大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

鳴かぬなら 信長転生記 137『信長版西遊記・玉門関・2』

2023-08-12 10:03:14 | ノベル2

ら 信長転生記

137『信長版西遊記・玉門関・2信長 

 

 

 大手門の前に着くと、市の猪八戒が腕組みして高札を睨んでいる。

 

「どうした八戒、玉門関の由来でも書いてあるのかウキ」

「違うブヒ『僧侶及び僧侶を伴う旅行者は入城後南曲輪で待機すべし』と触書が出てるブヒ」

「もう、情報が洩れてるんじゃないかッパ?」

「それで、怪しい旅行者は取り調べてるとか思うのかウキ?」

 ちょっと違うんじゃないかと思ったが『玉門関』の名前でおちょくったばかりなので、穏やかに聞いてやる。

「しかし、取り調べのためなら、城外でやるッパ」

 思い出した。酉盃に潜入するときも城門の前に列を作らされ、チェックの済んだ者だけ城内に入れていた。

 俺は、早くから楽市楽座にして、関所などサッサと廃止していたから、市も疎いんだ。茶姫は取り締まる側だったから直ぐに見当がつくようだ。

「南曲輪というのも、一般的には行政エリアだ、そうそう不穏なことは無いと思うッパ」

「そうだな、取りあえず入城するウキ」

 俺たちの他にも旅の坊主がチラホラいて、見かけで僧侶だと分かると、そのまま入城させてくれる。それ以外の旅行者は酉盃同様に根掘り葉掘り聞かれ、積荷も検められている。

「あ、眩しいブヒ!」

 商人の積荷が開かれてキラキラしている。

「あれが、玉門関の由来だッパ」

「宝石ブヒ?」

「ああ、西域からの輸入品には宝石貴石、高級ガラス製品が多いんだ。そういうものをまとめて玉という。その玉が入って来る関だから玉門関だッパ」

「なんだ、そうなのかブヒ(^_^;)」

 楼門を潜ろうとすると、ひげを蓄えた偉そうな役人がガシャガシャと音をさせながらやってきた。

「あの甲冑は玉門都尉、関門司令だ。なにかあったなッパ?」

 そのまま入城してもよかったんだが、玉門都尉は今川義元の来襲を報告した物見のように緊張した顔をしているので、思わず振り返った。

 

「間もなく黄風大王がやってくる! 通関は省略! 荷が軽く足の速い者は自儘に逃げよ! 逃げる方向は自由! 西は避けよ、黄風大王は西からやって来る! 自信の無い者は城内に入れ! ただし、城内とて安全は保障の限りではない。全て自己責任、この瞬間に判断し行動せよ!」

 え!?

 周囲の者たちが一斉に息を呑む。

 数秒騒めいた後、半分ほどは馬に鞭を当て南北に逃げ、残りの者が城内に入って行く。

「御坊、御坊には申し訳ないが、南曲輪に急いでくれ」

「南曲輪で、なにをするんだ、ウキ?」

「悪鬼退散、妖魔調伏、敵国降伏、満願成就、家内安全……そういう祈祷をしていただく。御坊らで、ちょうど百人目、お願い申す!」

 そう言うと、あちこち指示を飛ばしながら本丸の方に走って行った。

 ギーーーガチャン!

 背後で門が閉じられ、成りたて西遊記の俺たちは、さっそく災厄に巻き込まれてしまった。

 

☆彡 主な登場人物

  • 織田 信長       本能寺の変で討ち取られて転生  ニイ(三国志での偽名)
  • 熱田 敦子(熱田大神) あっちゃん 信長担当の尾張の神さま
  • 織田 市        信長の妹  シイ(三国志での偽名)
  • 平手 美姫       信長のクラス担任
  • 武田 信玄       同級生
  • 上杉 謙信       同級生
  • 古田 織部       茶華道部の眼鏡っ子  越後屋(三国志での偽名)
  • 宮本 武蔵       孤高の剣聖
  • 二宮 忠八       市の友だち 紙飛行機の神さま
  • 雑賀 孫一       クラスメート
  • 松平 元康       クラスメート 後の徳川家康
  • リュドミラ       旧ソ連の女狙撃手 リュドミラ・ミハイロヴナ・パヴリィチェンコ  劉度(三国志での偽名)
  • 今川 義元       学院生徒会長
  • 坂本 乙女       学園生徒会長
  • 曹茶姫         魏の女将軍 部下(備忘録 検品長) 曹操・曹素の妹
  • 諸葛茶孔明       漢の軍師兼丞相
  • 大橋紅茶妃       呉の孫策妃 コウちゃん
  • 孫権          呉王孫策の弟 大橋の義弟
  • 天照大神        御山の御祭神  弟に素戔嗚  部下に思金神(オモイカネノカミ)
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RE・かの世界この世界:186『淡路島阿那賀岬に立つ』

2023-08-12 06:31:40 | 時かける少女

RE・

186『淡路島阿那賀岬に立つ』テル 

 

