE・

203『鬼ノ城・5』テル 

 

 

 雪舟ねずみなので、本格的なお茶かと思ったら、ヤカンに湯を沸かして急須で淹れるという簡便なお茶だ。

 

 一方、タングニョーストの炉はブタの丸焼きができそうなくらい堅牢でごっついものになった。

雪舟ねずみ:「ハハ、わたしの茶には舞台が大きすぎるようです(^_^;)」

タングニョースト:「すまん、戦場では、いつもこれくらいの炉を構えていたのでなあ」

ヒルデ:「いや、わたしも違和感が無かったぞ」

 ヒルデもいっしょに頭を掻いている。

イザナギ:「それなら、いっそ食事にしましょう」

テル:「しかし、イザナギさん食事の準備はなにも……」

イザナギ:「これでも神です、イザナミほど器用にはできませんが、食べたことがあるものなら再現できます」

桃太郎二号:「あ、きび団子なら、ちょっと飽きたかもなぁ(^〇^;)」

ケイト:「桃太郎が言うな」

 ポコ

桃太郎二号:「どつくこたぁねえだろ、ケイト!」

イザナギ:「きび団子ではありません、うどんとたこ焼きです。どちらも作るところを見ていましたからね」

ケイト・桃太郎二号:「「食いたい食いたい!」」

 二人の食欲につられて思いついた。

テル:「材料は、いっしょだからお好み焼きも作ろう!」

 

 お好み焼きぃ??

 

 説明してやると、みんな目を輝かせたり涎を垂らしたり。期待値マックスの中でお好み焼きに挑戦。

 

タングニョースト:「これは、こちらの世界に来た時に匂いだけが残っていた……」

ヒルデ:「ああ、タングニョーストは柄杓の水を飲んだだけで蘇ってしまったんだった」

イザナギ:「ああ、あの水にはミネラルもカロリーも十分入っていましたから、満ち足りてしまったんですねえ。よかったら、そっちの方でも……」

みんな:「「「「「食べたい!」」」」」

 声が揃って、鬼ノ城はこなもん大会になった。途中、雪舟ねずみが「与一さんにも」とお好み焼きとたこ焼きを持って行ってやる。

雪舟ねずみ:「一心不乱に書いておられましたよ、思いが溢れてこられるようです」

イザナギ:「そうでしょうねえ、与一さんはとびきり優しい人ですからね……」

 わたしは「そうですねえ」と辛うじて返事をしたが、みんな食べることに一生懸命だ。

 

 パクパク、ガツガツ、パクパク、ガツガツ…………

 

 パクパク、ガツガツと食べているうちに、いつしか鬼ノ城は泣き出してしまいそうなくらいの懐かし色に染まる。

 カラスやトンビもねぐらに帰り、遠くお寺の鐘もゴーーンと鳴って、宵の明星さえ月と並んで輝きだした……。

 

 

☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎

 

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鳴かぬなら 信長転生記 140『信長版西遊記・砂丘を回り込む』

2023-08-29 10:54:10 | ノベル2

ら 信長転生記

140『信長版西遊記・砂丘を回り込む信長 

 

 

 三蔵法師はただのオブジェだ。

 

 二宮忠八が工夫を重ね努力の末に作りだしたハイパー紙飛行機を馬に変えた、その余りで造ったオブジェ。多少のギミックはあるが、せいぜいゲームのNPC。盗まれて惜しいものではないが、オブジェであるとバレるのはまずい。

 三国志の中原に出て、魏王曹操を倒すまでは西遊記を続けなければならない。

「なかなか追いつかないブヒ、敵はもうじき砂丘の陰に隠れるブヒ」

「八戒、おまえが載っているからだウキ」

「これは変装ブヒ、体重は本性の市のままだブヒブヒ!」

「いや、八戒は大きいから風の抵抗が大きいッパ。少し前かがみになって風の抵抗を減らすッパ」

「了解ブヒ!」

 ムギューー

「こ、こら押すな!」

 八戒が真ん中なものだから、後の沙悟浄は平気だが、前の俺は馬の首と八戒の腹に挟まれて潰されそうだ。

「だ、だってぇ、ねえ、さっきみたいに空飛んで追いかけられないのブヒ!?」

『無茶いうな』

「なんか言った、ブヒ?」

「いや、緊箍児(きんこじ)だ、俺の頭の金輪だウキ!」

「あ、これって一言主だっけブヒ?」

『わしはコスプレの神じゃ、多少のギミックやエフェクトは付けてやるが、のべつ幕なしというわけにはいかん』

「だったら、どうするブヒ!?」

『知らん』

「俺が、下りて走るウキ!」

「「あ、そう!?」」

「素に戻って声をそろえるな! 俺は砂丘の向こう側に周る。上手くいけば挟み撃ちだウキ!」

「「じゃ、がんばって!」」

「こ、こら、放り出すなぁ!」

 

