大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

銀河太平記・178『トラコン・2』

2023-08-26 10:43:19 | 小説4

・178

『トラコン・2』須磨宮心子内親王 

 

 

 お疲れさまでした  ごくろうさまです

 

 警察らしくない挨拶を交わすと『北町奉行』とロゴを変えてパトカーは行ってしまった。

 トラコンは北町奉行所と南町奉行所の共同警備地区になっている。

 トラコン二丁目のバザールは車が乗り入れられない。

 めちゃくちゃ人出が多いので昼間の車両の乗り入れは禁止。むろん緊急車両は例外なんだけど、一応トラコンの規則に倣って、バザールの入り口で南北奉行所の同心が入れ替わる。

 パトカーの北町は、グルッとトラコンを周って奉行所に帰っていく。その間、南町は徒歩でバザールを巡回。そうすることで、トラコンにはパトカーと徒歩の警察官が巡回していることになり、不測の事態が起こっても柔軟に対応できるようになっている。

 

「お、5000人超えてる」

 ヒコくんが掲示板を指さす。バザールの東西南北には掲示板があってバザールの込み具合を示している。バザールは観光スポットでもあるので観光客も多い。それで、混み具合を数字とドットで表示して、なるべく混雑を回避できるように誘導している。

「やっぱり人気高~い」

「南の1番2番が特に混んでるわね」

「行きますか!」

「はい!」

 掲示板はハンベにも連動していて、警察用のハンベにはドットごとの国籍も分かる。

 

『ちょっと、いいかげんにしなさいよ!』『そっちのほうこそ!』

 

 不穏な声が聞こえて、二人で急行する。

「どうかしましたか?」

「あ、お巡りさん!」「ちょっと聞いてよ南町!」「まあ、二人とも落ち着いて」「そうよ、頭冷やして」

 隣り合った出店同士で揉めて、周囲の出店やお客たちがなだめている。

「境界線守らないのよ、この小間物屋!」

「そっちこそ前に出過ぎだろ、アウトレット!」

 どうやら、店の境界で揉めている。

 バザールは設置された時からきちんと区画されている。しゃくし定規に取り締まっているわけじゃないけど、時どきもめる。

 シャーー

 アナログのメジャーを出して調べる。

「あ、小間物屋のおばさん、15センチ出てる(^_^;)」

 バザール内の道路幅は6mで、店の前1mまでの張り出しは認められている。15センチは、ちょっと出過ぎ。

「だって、アウトレットが寄せてくるから、前に出さなきゃやってらんないわよ!」

「なにさ、うちの方が前から店構えてんだ。後から店出してガタガタ言うんじゃないわよ!」

「後先なんて、関係ないだろ、決まりはみんな守らなきゃだめだろーがぁ!」

「なんだとぉ!」

「「「「「まあまあ」」」」」

 周囲の人といっしょに二人を止める。

「仲良くやってくださいよ」

「可愛い婦警さんだけど、これは譲れないわよ」

「いっそ、奉行所の方で裁定してやったら、どうだね」

 ケバブ屋さんが、こっちに振って来る。

「裁定しちゃうと、取りあえず二軒とも厳格に見なきゃならないから」

「いいわよ!」「厳格に見てよ!」

「う~ん、でも、お二人は先月も揉めてるから、今度は裁定出るまで、お店閉めなきゃならなくなりますよ(`•︵•´) 」

 最後のところだけキッパリ言い切るヒコ同心。

「あ、ああ……」「それは……」

 二人とも語尾はゴニョゴニョ。

 

 とにかくもケリをつけて先にいく。

 

 それから、バザールで三件もめ事を仲裁、一丁目でゴミの収集について指導、一丁目公園ではバレーボールと野球のイリーガル違反を注意。ペットのミニブタが逃げ出したのを捜索。

 最後のミニブタは、三丁目で食べられてしまっていて、ちょっと仲裁するのが大変だった(^_^;)。

 

 夕方、北町から引き継いだパトカーに乗って、やっと一息。

 

「バザール、変だとは思わなかった?」

「え、境界線のこと?」

「いや、掲示板の数字よりも微妙に人が多いような気がした……」

「え、それって?」

「あ、いや、気のせいかもしれない……」

「…………」

 珍しく表情の読めないヒコくんだった。

 

 

☆彡この章の主な登場人物

  • 大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
  • 穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
  • 緒方 未来(おがた みく)     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
  • 平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
  • 加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない
  • 姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任
  • 扶桑 道隆             扶桑幕府将軍
  • 本多 兵二(ほんだ へいじ)    将軍付小姓、彦と中学同窓
  • 胡蝶                小姓頭
  • 児玉元帥(児玉隆三)        地球に帰還してからは越萌マイ
  • 孫 悟兵(孫大人)         児玉元帥の友人         
  • 森ノ宮茂仁親王           心子内親王はシゲさんと呼ぶ
  • ヨイチ               児玉元帥の副官
  • マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
  • アルルカン             太陽系一の賞金首
  • 氷室(氷室 睦仁)         西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩、及川軍平)
  • 村長(マヌエリト)         西ノ島 ナバホ村村長
  • 主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者
  • 及川 軍平             西之島市市長
  • 須磨宮心子内親王(ココちゃん)   今上陛下の妹宮の娘
  • 劉 宏               漢明国大統領 満漢戦争の英雄的指揮官
  • 王 春華              漢明国大統領付き通訳兼秘書