 

 

 淡路島の南岸を歩いて西の端に出た。

 

 海を挟んだ四国との間には、幅四キロほどの海が横たわっている。

「ちょっとあるなあ……」

 ケイトが独り言めいてこぼす。

 ケイトの優しさなのだ。

 タングニョーストは背中にタングリス(骨と皮だけど)を背負い、命からがら向こうの世界から来たばかりだ。水分補給とたこ焼きで人心地ついたとはいえ、実質は敗残兵の逃避行。ちょっときびしい。

 我々は、オノコロジマから淡路島までは海の上を走ってきた。

 右足を出したら、その右足が沈まないうちに左足を出し、出した左足が沈まないうちに右足を出して進むという、超人的な技で走ってきたのだ。

 顔にこそ出さないが、けっこうキツイ。

 加わったばかりのタングニョーストはキツイどころの話ではないだろうし、たとえ思っていても、言い出しにくいだろう。イケイケのヒルデは気が付きもしないし、自分が言わなければと思ったのだろう。ちょっと成長したかな。

「海岸沿いに北に進むと阿那賀岬というのがあります。そこからなら半分の距離。行ってみましょう」

 さすが、国生みのイザナギノミコトだ、まだできたばかりの国土を名前ごと掌握している。

 スマホもろくに使えない、この世界。高校二年生の地理的知識は小学生と変わりない。東京近辺ならともかく、関西の地形や地名には、ひどく疎い。

「ミサキとはなんですか?」

 タングニョーストが素朴な質問をする。

「ええと……」

 素朴すぎてイザナギは返答に困る。

「英語ではCAPEだね」

 たまたま憶えていたので答える。

「うん、そうなんですが、最初だから、もうちょっと突っ込んで説明します」

 イザナギは、異世界からやってきた下級将校に出来のいい転校生に対するように接する。

「海に突き出た陸地の事でね、大きいのを半島といいます」

「ああ、半島なら分かります」

「その小さいのを岬と呼ぶんだけど、もともとの意味は陸地の先っぽを表わす『先(さき)』でしかありません。その上の『み』は、尊敬の意味の『御』の字がくっついたものです」

「地形を尊敬するのですか!?」

「はい、海を行くときに目印になるのが岬なんですよ。岬を見て『目的の港が近い』とか『もう少しで目的地』だとか分かるでしょ。だからね、日本人は岬そのものを神さまのように感じて、岬の前を通過する時にはお酒を供えて手を合わせたりするんです」

「そうなのか!?」

 今度はヒルデが感動した。

「岬の周辺は岩礁ばかりで遭難することが多いので、我々の世界では悪魔が住んでいるというぞ」

「それは……そちらの世界の人たちが冒険心に富んでいるからでしょう。日本人は、そういう点では少し大人しいのかもしれません」

「冒険心も度が過ぎると、わたしのように勘当されたりもするがな」

 アハハハ……神さま同士の労りなのだろうけど、少しばかりヒルデの傷を見たような気がした。

 

「おお、これなら距離は半分以下だ!」

「はい、これならなんとか!」

 

 阿那賀岬の先に立って、ヒルデもタングニョーストも頷いた。

「のちの時代、源義経が四国に逃げた平家を追って海を渡ったところでもあるんです」

 イザナギがものを投げるような仕草をすると、阿那賀岬の前を五隻の船で海峡を渡る義経軍の姿が浮かんだ。

「それって、屋島の戦いですか?」

 乏しい日本史の知識と結びついた。

「ええ、一の谷の戦いで海に追い落とされた平家は、高松の屋島に陣地を布いて、海から攻めてくる源氏に備えるんですが、義経は裏をかいて、ここから阿波の国に渡って陸地から平家を攻めるんです」

「なるほど……」

 ヒルデはタングニョーストと説明を聞きながら砂浜におおよその地図を描いて納得している。

 さすがはヴァルキリアの姫騎士ではある。

 わたしも、参加してみたい気分になって、乏しい知識を喋ってしまう。

「二十世紀の終わりには、橋が掛けられてね、とっても便利になるんだよ」

「ああ、本四架橋!」

 ケイトが嬉しそうに同調してくれる。

「え! ここに橋を架けるのか!?」

「うん、神戸から淡路島へも橋が掛けられて、本州と四国は船を使わなくても行き来できるようになる」

「それは……」

「なんか、つまらんなあ」

 どうも、神さまと人間では感覚が違うようだ。

 
 我々は、タングニョ-ストの荷物や装備を分けて持ち、右! 左! と、気合いを入れて海の上を走って対岸の讃岐に渡ったのだった。

 

☆ ステータス

 HP:10000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・1000 マップ:1000 金の針:1000 福袋 所持金:450000ギル(リボ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケアル ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

    テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官  ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官  ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 ナフタリン       ユグドラシルのメッセンジャー族ラタトスクの生き残り
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)

―― この世界 ――

 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長
 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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