 ズサ、ゴロゴロゴロ……

 

 砂の上をしばらく転がると、きな粉餅のようになって走り出す。

 さすがは孫悟空、けっこう速い。そして、きつい(;'∀')。

 なんだか草履とりをしていたころのサルを思い出す。

 サルは、俺の行くところには必ず付き添って走らせた。いつもニコニコ俺の後ろを走っておったが、あいつもけっこうきつかったんだな。

「一言主、俺は孫悟空だ。筋斗雲とかは使えんのかウキ?」

 ………………

 そうか、一言主はコスプレ神、その名も一言、多くは喋らんというわけか。

 仕方がない、金ヶ崎の退き戦を思えば砂丘一つ回り込むのは知れたこと。

 ダダダダダダダダダダダダダ

 濛々と砂煙を上げて砂丘を回り込む。

 

「敵は!?」

 

 回り込んで鉢合わせした八戒・沙悟浄に叫ぶようにして聞く。

「砂煙が激しくてわからんブヒ!」

「足跡はハッキリしている、遠くではないッパ!」

 追うぞ!…………叫ぼうとしたら、にわかに自分たちのところだけが、薄暗くなる。

「散れ!」

 叫びながら振り返ると、山のような化物牛が飛び降りてくるところだ!

 やられた(;゚Д゚;)!

 こいつ、我々の目を賊に釘付けさせ、砂丘の上で待ち構えていたんだ!

 

 グモオオオオオオオオオオオ!!

 

 いかん、今度こそ押し潰されるぞ!

 

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ) 一言主

 

 

 

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RE・トモコパラドクス・1『友子と一郎』

2023-08-29 06:59:47 | 小説7

RE・友子パラドクス

1『友子と一郎』   

 

 

「お父さん、切符……」
 
 二枚の切符を指に挟んでユラユラさせながら、父の後ろで友子が注意する。

「お、おう……」

 通せんぼした自動改札から戻りながら、父は不機嫌そうに頭を掻く。

「いけませんね」

「通勤はスイカなんでな」

「520円貸しね」

「もう電車来るぞ」

「まだ二つ前を出たとこォ」

 頭上の電光掲示を指さす友子。

「ああ?」

 数歩下がって確認する父。

 亀が首を伸ばしたみたいでみっともない、亀にはひげの剃り残しなんてないだろうし。

「こういうことは、すぐに精算しとかなきゃ、お父さん、すぐ忘れるんだもん」

「あいよ、20円……ないや。500円で辛抱しろ」

「50円玉あるじゃん。はい、おつり30円」

 こういうことには細かい奴である、友子という奴は。

「もう少し離れて立ってろよ」

「いいじゃん、親子なんだから」

 どうもしっくりいかない。制服姿の女子高生と並んで電車を待つなんて、ほとんど三十年ぶりの一郎である。

 

「落ちたらどうする?」

 

 電車が加速し終わると、手持ち無沙汰のように一郎が呟く。

「落ちないわ。賢いの、わたし」

「しかし、乃木坂って偏差値67もあるんだぞ」

「68よ。それから、乃木坂は都立、略称都乃木。わたしが受ける乃木坂は乃木坂学院よ。間違わないで」

 ギュィーン

「おっとっと……」

 車両がカーブを曲がったので、一郎は反対側のドアまでよろけてしまう。幸い土曜日で人が少なく、ぶつかって恥をかくようなことはなかった。

「運動不足だしぃ」

 友子は揺らぎもせずに、横を向いたままの姿勢でニクソげに言う。

「いつもの電車じゃないからな……」

「じゃ、歳のせいだ。わたしだって初めてよ」

「あのな……」

「さっき、カーブを曲がりますってアナウンスあったよ」

「うそ?」

「あった」

 傍らの席に座っているオバサンたちがクスクス笑っている。もう一言言おうと思ったが、友子がアサッテの方を向いてしまったので、やむなく一郎は口をつぐんだ。

 

「こっちこっち」

 

 改札を出ようとしたら、端っこの駅員が居る改札で友子が手を挙げている。

「あ、すんません(^_^;)」

 うしろで閊(つか)えた乗客に詫びて有人改札へ。ちょっと恥ずかしい。

「記念に取っときたいので、無効のハンコください」

 友子の申し出に「はい、どうぞ」と女性駅員がスタンプを押してくれる。

「預かるわ」

「いいよ、持ってるよ」

「だめ、お財布の中でクシャクシャにしてしまうんだから。パウチしてから返してあげるからね」

 一郎から切符を取り上げると、友子は京アニ作品の主人公のような足どりで階段を駆け上がっていく。ハルヒか平沢唯か……例えが古いな……苦笑しながら一郎は娘の後を追う。

 