 ※ 事項

  • 扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
  • カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
  • グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
  • 扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
  • 西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
  • パルス鉱     23世紀の主要エネルギー源(パルス パルスラ パルスガ パルスギ)
  • 氷室神社     シゲがカンパニーの南端に作った神社 御祭神=秋宮空子内親王
  • ピタゴラス    月のピタゴラスクレーターにある扶桑幕府の領地 他にパスカル・プラトン・アルキメデス

 

 

 

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RE・かの世界この世界:200『鬼ノ城・2』

2023-08-26 06:28:09 | 時かける少女

RE・

200『鬼ノ城・2』テル 

 

 

 楼門を潜った城の中は…………なにも無かった。


 なにも無いと言っても、次元の狭間というわけでもブラックホールというわけでもない。

 ちゃんと草が萌えて、木々が茂り草木の間には岩が覗いて小道が巡っている。

 しかし、その有りようは、楼門の外と変わるところが無い。

 頂上ではあるが、整備された山中のハイキングコースと変わるところが無い。

 城と呼ぶ限り、櫓や殿郭が朽ち果てても城の構えはうかがえるものだ。苔むした石垣であったり、基壇であったり堀の跡であったり。城としての構造を偲ばせるものがあるはずだが、それが、なにも無い。

 要するに、山の頂上を鉢巻きのように土塁で囲んで、その内側を城と呼んでいるだけのようなのだ。

「ちぇ、なんか詐欺みてーじゃねえか。ゲートと塀だけがあって入ったらなんにもねえ遊園地みてえだぞ、ケイト」

 桃太郎二号がくさる。

「おまえが言うな」

「ああん?」

「おまえだって」

「よせ、二人とも」

「これは避難用の城ですね」

「おまえも、そう思うか、タングニョースト」

「避難用の城?」

「ああ、桃太郎のように攻撃バ……ひと筋の者には分からんだろうが、世の中には攻められれば立て籠もって災いが過ぎるのを待つしかない者もいるんだ」

「そうなのか、ヒルデのねえちゃん?」

「ああ、そして、この地は豊かなんだろう。籠城のための食糧の備蓄も出来たろうし、援軍を呼ぶこともできたんだろう。ほんとうに貧しい者は、避難用の城など作らない」

「そうなのか……」

「ほんとうに弱い者、貧しい者は、ただ逃げるしかない。もっと弱い者は、ただ奪われて殺されるだけだ」

「えと……この奥に行くと、わずかですが井戸の跡や建物のあとがあります」

 雪舟ねずみが奥を指さす。

「よし、行ってみますか」

 イザナギさんが促して奥に進むと少し開けたところに出てきて、建物の礎石を示す表示がある。


 水場や井戸、鍛冶場の跡はうかがえるが、防備の備えを偲ばせるものは見当たらない。


「やはり、戦いの形跡はないなあ」

「見ただけで分かんのか?」

「ああ、いいことなんだぞ、避難場所に使用の形跡が無いのは」

「北欧にも、いくつかこういうところがあるが、どこも焼け跡があって、骨がごろごろ転がっている」

「「ゲゲ」」

「イザナギ殿、あなたは良い国を造られたようだ」

「思い至りました……これは七世紀、百済救援のため差し向けた日本の艦隊が白村江の戦いで大敗を喫し、その後、唐・新羅の反攻を恐れて造られた山城の一つなのでしょう。幸い、海の外から攻められることも無く、いつの間にか忘れ去られた城郭なのでしょう」

「結果的には無駄になったかもしれないが、恐れを知るということは悪いことではない」

「ヴァルキリーの姫騎士にご理解いただければ光栄です」

「いやはや、我が父にもイザナギ殿の半分の分別があればと思います」

「オーディン殿ですね」

「父は最終戦争までやらないと気が済まない男……」

「ヒルデさん?」

「誰かいるぞ!」

 ヒルデがイザナギさんを庇って飛び退る!

「なに奴!?」

 我々も反射的に剣を抜きながら飛びのくと、岩陰から殺気を発して飛び出してくる者があった!

 

 ☆ ステータス

 HP:20000 MP:400 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
 持ち物:ポーション・300 マップ:16 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 
 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾

☆ 主な登場人物

―― かの世界 ――

  テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫
 ケイト(小山内健人)  照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
 ブリュンヒルデ     主神オーディンの娘の姫騎士
 タングリス       トール元帥の副官 ブリの世話係
 タングニョースト    トール元帥の副官 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 
 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児
 ポチ          シリンダーの幼体 82回目で1/12サイズの人形に擬態
 ペギー         異世界の万屋
 ユーリア        ヘルム島の少女
 その他         フギンとムニン(デミゴッドブルグのホテルのオーナー夫婦)
 日本神話の神と人物   イザナギ イザナミ 那須与一 桃太郎 因幡の白兎

 

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