「この成績なら問題ありません。転入合格です」

「ふぁい……どうもありがとうございました」

 転入試験のあと、控え室で居眠ってしまった一郎は、結果を知らせにきた教頭に、しまらない返事をしてしまった。友子に口元を指され慌ててハンカチで拭く一郎。

「どうもありがとうございました。これからは乃木坂学院の生徒として恥じない高校生になりたいと思います。未熟者ですが、よろしくお願い致します」

 年相応に頬を染め、でもハキハキとした返事をする友子。

「しっかりしたお嬢さんですね、期待していますよ。今日書いて頂く書類は、こちらになります。あとは初登校するときに、娘さんに持たせてください」

 

 コンコン

 

 その時、ドアがノックされ、ヒッツメの女性が入ってきた。

「あ、こちらが担任の柚木です。あとの細かいところや、校内の案内をしてもらってください」

 そう言って教頭は部屋を出て行った。

「制服は9号の方がよくないかしら。まだまだ背は伸びるかもしれないから」

「いいんです。わたしは、これ以上は伸びません……ってか、このくらいが気に入ってるんです」

「そう、まあ、わたしも高一から身長は止まってしまいましたけどね」

「へえ、柚木先生もそうだったんですか!?」

 友子は、担任というより仲間を見つけたような気持ちで、明るく言ってしまった。

「でも、横にはねぇ……大人って大変ですよね、お父さん」

「いえいえ、先生みたいな方なら、うちの会社のモデルでも勤まりますよ」

 そう言いながら、一郎は頓挫しているプロジェクトのことが頭をかすめた。

「美生堂(みしょうどう)の化粧品なんて縁がないですよ」

「いやいや、ご謙遜を」

「よかったら、このタブレットでご確認ください。タッチしていただければ、この連休中にも、必要なものは揃いますわ」

「……はい、友子、これでいいな?」

「はい、もう確認したよ」

「じゃ、次は校内施設の確認を……」

 

「おかえり、どうだった、トモちゃん?」

 

 春奈が母親がましくエプロンで手を拭きながら玄関で出迎えてくれた。

 春奈は最後まで友子を引き取ることに反対した。

 いくら自分たちの子供を断念したとはいえ、いきなり15歳の女子高生の母親になることには抵抗があった。

 それが、コロっと気持ちが変わって引き取ることにしたのは、友子を引き取る条件が破格であったからである。

 養育費が月に20万円。それも一年分前払い。さらに一千万円ほど残っていた家のロ-ンを払ってくれるという好条件だった。

 三日前に現物の友子が現れてからは、さらに気持ちが変わった。

 裕福な両親を亡くしたとは言え、これだけの好条件で来るのだから、写真や経歴だけでは分からないむつかしさのある子だと覚悟していた。

 ところが、直に会ってみると春奈は一目で気に入った。

 会社でも営業部を代表して新入社員の面接をやってきている春奈には、とびきりの女の子に見えた。きちんと躾られた物腰。こちらの気分に合わせて呼吸するように距離を取れるセンス。また、家事もいっぺんで要領を覚え、明くる日には冷蔵庫と食器棚の整理を任せた。

「あの……呼んでもいいですか?」

「え、なに?」

「その……お母さん、て」

 夕べ、頬染め、おずおずと言われたときは、思わず涙が浮かび、春奈は友子と泣きながら不器用に抱き合っていた。ドライに振る舞おうとしたが、自分も情にもろいんだと思ってしまう春奈だった。

「お母さん、乃木坂って、とってもいい学校よ!」

「よかったあ!」

 帰宅後、開口一番に友子が頬を染めて報告した時は、まるで自分も女子高生に戻ったようにハグし合う。夕べの不器用さが嘘のようなスキンシップ。

 食後

「お母さん、お風呂いっしょに入ろっか?」と言われ、ガラにも無く「は、恥ずかしいわよ」「アハハ、じゃ、またいずれね」とじゃれ合って友子が一番風呂。

 浴室でくぐもる鼻歌に、もう友子とは生まれてからの親子のように胸が暖かくなる。

「あ~、いいお湯だった、お母さんどうぞ」
 
 春奈が風呂に入ると、リビングでくつろいでいた一郎の横に髪を乾かしながらドカッと友子が腰を落とす。

「一郎、今日のあんたの態度ね……」

 思いのほかのジト目。

 それは、もう可憐な女子高生のそれでは無かった……。
 

 

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